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シャドウテイカー アブサロム32

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:5 裕生が病室から駆け出していった後、後を追おうとする茜と病院のスタッフの間でもみ合いが起こった。傷は内臓《ないぞう》ま
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 裕生が病室から駆け出していった後、後を追おうとする茜と病院のスタッフの間でもみ合いが起こった。傷は内臓《ないぞう》まで達しており、手術を行ったばかりで体を動かすなどもっての他《ほか》、意識《いしき》があるだけでも奇跡的なのだと説明したが、茜は聞き入れようとしなかった。頭にあるのはその「アブサロム」という敵を、
(殺してやる)
というくっきりとした意志だけだった。家族を殺した敵の居場所が分かっているというのに、ベッドでぼんやりしているつもりはない。指定された場所は、裕生が書き取ったメモを見てだいたい分かっている。
しかし、どうしても自分を羽交《はが》い絞《じ》めにしている看護師《かんごし》を振り払うことができなかった。麻酔の抜けきらない体には力が入らない。歩くこともできなかった。なにかに乗って行かない限りは——。
不意に茜は笑い出したくなった。乗り物など探さなくとも、自分は最初からそれを持っているではないか。彼女は抵抗をやめた。そして、安心顔のスタッフが一度病室から消えるのを待って、
「……ボルガ」
自分の影《かげ》から怪鳥を呼び出した。
彼女のいた外科病棟は病院の七階にあった。しかし、ボルガの背中に乗った茜《あかね》は、ためらうことなく病室の窓ガラスを割って降りしきる雨の中へ飛び出した。地上から冷たい風が吹き上がった。眼下には病院の駐車場《ちゅうしゃじょう》と車の行きかう道路があり、その向こうに中央線の線路が見えた。
水滴《すいてき》が彼女の全身を礫《つぶて》のように叩《たた》く。彼女はボルガの能力を発現させ、周囲にある「雨」を可能な限り霧《きり》に変えた。飛んでいる自分たちの姿を他人に見られたくないという思いもあったが、人目につくことで復讐《ふくしゅう》に邪魔《じゃま》が入ることを恐れていた。
付近一帯を白い濃霧《のうむ》で満たしながら、茜たちは敵のいるべき方角へ一直線に飛んだ。あとは相手の「気配《けはい》」が居場所を教えてくれるはずだった。
 会堂の中に飛び込んだボルガはブレーキをかけるように羽ばたいて床に着地した。すぐそばに裕生《ひろお》の姿があり、部屋の中央には葉《よう》の姿も見えたが、茜は二人の姿を意識《いしき》の外に追い出した。
鳥の背中から滑り降りた茜は、床の上にぐったりと座りこむ。腰から下の感覚が少し戻ってきていたが、同時に刺された傷がじわりと鈍く痛み始める。
「……あんたなんだ」
かすれた声で彼女は言う。茜は葉のそばにいる若い男を見ていた。男が発している濃厚《のうこう》な「気配」——間違いなかった。この男はカゲヌシとともにいる。
「あんたのカゲヌシを出して」
彼女の傍《かたわ》らで、ボルガが力を溜《た》めていた。床に両肢《りょうあし》の爪《つめ》を食いこませ、翼《つばさ》を体の斜め前に垂らしている。茜の号令一下、床を蹴《け》り空気を掻《か》いて一気に突進する準備ができていた。
「……その必要はないよ」
男——「アブサロム」は言いながら、とん、と軽い身のこなしで一歩前に踏《ふ》み出した。背は高いが精悍《せいかん》な印象は受けない。色白の優男《やさおとこ》だった。色素の薄《うす》い顔に妙に赤い唇が映える。
「ぼくは君より強いからね」
その言葉に茜は逆上した。
「全身|全霊《ぜんれい》全力であんたを殺す!」
「天内《あまうち》さん!」
そばにいる裕生が言う。茜はそちらをろくに見ていなかった。
「ちょっと待って。あいつは」
「死ね!」
彼女の意志がボルガに伝わる。翼《つばさ》が目にも止まらぬ速さで動き、弾丸のようにその体が発射される。風圧に押されて茜《あかね》と裕生《ひろお》の体が背後の窓枠にぶつかった。怪鳥はみるみる敵《てき》に迫り、相手は両手を体の前でかばうように交差させた。
床に転がったままの茜はかすかに笑みを浮かべた。ボルガの全力の突進を生身の人間が受け止められるはずがない。ほとんど青い残像と化した鳥が男の体を跳ね飛ばす——かに思えた。
がきんと金属音が聞こえて、ボルガの体が跳ね返った。部屋の中を大きく迂回《うかい》して、茜の許《もと》に戻る。男はさっきの場所から一歩も動いていなかった。
「え……」
ボルガを見上げた茜は言葉を失った。下の嘴《くちばし》の一部が欠けて、だらりとぶら下がっていた。激突《げきとつ》の時に傷ついたに違いない。
「……ふう。思ったよりも強烈だ」
と、男が言う——彼の首から下は灰色の鈍い光沢《こうたく》を放っている。まるで銅像のようだった。
「なに、あれ」
茜の声が震《ふる》える。
「あいつは触ったものを鉄に変えられるんだ」
裕生が自らの右手を見せた。彼の右手も同じ色の金属になっている。茜にもなにが起こったのか理解できた。男は自ら鉄の壁《かべ》と化して激突《げきとつ》をしのいだのだ。どうにか上半身を起こすと、男の周囲の床も両足と一体化した金属になっているのが見えた。
「それがあんたの『力』なんだ」
「そういうことだね。君では絶対ぼくに勝てない。あと、ぼくに接近戦を挑まない方がいいよ。その鳥の片目にまだ気づいてないのか?」
彼女ははっと息を呑《の》んだ。ボルガが得ている五感の情報は茜の脳にも伝わっているが、視覚だけがおかしい。目隠《めかく》しをされたように左目の視界が遮《さえぎ》られていた。
ボルガの顔を見ると、左目の周辺が鈍色《にびいろ》に染まっている。「アブサロム」の体と同じ色だった。
「ぶつかってきた時に、左目に触ったんだよ」
茜は内心|驚《おどろ》いていた。「アブサロム」は、カゲヌシの体すら金属に変える力があるのだ。もし長い時間触れられていれば、ボルガは全身の自由を失って転がることになる。確《たし》かに接近戦は不利だった。
傍《かたわ》らの鳥が翼を震わせる。ならば接近戦を挑まなければいいだけの話だ——こちらもボルガの能力を使って、と茜が思いかけた時、裕生が茜の腕をつかんだ。揺すぶられた拍子にずきりと腰の傷が痛む。
「なんなの?」
顔をしかめながら茜が言う。
「雛咲《ひなさき》が人質《ひとじち》になってるんだ!」
よく見ると、男の近くにいる葉も同じ色の金属で固められている。「アブサロム」とは違って、体までは変化させられていないらしい。
「戦うと雛咲が」
「わたしのことはいいから!」
今まで黙《だま》っていた葉《よう》が叫んだ。一瞬《いっしゅん》、その声が妹の小夜《きよ》に重なって、茜《あかね》はうろたえた。妹の口癖《くらぐせ》と同じだった。
「でも、人を殺しちゃだめ!」
その言葉がずきりと茜の胸を刺した。もし、今小夜と話すことができたら、同じことを言われる気がした。しかし、茜はすぐにその思いを振り払った。
「あんたは黙っててよ!」
茜は葉に叫ぶ。同時に裕生《ひろお》も叫んだ。
「いいわけないだろ雛咲!」
「どうも三人で意見が分かれているようだね」
男はくすくす笑いながら言った。
「ただ、心配する必要はないよ。そこの鳥を倒すのに、人質など取る必要はないからね。しょせん、人間に従わされる程度の低位のカゲヌシだ」
(馬鹿《ばか》にして)
茜はぐっと歯を食いしばった。もう一度、勝負をかけるつもりだった。力では殺せないなら、別の手を使うまでだ。
茜は背中を窓の下の壁《かべ》に預けて、呼吸を整えた。さっきよりも痛みがひどくなっている。額《ひたい》から冷や汗が流れてきた。
「ねえ、あんたを殺す前に一つ聞いておきたいんだけど」
と、茜は男に向かって言った。時間を無駄《むだ》にしたくはなかったが、この質問だけは別だった。
「『わたしがお前に代わって死ねばよかった』って、どういう意味?」
「旧約聖書の言葉だよ。ダビデが死んだアブサロムを嘆いて」
「そんなことどうでもいい。どうしてそれを書いたの?」
男は微笑《ほほえ》んだ。殺意など想像もつかないような、穏《おだ》やかな笑みだった。
「あれは君へのメッセージだよ。君の妹に敬意を表したつもりだった。ああいう自己|犠牲《ぎせい》の感情はぼくたちにはありえないものだからね」
茜は一瞬、考えこんだ——しかし、意味は分からなかった。
「……なにわけの分かんないこと言ってんの」
「実はどれぐらい君らの愛情が深いかと思って、ちょっとした提案をしてみたんだ。『君を殺さない代わりに姉さんを殺すか、姉さんを殺さない代わりに君を殺すか、好きな方を選べ』とぼくは言った。軽い冗談《じょうだん》のつもりだったけど、君の妹は迷わなかったよ。『わたしのことはいいから、姉さんを殺さないで』って。まあ、さすがに震《ふる》えてたけどね」
彼女の目の前が一瞬《いっしゅん》真っ暗になった——この男は人間じゃない。カゲヌシにとりつかれる前から怪物なんだ。
「見上げた態度だと思わないか? だから、ぼくたちは考えを改めた。彼女の望みどおり、ひとまず君を生かしておくことにした。それで君が帰ってくる前にあの部屋を出たんだ」
「……え?」
茜《あかね》の隣《となり》から、かすかに裕生《ひろお》の呟《つぶや》きが聞こえた。一瞬遅れて、彼女もその意味に気づいた。
「なに嘘《うそ》ついてんの。あたしが帰ってきた時、あんたはまだマンションにいたでしょ!」
男の笑顔《えがお》が消える。訝《いぶか》しげに眉《まゆ》を寄せた。
「なんの話だい?」
「あたしが気を失ってる間に、パパとママをカゲヌシに食わせたくせに」
しかし、男は表情を変えずに茜を見つめているだけだった。奇妙な沈黙《ちんもく》が流れ、やがて男が言った。
「なるほど。気がついてなかったのか」
その声にはあからさまな嘲笑《ちょうしょう》が含まれていた。
「二つばかりいいことを教えよう。まず一つ……あの夜、ぼくたちは君がカゲヌシにとりつかれた瞬間を見たわけではない。そのことを知ったのは、もう一度あのマンションを訪れたからだ。もともとぼくが狙《ねら》っていたのは君だったからね。それで、玄関にボルガの『サイン』が残っているのを見つけた。後《あと》は前後の状況から、そう推察しただけだ」
「え?」
わけが分からないまま、茜は聞き返した。
「天内《あまうち》さん。今すぐ攻撃《こうげき》した方がいい」
不意に耳元で裕生の声が聞こえた。顔色がひどく青ざめている。
「早く攻撃して」
茜は戸惑った。裕生は男の話の続きを聞かせたくないように見える。
「ところで、君はもともと両親とはあまり仲がよくなかったんじゃないかな? 両親よりは妹の方と精神的な繋《つな》がりがあった。そうだろう?」
「やめろよ!」
裕生が震える声で男に叫んだ。どうしたんだろ、と茜は思った。裕生にはこの男がなにを言おうとしているのか分かっているらしい。
「わけ分かんない。なに言ってんの」
茜は言い返したが、わずかに声が小さくなっていた。胸の奥に不安が広がりつつあった。
「では、もう一つ教えてやろう。君のカゲヌシは、おそらくは君の望むどおりの姿に変化している。しかし、カゲヌシが形態を変えるには、エサが必要だ……一般的には、それは人間だが、いつ君はこの鳥にエサをやったのかな?」
茜《あかね》の体が一人でに震《ふる》え始めた。気分が悪い。男の言葉が指し示していることに、おぼろげながら彼女も気づき始めていた。しかし、考えたくなかった。
「さて、ぼくたちが立ち去る前、君の両親にはかすかに息があったはずだ。人間は致命傷を負わされても、心臓《しんぞう》や脳を直接|破壊《はかい》されない限りは、肉体が完全に死を迎えるまでしばらく時間がかかる。死ぬことには変わりなくてもね」
「……やめて」
あえぐように茜は言った。ボルガは今まで、人間にほとんど食欲を示したことはなかった。それはこのカゲヌシの特徴《とくちょう》だと思っていた。しかし、ひょっとすると今まで空腹を感じる必要がなかっただけではないのか。
茜はボルガを見上げる。緊張感《きんちょうかん》のない緩《ゆる》んだ顔つき。くりっとした大きな目。人間を襲《おそ》うようにはとても見えない。しかし、彼女が目覚めた時、すでにボルガは今の姿になっていた。
「まさか……そんな」
あの時にはもう、捕食がすでに済んでいたのだとしたら。
茜の隣《となり》にいた裕生《ひろお》が叫んだ。
「それ以上言うなよ!」
しかし、裕生の言葉を無視して、男は話を続けた。
「いや。もう彼女にも分かっている——瀕死《ひんし》の彼女の両親を食ったのは、そこにいる鳥だ」
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