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シャドウテイカー アブサロム31

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:4 裕生は半ば壊《こわ》れた鉄の門の前に立っていた。手元のメモを確認《かくにん》してから、透明のビニール傘を差し上げて門
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 裕生は半ば壊《こわ》れた鉄の門の前に立っていた。手元のメモを確認《かくにん》してから、透明のビニール傘を差し上げて門の中を見る。
(ここかな)
その家はJRの|市ヶ谷《いちがや》駅から十分ほど歩いたところにあった。門の向こうには前庭があり、建物はその奥だった。少し屋根が尖《とが》っていること以外は、なんの変哲もないコンクリートの平屋だったが、よく見ると両開きのドアの上に十字の形をした跡がくっきりと残っている。そこに十字架がかけられていたらしい。
(教会……かな)
彼は門をくぐって庭に足を踏《ふ》み入れた。左右には手入れされていない植木が放置され、玉砂利の上には無数の水溜《みずたま》りが生まれている。歩くたびに足元でばしゃばしゃと水音がする。病院を出た時よりも、雨足は強くなっていた。
右隣《みぎどなり》はなにもない更地《さらち》で、左隣は解体作業中のビルだった。建物の半分を防音用の白いパネルが覆《おお》っている。雨が降っているせいか、作業は行われていない。どうやら再開発の予定地らしい。人影《ひとかげ》はなかった。
庭を歩きながら、裕生は茜《あかね》のことを思い出す。病院で説得するのは苦労した。裕生が書き取った住所から、どうやって目的地まで行くのかを教えてくれたまでは良かったが、その後《あと》は「あたしも一緒《いっしょ》に行くから」の一点張りだった。立ち上がることもできないのだから不可能だといくら言って聞かせても「あたしも一緒に行くから」を繰り返すのだった。しまいには裕生は諦《あきら》めて——病室から猛ダッシュで逃げ出すはめになった。
電話で言われたとおり、正面玄関から建物の中へ入った。ひやりとしたかび臭《くさ》い空気が体にまとわりつくようだった。彼は短い廊下を進んで正面の扉を開ける。
そこは広い会堂のようだった。しかし、窓に降りている遮光カーテンのせいで、奥の方はぼんやりとしか見えない。
本当にここでよかったのかな、と思いかけた時、
「いい建物だろう」
暗がりから男の声が聞こえた。さっきの電話と同じ声だった。
「ぼくは教会が好きでね。父が聖職《せいしょく》についていたせいもあるが、独特の雰囲気がある」
それを聞いて、裕生《ひろお》はここがこの相手の家なのかもしれないと思った。しかし、それを察したように男の声が言った。
「ここはただの空き家だよ。ぼくがここに住んだことはない。この建物を後《あと》で調《しら》べても、ぼくの身元は分かりはしない」
「雛咲《ひなさき》は?」
「……来ないでください」
と、葉《よう》の声が聞こえた。裕生はほっと息をつく。とりあえず彼女は無事らしい。彼は部屋の奥に向かって歩いていった。
「そこで止まってもらえるかな」
裕生は言われるままに足を止める。ぼんやりと二つの人影《ひとかげ》が見えた。一人は背が高く、もう一人は低い。低いほうは葉らしかった。他《ほか》には誰《だれ》もいない。人間の「協力者」はここにはいないようだった。
「やはり、天内《あまうち》茜《あかね》は来なかったようだね」
と、背の高い方が言う。さっきの電話の声だった。
「天内さんの家族を殺したのはお前なんだな」
「まあ、そのようなものかな」
その声にはかすかに嘲《あざけ》るような響《ひび》きがあった。
「さっき、天内さんにケガさせたのは誰なんだ?」
「それについては、また後で話そう。それよりも話したいことがある」
目が慣《な》れるにつれて、男の隣《となり》にいる葉の姿が暗がりに浮かび上がってきた。鈍く光沢《こうたく》を放つ金属で、肩から下が固められている。まるで銅像の中に放り込まれているようだった。
「……雛咲」
裕生は思わず彼女の方に近づこうとする。男が音もなく動き、二人の間に割って入った。そして、裕生の右の手首をつかむ。
「まだ、ぼくとの話が済んでいないよ」
ささやき声と同時に、ちくりと刺すような痛みが裕生の手首に走った。痛みは一瞬《いっしゅん》で消えたが、同時に腕をつかまれている感覚も消えた。彼は思わず男の手を振り払って、後ずさりをする。そして、動かなくなった自分の右手を見下ろした。
「うわああっ!」
ほとんど無意識《むいしき》のうちに裕生は悲鳴を上げた。彼の右手は爪《つめ》まで暗い灰色に変わっている。葉の体を包んでいる金属と同じ色だった。左手の爪の先でつつくと、かつんと硬い音が聞こえた。右手の方はなにも感じなかった。冷たい金属の手触りがかえってくるだけだった。
「こ……これ」
思わず舌がもつれる。
「それが『アブサロム』の力だ。触れたものを鉄に変える力がある」
男の満足げな声が裕生《ひろお》の耳に刺さった。彼ははっと葉《よう》を見る。
「雛咲《ひなさき》には……」
「彼女の体を変えたわけではない。ただ、鉄でくるんでいるだけだ。もっとも、なにか仕掛けようとすれば話は別だが」
裕生は葉の周囲の床も同じ色の金属に変わっていることに気づいた。その変化は男の足元まで及んでいる。葉が「黒の彼方《かなた》」を出そうとしたら、金属に変えられてしまうということだろう。
この男はカゲヌシの本体を出さずに、能力のみを引き出せるらしい。裕生は震《ふる》えている右手を左手でしっかりと押さえこんだ。それでも全身の震えは止まらなかったが、力をこめると少しは気持ちが落ちついた。
「……ぼくに話って?」
「君たちに協力してほしいんだ」
男は裕生に事情を説明していった——葉がなにも言わないのは、既《すで》に聞かされているからだろう。話をまとめると、「葉を解放する代わりに裕生を人質《ひとじち》に取る。そして、彼女の『黒の彼方』をアブサロムに協力させろ」ということのようだった。
「どうだろう。君は人質になる気はあるかな。彼女のために」
従ったとしても自分や葉に命の保障があるのか疑問だった——アブサロムの「敵」を倒してしまえば、「黒の彼方」は有害な存在でしかない。最終的には自分たちも始末されるだけではないだろうか。
しかし、今の裕生に選択の余地はない。囚《とら》われている葉を解放させるのが先決だった。
「ぼくは……」
裕生が口を開きかけた時、
「……おや」
男の顔に笑みが浮かんだ。裕生の方ではなく、カーテンの閉じた窓を見ている。
「そう来たか。まったく、信じられないことをする」
「え……?」
裕生と葉は思わず同時に言った。男は裕生の顔を見つめている。
「その様子《ようす》では、君の作戦ではないようだな」
「え?」
「窓を開けてもらおうか。今すぐ」
裕生は訝《いぶか》りながら窓のちょうど真ん中あたりへ近づいていった。天井《てんじょう》からぶら下がった遮光カーテンの合わせ目を手探りで探し当てて、一気にさっと開く。窓の中央の部分が明るくなった。
たちまち白い光が射《さ》しこんでくる。裕生《ひろお》はぎりぎりまで目を細めて、窓から視線を逸《そ》らした。自分の方を見守っている男と葉《よう》の姿が見え、葉の背後にあるベッドの存在や、しっくいの壁《かべ》に残っている調度品《ちょうどひん》の跡に気づいた後で、裕生は改めて窓の外を見た。
窓は曇《くも》りガラスらしく、外の景色は白くかすんでいた。裕生はアルミサッシの錠《じょう》を開けて、力いっぱい引っ張る。耳障《みみざわ》りな金属音を立てながら窓が開いた。しかし、それでも窓の外になにか不審《ふしん》なものが見えるわけではない。窓の外には一面の乳白色が広がっているだけで——。
「あれっ」
裕生は思わず口に出していた。窓を開けたというのに、景色がはっきり見えなかった。外から部屋の中に白い煙のようなものが流れこんでくる。ようやく彼は気づいた。この建物の窓は曇りガラスなどではなかった。外の景色が見えなくなっているだけなのだ。
(霧《きり》だ)
このあたり一帯が、霧に覆《おお》われているのだ。その霧の向こうから、風を切る音とともになにかが近づいてきた。
「……伏せた方がいいよ」
と、男が言った。裕生は頭を抱えてその場にしゃがみこむ——次の瞬間《しゅんかん》、盛大な音を立てて窓ガラスが割れた。白い霧とともに、ボルガの背中に乗った天内《あまうち》茜《あかね》が会堂の中に飛びこんできた。
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