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シャドウテイカー アブサロム34

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:7 裕生は呆然《ぼうぜん》と立ち尽くしていた。葉が囚《とら》われの身である以上、二人を助けることができるのは茜《あかね》
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 裕生は呆然《ぼうぜん》と立ち尽くしていた。葉が囚《とら》われの身である以上、二人を助けることができるのは茜《あかね》だけだった。しかし、その希望も完全に潰《つい》えてしまった。
「もう、邪魔《じゃま》は入らないな」
窓の外を見ながら男は呟《つぶや》いた。まだ外にはボルガが生み出した霧《きり》が漂《ただよ》っている。彼は茜から手を離《はな》して立ち上がると、裕生《ひろお》の腕をつかんで葉《よう》の方へ近づいていった。床に散らばっている金属の塊《かたまり》を避《よ》けながら、男は裕生に言った。
「改めて君に聞きたい」
裕生は顔を上げて男を見る。
「彼女——いや、今はそこの天内《あまうち》茜も含めて彼女『たち』だな。君が代わりに人質《ひとじち》になれば、二人を解放してもいい。どうする?」
裕生は思わず唾《つば》を飲み込んだ。変えられたままの右手をふと思い出した。この男がその気になりさえすれば、裕生は即死することになるのだ。
「……べ、別に構わない」
即答できないのが情けなかったが、彼はそう答えた。しかし、「アブサロム」は不審《ふしん》げな表情を浮かべた。
「いいのかい? この子たちのためにそこまで言い切れるのか?」
自分が言い出したことじゃないか、と裕生は思った。
「なにが言いたいんだ」
「彼女たちは人間じゃないだろう」
「二人とも人間だよ」
「そうかな。そこの彼女は自信がないようだが」
裕生は思わず葉を見る。青ざめた顔で裕生の様子《ようす》をじっと窺《うかが》っている。彼女がどうしてそんなことを不安に感じているのか、彼には分からなかった。
「カゲヌシを呼ぶのは『ねがい』なんだ。それはただの願望ではない。この世界の境界すら超越する絶望だ。『ねがい』を持つ者は、無意識《むいしき》のうちに人でなくなることを選んでいる。悪魔《あくま》と契約を結んだ、と考えれば分かりやすいかな。ぼくたちと君は違う存在なんだよ」
ぼくたち、という言葉に吐き気を催《もよお》した。どうやらそれは裕生以外の三人を指し示しているらしい。訳知りな男の態度に裕生は腹が立ってきた。
「君は今もこれからも彼女が理解できない。それに、いずれ彼女は自我を失ってカゲヌシと一体化する。それでも君は」
「……うるさいな」
気がつくと裕生はそう言っていた。膝《ひざ》のあたりががくがくと震《ふる》え始める。これ以上言わない方がいいと頭では分かっていた——しかし一度口にした言葉は止まらなかった。
「よく分からないけど、理解とかそういうのは大したことじゃないよ。雛咲《ひなさき》がなに考えてるか分からないことなんかしょっちゅうだったし。先月、カゲヌシにとりつかれた時は驚《おどろ》いたけど、大事なことは別のことなんだ」
裕生《ひろお》はふと言葉を切った。男よりも葉《よう》の方がよほど驚《おどろ》いた顔をしていた。
「ぼくは雛咲《ひなさき》と一緒《いっしょ》にいる。必ず、雛咲を助ける」
しん、と会堂全体が静まり返った。裕生は思わず自分の言葉を反芻《はんすう》する。気恥ずかしいことを言ったとは思うが、間違ってはいないはずだった。
「……おめでたいな」
と、男が低い声で言った。腹の立つ言葉だが、反論《はんろん》できなかった。
「雛咲と少し話がしたい」
男は眉《まゆ》をひそめる。裕生がなにか企《たくら》んでいるのではないかと疑っているのだろう。
「ちょっとぐらい話したって、ぼくが逃げられるわけじゃないだろ」
結局、男は脇《わき》へどいて、傍《かたわ》らのベッドに腰かける。裕生はその周囲に無数の鉄の眼球が転がっていることに気づいた。一瞬《いっしゅん》、背中がこわばったが、すぐに気を取り直して葉に近づいていった。
少しいびつな金属の円筒から、葉は顔だけを出している。裕生は彼女のすぐ目の前で立ち止まると、柔《やわ》らかい髪をかきわけて耳もとに口を寄せる。子供の頃《ころ》と同じ髪の匂《にお》いだった。昔はこんな風によく内緒話《ないしょばなし》をした気がした。
「雛咲、あのさ」
しかし、彼女はいやいやをするように首を振った。
「だめです。あの人、最初からわたしたちを助けるつもりなんかないんです」
裕生は驚かなかった。それも最初から分かっていた。
「さっきもわたしの目の前で一人……昨日、つかまえた女の人がいて。それでわたし」
「雛咲」
葉の必死さに胸が詰まった。もうこんな風に、彼女がなにもかも背負う姿を見たくなかった。
「わたしはほんとに大丈夫ですから。だからここから先輩《せんぱい》は逃げ」
「葉!」
びくっと葉が体を震《ふる》わせた。子供の頃の呼び名だったが、今ここではそれが相応《ふさわ》しい気がする。その言葉だけは「アブサロム」にも聞こえたらしい。ちらりと不審《ふしん》そうな視線を向けたが、すぐにまたもとの表情に戻った。
「葉、ぼくの話をよく聞いて」
視界の端《はし》の男を意識《いしき》しながら裕生はささやいた。
「……」
「ぼくがかわりに人質《ひとじち》になって、体が自由になったらすぐにあいつと戦うんだ」
感覚のなくなった右手のことが頭をよぎった。ちりちりと頭の奥で警報《けいほう》が鳴っている。あの男は誰《だれ》を殺す時でも、決して躊躇《ちゅうちょ》しないだろう。
「葉《よう》の言うとおり、あいつの『用事』なんか手伝っても、ぼくたちは殺されると思う」
「……だったら」
泣きそうな声で葉が呟《つぶや》く。裕生《ひろお》はその言葉を遮《さえぎ》った。
「ぼくが自由になっても、あいつと戦えるわけじゃない。ぼくが人質《ひとじち》になった方がまだ助かる見込みがあるよ」
自分が興奮《こうふん》状態にあると裕生は分かっていた。そうでなければ、自分の命を投げ捨てるようなことを言えるはずがない。だからこそ舞《ま》い上がっている間に言うべきことを一気に言ってしまうつもりだった。
「ぼくのことは考えなくていい。とにかく、あいつを倒すことだけを考えて。それでも」
さすがにそこでは一瞬《いっしゅん》詰まった。
「もしあいつを倒せないと思ったら、一人ででも逃げるんだ」
死にそうになったら泣きわめくだろうな、とちらりと思う。しかし、ここにいる人間が一人でも生き残ることを考えれば、それが一番まともなやり方——のはずだ。
葉は黙《だま》っている。息遣いすら聞こえなかった。心配になった裕生は耳から口を離《はな》して、正面から彼女を見る。葉は目を伏せたまま、裕生の顔を見ようとしなかった。
「……先輩《せんぱい》。あのね」
静かな声で葉が言った。
「わたし、先輩に迷惑がかかるのが怖かった。だから、色々言えないことがあったの」
「迷惑なんかかかってないよ。なに言ってんの」
きっぱりと裕生は言った。どうすれば「迷惑」という言葉が出てくるのか分からない。
葉は安心したようにほっと息をついた。
「だったら、もう誰《だれ》も人質になんかならない。でも」
突然、葉は顔を上げて裕生を見た。迷いのない澄《す》んだ目だった。
「一つだけ約束して下さい」
と、葉は呟《つぶや》いた。
「わたしのこと、もう『雛咲《ひなさき》』って呼ばないで」
「え?」
「なにがあっても、もうその名前で呼ばないで。その呼び方、ずっと嫌いだったの」
裕生は葉の真意をはかりかねた。しかし、思いつめたような瞳《ひとみ》に気圧《けお》されて、戸惑いながらも頷《うなず》いていた。
「……うん……分かった」
それを聞くと、葉は透き通るような笑みを浮かべた。裕生の胸がざわついた。なんとなく、この場にそぐわない笑顔のような気がした。
葉は目を閉じて、口の中でなにかを呟きはじめた。
「……の契約を結びなおし……」
「え?」
「ただ……代わり……を……」
「そろそろいいだろう」
ベッドに腰かけていた男が声をかけてきた。まだ話は済んでいない、そう裕生《ひろお》が言いかけた時、
「わたしはあなたと違います」
と、葉《よう》が男に言った。裕生は思わず目を瞠《みは》る。決意を固めたような態度は今までとまったく違う。まるで別人のような気がした。
「あなたは人の気持ちが分からない。誰《だれ》かのためになにかをしたり、誰かと一緒《いっしょ》にいることがどういうことなのか分からない」
男はベッドから音もなく立ち上がった。裕生と同じように、不穏《ふおん》なものを感じ取ったようだった。
「あなたは人の心を持たないけれど、あなたの周りには人間しかいない。あなたはずっと一人でした。あなたの『ねがい』は、もう一人の自分」
不吉な予感が裕生の胸に兆《きざ》す。彼女を止めた方がいいような気がする。雛咲《ひなさき》、と呼ぼうとして、たった今|交《か》わしたばかりの約束を思い出す。裕生が言い直す前に葉が言った。
「わたしは一人じゃない。それが分かったから、もう怖くなくなりました」
彼女が裕生を見る。微笑《ほほえ》んだままの唇が動いた。声は聞こえなかったが、なにを言ったのかは分かった。
——くろのかなた。
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