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シャドウテイカー アブサロム35

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:8 葉の足元から獣《けもの》の形をした黒い影《かげ》が飛び出す。大きく開いたあぎとが、葉の体を挟みこんで閉じる。まるで彼
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 葉の足元から獣《けもの》の形をした黒い影《かげ》が飛び出す。大きく開いたあぎとが、葉の体を挟みこんで閉じる。まるで彼女に食いついたように見えたが、次の瞬間《しゅんかん》に鉄の皮膜《ひまく》がばりんと音を立てて割れた。そして、そのまま彼女の脇《わき》をすり抜けて壁《かべ》に向かった。
(……速い)
ぼんやりと裕生は思った。今までにもこの双頭の黒犬《くろいぬ》の動きを見たことはある。しかし、これほどまでに速かっただろうか。
視界の端《はし》で男がベッドの下の床に手をつくのが見えた。一瞬、床がどくりと脈打った気がした。男の手の触れた場所が金属に変化し、鈍色《にびいろ》の帯となって葉に向かって走る。しかし、その時には彼女はすでにもとの場所にはいなかった。
ふわりとロングスカートの裾《すそ》をひらめかせながら、彼女は天井《てんじょう》に向かって飛び上がっていた。そしてくるりと空中で一回転し、壁《かべ》で反転して舞《ま》い戻ってきた「黒の彼方《かなた》」と激突《げきとつ》した——いや、正確《せいかく》にはその背中を力いっぱい蹴《け》っていた。
両者は互いの力を利用して別々の方向に飛んでいた。葉《よう》は金属に変わっていない床へ、「黒の彼方《かなた》」は男の方に向かった。
空中での方向転換は相手にとって予想外だったらしい。反応が一瞬《いっしゅん》遅れた。男の体は犬《いぬ》の頭に跳ね飛ばされて背後の壁に向かってごろごろと転がっていった。
裕生《ひろお》はぽかんと口を開けたまま、目の前の光景を見つめていた。なにが起こっているのか理解できなかった。信じられない速さでカゲヌシが葉を救ったのは分かる。しかし、それなら今までどうして彼女を助けなかったのだろう。それにあの人間|離《ばな》れした葉の動き。あれは一体——。
葉と「黒の彼方」は裕生に近づいてくる。
「……誰《だれ》だ」
裕生は口の中で呟《つぶや》いていた。葉の外見は何も変わらないが、身のこなしや目つきが全く違う。目の前にいるのは、彼の知っている雛咲《ひなさき》葉ではなかった。
「……お前は誰なんだ」
と、裕生は言った。その途端《とたん》、にやりと葉は笑う。それは別人の笑みだった——しかし、その冷ややかな笑顔《えがお》には見覚えがあった。
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「以前にも一度お目にかかったことがありましたね」
と、葉《よう》は言った。
「今は『黒の彼方《かなた》』です」
やっぱり、と裕生《ひろお》は思った。葉はこの怪物に自分の意識《いしき》を明け渡してしまったのだ。
「……どうして」
「話は後《あと》です」
裕生の腕をつかむと、廊下に通じるドアに向かってじりじりと後ずさりを始めた。彼女は窓の方を見ていた。裕生もつられてそちらに目を向けた。
「……天内《あまうち》さん」
裕生は目を瞠《みは》った。いつのまにか茜《あかね》が窓に背を向けて立ち上がっていた。あれだけひどい怪我《けが》をしていたのに。
「逃げますよ」
と、葉が裕生に囁《ささや》いた。
「なに言ってるんだよ。天内さんも一緒《いっしょ》に」
「あれは天内茜ではありません」
裕生ははっとした。患者衣を着た彼女の腰のあたりが、じわりと赤いもので濡《ぬ》れていた——彼女は立てないほどの怪我だったはずだ。そして、その背後にはいつのまにかボルガが飛翔《ひしょう》していた。
「今は『ボルガ』に支配されています」
茜が裕生を見る。彼女の顔からは人間の表情が抜け落ちていた——カゲヌシを解放した状態で「契約者」が意識を失うと、人間の肉体の方もカゲヌシに支配されてしまう。
(ボルガは天内さんの両親を殺してる)
その背後で、新しい水の塊《かたまり》が形成されつつあった。しかし、さっきと違って鳥が見ているのは男ではなかった。
(……ぼくたちだ)
どうやら天内茜が気絶した今、ボルガはアブサロムの指示に従っているらしい。あの男が茜にとどめを刺さなかったのも、このことを見越していたからだろう。二匹のカゲヌシが同時に「黒の彼方」の敵に回ったのだ。
双頭の黒犬《くろいぬ》がいつのまにか裕生の傍《かたわ》らに立っていた——乗れ、と言っているようだった。戸惑いながらその背中にしがみついた瞬間《しゅんかん》、奔流《ほんりゅう》が彼に向かって殺到した。
ぐんと周囲の景色が歪《ゆが》んだ気がした。「黒の彼方」がドアを破って廊下へ出たと気づくまで、時間がかかった。少し遅れて葉もその後について走っている。
短い廊下を伝って、一気に雨の降る戸外へ飛び出す。まだボルガが生み出した白い霧《きり》は完全に晴れていなかった。「黒の彼方」と葉が直角に方向を変えた瞬間、その背後を巨大な水柱が通り過ぎていった。さっと冷たい風が裕生《ひろお》の背中を撫《な》で、同時に飛び散った水滴《すいてき》が裕生の背中を抉《えぐ》った。
裕生は思わずうっと声を洩《も》らした。わずかな飛沫《しぶき》だけでも威力がある。直接当たっていたら骨の一本や二本は折れてしまうかもしれない。
彼を乗せた双頭の犬《いぬ》は、砂利を蹴《け》り飛ばしながら霧《きり》にけむる庭を横切っていく。だらしなく小枝を伸ばした植木の間をすり抜け、錆《さ》びの浮いた黒いフェンスを飛び越えて、「黒の彼方《かなた》」は教会の隣《となり》の敷地《しきち》へ飛びこんだ。そこは解体作業の行われているビルだった。防音用の白いパネルを体当たりで破り、半ば崩《くず》れた窓枠からビルの中へ飛び込んだ。
気がつくと裕生はむき出しのコンクリートの空間にいた。内壁《うちかべ》はすべて取り外され、ところどころに四角い柱が並んでいるのが見えるだけだった。「黒の彼方」は廃材のかけらが散らばった床の上で停止する。慌《あわ》てて裕生は背中から滑り降りた。
「カゲヌシは人間の本体を察知することはできない。ここで分かれます」
いつのまにか葉《よう》が隣に立っている。「黒の彼方」と同じ速さで走ったというのに、息も切らせていなかった。
今度は彼女が裕生の手を引いて、コンクリートの柱をすり抜けていった。「黒の彼方」は一階に残っている。他《ほか》のカゲヌシを迎え撃《う》つつもりなのだ。裕生たちは建物の隅《すみ》にある階段を駆け上がる。
「どうしてぼくを助けるんだよ」
裕生は彼女の背中に向かって問いかける。今、雛咲《ひなさき》葉の体を支配しているのは「黒の彼方」のはずだ。カゲヌシが人間の命を尊重するとは思えない。
しかし、葉は答えなかった。質問が聞こえなかったかのように、階段を走りながら困惑した表情を見せる。そして、
「……なるほど」
と、呟《つぶや》いた。
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