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シャドウテイカー アブサロム44

时间: 2020-03-27    进入日语论坛
核心提示:「帰ってきたね」 と、裕生は疲れきった声で言った。裕生と葉は加賀見《かがみ》団地の中を歩いている。平日の電車に乗って加賀
(单词翻译:双击或拖选)
「……帰ってきたね」
 と、裕生は疲れきった声で言った。
裕生と葉は加賀見《かがみ》団地の中を歩いている。平日の電車に乗って加賀見に帰ってきた——二泊三日の長い外出だった。
喜嶋《きじま》バーに吾郎《ごろう》が迎えに来たのは今朝《けさ》のことだ。裕生たちを外で待たせて、吾郎とツネコはしばらく二人で話していた。
(父さん、また変なこと言わなきゃいいけど)
裕生はそればかり気にしていたのだが、店を出た吾郎は葉に向かって「いつうちに引っ越してもいい」と言った。ツネコとはそのことを話していたらしい。葉は驚《おどろ》いていたが、裕生にはだいたい察しがついていた。
昨日の夜、裕生はツネコから「あの子をお願いね」と頼まれていた。
「強情《ごうじょう》だから、色々と抱えてる子なのよ。両親がいなくなった時だって、ほんとはなにかあったはずなんだけど……その話、聞いたことある?」
いいえ、と裕生は首を振った。
「最初に話すのは多分《たぶん》君にだと思う。口うるさくて意地悪なツネコおばさんではなくてね」
葉がどんな秘密を抱えているのか、裕生には見当もつかない。いつかそれを彼女の口から聞くことがあるのだろうか。
二人は団地の中の児童公園の脇《わき》を通って、自分たちの住む棟に辿《たど》りついた。中へ入ろうとした時、視界の端《はし》で黄色いものが動いた。裕生が振り向くと、黄色いレインコートを着た人影《ひとかげ》が角を曲がっていくところだった。彼はなんとなく空を見上げる。昨日の雨は上がって、雲の隙間《すきま》から青空が見えていた。
(雨、もう止《や》んでるのに)
立ち止まっている裕生《ひろお》を、葉《よう》が不思議《ふしぎ》そうに振り返って見ている。まあいいか、と彼女の後《あと》を追った。
「……午後から学校行こうか」
葉は頷《うなず》いた。
「じゃあ、後で迎えに来るから」
裕生は階段を上がりかけて、ふと足を止めた。葉は自分の部屋のドアの前で立ち尽くしている。
「どうかした?」
葉は答えなかった。裕生は彼女の肩越しにドアを見る。
まだスプレーは乾いていない。かすかにシンナーの臭《にお》いが漂《ただよ》っている。誰《だれ》かが描《か》いたばかりなのだ。
「……サイン」
裕生は低い声で呟《つぶや》いた。
 鉄のドアには、白いスプレーで大きく×印が描かれていた。
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