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シャドウテイカー アブサロム42

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:エピローグ「喜嶋《きじま》バー」は曜日《ようび》に関係なく、夫の月命日は休業日になっている。ツネコはこの日に関しては誰《
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エピローグ

「喜嶋《きじま》バー」は曜日《ようび》に関係なく、夫の月命日は休業日になっている。ツネコはこの日に関しては誰《だれ》とも会わず・話さずに自宅で静かに過ごすことにしているのだが、今日だけはそういうわけにいかなかった。
夕方の五時|頃《ごろ》、全身泥だらけの裕生《ひろお》と葉《よう》が「喜嶋バー」に現れたのだった。どう見ても二人とも疲れきっていたが、裕生は葉だけを休ませて自分は加賀見《かがみ》の自宅に帰ると言い張った。ツネコは昨日と同じく包丁《ほうちょう》をカウンターに突き立てて、風呂《ふろ》に入って今夜は泊まっていけと命令した。
ツネコは二人を順番に風呂に入らせて、並べて敷《し》いた来客用の布団《ふとん》に寝かせることにした。葉はやけにはしゃいでいて、裕生は妙に照れていたが、二人とも五分と経《た》たないうちに眠りに落ちてしまった。
すぐにツネコは藤牧《ふじまき》家に電話を入れた。電話には吾郎《ごろう》が出た。事情を話すと、恐縮《きょうしゅく》した態度でひとしきり詫《わ》びと礼を述べた。それが一段落してから、吾郎は三日前の「喜嶋バー」での出来事について話し始めた。
『先日はご不快な思いをなさったことでしょう。まことに申し訳ありませんでした』
ツネコは喜嶋バーのカウンターにもたれて、相槌《あいづち》も打たずに黙《だま》って話を聞いている。
『私の考え方がいささか世間とズレておることは承知しています。私には私なりの考え方がありますが、それを理解しろとは申しませんし、息子たちにも言ったことはありません』
ツネコは受話器の向こうの声になおも耳を傾けている。
『もともと今度の話は、うちの息子たちや姪御《めいご》さんの間で出た話です。もちろん私が責任を負うつもりです。私を信用なさらなくとも結構《けっこう》ですが、できればうちの息子たちと姪御さんを信じていただけたらと思います。息子たちのことは私が保証しますし、あなたの姪御さんもすばらしいお嬢《じょう》さんです』
彼女はちらりと天井《てんじょう》を見上げる。真上の部屋には疲れきった「すばらしいお嬢さん」と「藤牧吾郎の保証する息子」が熟睡しているはずだった。
『明日、朝一番でそちらに伺《うかが》いますので、申し訳ありませんが今夜のところは息子をよろしくお願いします』
分かりました、と言ってツネコは電話を切った。切る前に、先日の平手打ちについて一言|謝《あやま》っておいた。
藤牧|雄一《ゆういち》が店に現れたのは、電話を切ってから三十分ばかり後《あと》だった。二階が来客二人に占領されているせいもあって、ツネコは一階のカウンターの前でぼんやりしていた。
「なんか昨日、俺《おれ》の携帯に留守電が入ってたんスけど、今日まで気がつかなかったんで。うちの弟がこちらに伺ったんスよね?」
と、雄一は言った。それでわざわざこの店まで挨拶《あいさつ》に来たらしい。
ツネコは、葉たちはなにしに来たの、と尋ねた。
「いやー、よく分かんねんですよ。俺《おれ》も昨日会ったときは大して気にしてなかったんだけど、後《あと》から考えるとなんか大変なコトになってんじゃねえかって気もちょっとするんスけどね」
心配じゃないの、とツネコは尋ねると、雄一《ゆういち》はきっぱりと首を横に振った。
「いや、あの二人がやってるコトなら、大丈夫じゃないスか」
ツネコは黙《だま》っていた。
「まあ、うちは俺と親父《おやじ》はダメダメっスけど、裕生《ひろお》のことは保障しますよ。もちろん葉《よう》もスゲーいい子だし。俺らは信用しなくてもいいスけど、あの二人のことは信じてやってもらえると嬉《うれ》しいんスけど」
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