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シャドウテイカー フェイクアウト11

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:1 加賀見《かがみ》団地から歩いて十五分ほどのところに、廃業になった病院がある。三階建てのコンクリートの建物が、今も解体
(单词翻译:双击或拖选)
 加賀見《かがみ》団地から歩いて十五分ほどのところに、廃業になった病院がある。三階建てのコンクリートの建物が、今も解体されないまま残っていた。この近辺では「幽霊《ゆうれい》病院」として名高く、格好《かっこう》の肝試《きもだめ》しスポットとして「活用」されて来た。
しかし二ヶ月ほど前、若い女性が屋上で焼死する事件が起こって以来、足を踏み入れる者はすっかりいなくなっていた。「本当に幽霊が出る」という噂《うわさ》が流れていたからだ。
その一隅《いちぐう》にある薄暗《うすぐら》い一室で、床《ゆか》に倒れていた一人の男がゆっくりと体を起こした。
彼は膝《ひざ》まである厚手のレインコートを羽織《はお》っている。少し薄汚れてはいるものの、コートの色は鮮《あぎ》やかな黄色《きいろ》だった。男はレインコートのファスナーを喉元《のどもと》まで閉じると、傍《かたわ》らに落ちていた手術用のマスクと色のついた大きなゴーグルをかける。そして、その上からコートのフードをぴたりとかぶった。
男は背中を丸め、音もなく走り出した。コンクリートやガラスの破片が散乱する廊下を抜け、正面玄関から外へ飛び出す。建物の前の駐車《ちゅうしゃ》スペースを一直線《いっちょくせん》に横切ると、穴の開いた金網をそのままの速度で通り抜けた。
彼は人目につかない移動経路を熟知《じゅくち》していた。金網の先にはコンクリートで囲われた用水路がある。彼は壁面《へきめん》の梯子《はしご》を使って身軽に下まで降りると、手近な暗渠《あんきょ》の中へ潜《もぐ》りこんだ。彼は暗闇《くらやみ》の中をほとんど四つんばいになって進んでいった。やがて、暗渠を抜けて別の用水路へ出る。
灰色の四角い建物がいくつも並んでいるのが見える。そこは加賀見団地の裏手だった。彼は用水路から上がって、団地の端にある公園を通りすぎた。公園から一番近い棟《むね》が彼の目的地だった。
建物の中へ入り、「雛咲《ひなさき》」というプレートのかかった一階のドアの前に男は立った。ここに辿《たど》り着くまで誰《だれ》にも見られていない。長い距離《きょり》を走り抜けたにもかかわらず、息一つ切らしていなかった。
レインコートのファスナーつきのポケットから、彼は黒いカラースプレーを取り出す。ドアにノズルを向けた瞬間《しゅんかん》——ゆっくりとドアが開いて来た。
 裕生《ひろお》の目の前に立っているのは確《たし》かに「黄色いレインコートの男」だった。身長は裕生より少し高く、がっしりした体つきをしている。顔はマスクとゴーグルで覆《おお》われ、髪の毛もフードに押しこまれており、おおまかな年齢《ねんれい》すら分からない。
「あの……あなたが『サイン』を描《えが》いてたんですよね」
裕生《ひろお》は雛咲家《ひなさきけ》の玄関から話しかけた。葉《よう》が出かけてからずっと、彼はドアの覗《のぞ》き穴から外を見張っていたのだった。
その問いに男は答えなかった。彼は思わず唾《つば》を呑《の》みこむ——万が一、襲《おそ》いかかられたら逃げ場所はない。相手の表情がまったく見えないことも不安をかき立てていた。
それでも話をしないわけにはいかなかった。他《ほか》に頼るべき相手はいないのだ。
「話があって、ここで待ってました。ぼくは……」
「ううううううううう」
男のマスクの奥から、くぐもった声が洩《も》れた。サイレンを口まねしているような気味の悪い声だった。
「うううううああああおおおおおお!」
男の声は尻《しり》上がりに太く大きくなる。そして、不意にその姿が視界から消えた。
「えっ」
一瞬《いっしゅん》、虚《きょ》を衝《つ》かれたが、すぐに男がドアの前から横っ飛びに跳《は》ねただけだと気づいた。裕生も玄関の外へ飛び出すと、レインコートの男は団地の建物の前に着地したところだった。そして、恐ろしい速さで駆《か》け出した。
「ちょっと待って!」
裕生は走りながら男の背中に向かって叫んだ。おぼろげながら彼にも分かりかけていた——この相手は自分に怯《おび》えている。人間に出会った野生の動物のように。
少し走ったところで、男はすぐに向きを変えて公園の中へ飛びこんだ。追いつくことなどできそうもない。裕生はさらに大声で叫んだ。
「カゲヌシを倒す方法を知りたいんだ!」
裕生は息を切らせながら公園の入り口に辿《たど》り着いた。レインコートの男は公園の真ん中でぴたりと動きを止めていた。彼の声に反応したらしい。
「ぼくは藤牧《ふじまき》裕生」
ゆっくりと男は振り向いた。あまり相手を刺激《しげき》しないように、裕生は数メートルほど手前で足を止めた。
「カゲヌシと契約してるの?」
裕生は子供に話しかけるようなつもりで言った。この男はなんなんだろう、と裕生は思った。今まで出会ったカゲヌシの契約者とはまったく違う。ただの人間には見えないし、かといってカゲヌシの側に立っているわけでもない。カゲヌシの「サイン」を描《か》いて回るのは、人間を捕食するカゲヌシの行動としてはまったく理屈に合わない。
「しゃどうていかー」
しゃがれた声で男は言った。ようやく言葉を口にしてくれたが、なにを言ったのか理解するまで少し時間がかかった。
「……シャドウテイカー?」
黄色《きいろ》いフードに包まれた頭がうなずいた。裕生《ひろお》は頭の中でその言葉を反芻《はんすう》する。
シャドウテイカー——今まで聞いたことのない単語だった。
「それが君の名前?」
一瞬《いっしゅん》の沈黙《ちんもく》の後、男は首を横に振った。そして、自分の胸を指さした。
「れいんめいかー」
「『レインメイカー』が名前?」
再び男はうなずいた。確《たし》か「レインメイカー」とは、雨乞《あまご》いをする祈祷師《きとうし》を意味する言葉だったと思う。
「それはカゲヌシの名前? それとも君のあだ名?」
今度はなにも答えが返って来なかった。なんとなくそれを尋《たず》ねても相手は答えないような気がした。それよりも早く本題に入った方がよさそうだった。
「ぼくの幼なじみは『同族食い』に取りつかれてる。解放する方法を知りたいんだ」
レインメイカーはその場にしゃがみこんだ。そして、乾いた土の上に指でなにかを描《か》き始めた。裕生はおそるおそる近づいていき、レインメイカーの目の前で腰をかがめた。
レインメイカーが描いたのは大きな×印だった。一瞬、裕生は首をひねったが、すぐに意味を察した——これは「サイン」だ。
「これは『黒の彼方《かなた》』の『サイン』?」
黄色いフードにくるまれた頭がこくんと前に傾いた。×印の少し離《はな》れたところに正方形を描き、その中心に小さな点を置いた。ちょうど、サイコロの一の目に似た図形だった。
「じゃあ、こっちは他《ほか》のカゲヌシの『サイン』?」
再びレインメイカーはうなずいた。それから四角の「サイン」の上にいったん手を置き、その手を×印の上へ動かす。
そして、手のひらで×印をこすって消してしまった。
さっきよりも長い時間をかけて、裕生は考えこんだ。
「ええと……こっちのカゲヌシと戦わせろ、っていうこと?」
男はうなずいた。確かにカゲヌシを倒すのに、他のカゲヌシの力を使うのは当然の発想と言えた。だとすると、どこかにこの「サイン」を持ったカゲヌシがいるということになる。そこまで考えて、
「でもそれじゃ、こっちのカゲヌシに取りつかれてる人は? 『黒の彼方』を倒すのはいいけど、こっちの人をそのままにしとくわけにいかないよ」
と、裕生は言った。もう一方のカゲヌシが相変わらず人間を殺していたらなんの意味もない。「黒の彼方《かなた》」と同時にそのカゲヌシも始末しなければならない。
本当はもっと別のことも気になっている。裕生《ひろお》の知る限り、「同族」を食うカゲヌシは「黒の彼方」だけだった。「黒の彼方」を倒すのは当然としても、その後で他《ほか》のカゲヌシを倒す方法はあるのだろうか。葉《よう》を助けた瞬間《しゅんかん》に、他のカゲヌシの契約者を解放することができなくなるのだとしたら——。
(今は葉を助けることを第一に考えよう)
裕生は自分に言い聞かせていた。このまま葉が完全に「黒の彼方」に乗っ取られてしまえば、その場合も人間はカゲヌシ同士の戦いに巻きこまれ、多くの犠牲者《ぎせいしゃ》が出るはずだった。
「……あれ?」
地面に描《えが》かれた正方形の上に、いつのまにかコルクで栓《せん》をされた細長いビンが置かれていた。薄汚《うすよご》れたガラスの奥に、真っ黒い液体がたゆたっている。
「これはなに?」
レインメイカーが持っていたものらしい。彼は今度はガラスの瓶をつかんで、瓶の底でサインを押しつぶすようにこすった。
「このビンの中身でそのカゲヌシを倒せっていうこと?」
レインメイカーはうなずいた。
(……毒薬みたいなものかな)
男は裕生《ひろお》に向かって、そのビンを差し出した。おそらく、なにかカゲヌシにとっては害になる成分が入っているのだろう。裕生はためらうことなくそれを手に取った。効果のほどは分からないが、初めて手にするカゲヌシを倒すための「武器」だった。
「これ、『黒の彼方《かなた》』には効《き》く?」
レインメイカーは首を横に振る。裕生はそれほど失望しなかった。「黒の彼方」はカゲヌシの中でも異質な存在なのは分かっている。「黒の彼方」に効かなくとも、十分使い道があるはずだ。
不意にレインメイカーは立ち上がると、裕生に背中を向けた。もう話は終わりということらしい。裕生は慌《あわ》てて言った。
「『黒の彼方』を殺す時に、気をつけなきゃいけないことは?」
レインメイカーは天を仰《あお》ぐ——長い沈黙《ちんもく》の後で彼は言った。
「……どっぐへっど」
ドッグヘッド? あの「黒の彼方」の首のことだろうか。
「どっぐへっど」
もう一度繰り返してから、レインメイカーは歩き出した。まだ聞きたいことは山ほどある。裕生はふと半分消されかけた正方形の「サイン」に目を落とした。
「この四角い『サイン』を持つカゲヌシはこの近くにいるの?」
レインメイカーは立ち止まると、西の方角を指さした。つられて裕生も同じ方角を見る。鶴亀町《つるきちょう》の方角だ、と思った瞬間《しゅんかん》、裕生は背中に冷水を浴びせられたような気がした。
「……葉《よう》」
鶴亀神社には葉がいる。もし、鶴亀町のどこかにカゲヌシの契約者がいたら、彼女を見つけてしまう可能性がある。「黒の彼方」が倒されるだけならばまだいい。葉に危険が及ぶかもしれなかった——様子《ようす》を見にいった方がいい。
「レインメイカー、できればぼくと一緒《いっしょ》に」
裕生ははっと口をつぐんだ。
もう黄色《きいろ》いレインコートの男はどこにもいなかった。公園の中に立っているのは裕生一人だった。
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