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シャドウテイカー フェイクアウト17

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:7 石段を上がった佐貫《さぬき》は、二匹の怪物の戦いの一部始終を見ていた。一体、自分が目にしているのがなんという生き物な
(单词翻译:双击或拖选)
 石段を上がった佐貫《さぬき》は、二匹の怪物の戦いの一部始終を見ていた。一体、自分が目にしているのがなんという生き物なのかはもちろん分からなかった。ただ、蜥蜴が葉《よう》たちを襲《おそ》い、双頭《そうとう》の犬が守っているのはかろうじて理解できた。
佐貫はじりじりしていた——どうしてみちるたちは逃げずに突っ立っているのか。二人を連れて逃げ出そうと何度も思ったが、怪物が戦っているというのに、隠《かく》れる場所もない境内《けいだい》を突っ切っていくわけにもいかなかった。迷っているうちに黒犬は敗れ、傷つきながらも蜥蜴が勝ってしまった。
「西尾《にしお》、逃げろ!」
見つかるのも構わずに佐貫はみちるたちに向かって叫び、同時に狛犬《こまいぬ》の陰から飛び出していた。なぜか葉は倒れて、みちるはゆっくりと歩を進めている蜥蜴を呆然《ぼうぜん》と眺めている。
(あのバカ、なにもたもたしてんだよ)
蜥蜴の怪物を迂回《うかい》するように鐘楼《しょうろう》へ向かって走った。戦いで傷を負っているせいか、蜥蜴の動きはさっきよりもはるかに遅い。しかし、あの怪物には突然別のところに現れる能力があるらしい。もう一刻の猶予《ゆうよ》もない。
佐貫は太り気味の外見のわりに、運動神経は発達している。たちまち二人のそばへ駆《か》け寄った。
「なにやってんだ!」
佐貫が叫ぶと、みちるははっと顔を上げた。葉は完全に意識《いしき》を失っているらしい。佐貫は小柄な葉の体を肩にかつぐようにして持ち上げる。
怪物はゆっくりとではあるが、鐘楼の方へ確実《かくじつ》に近づいて来ていた。とにかく逃げるとしたら石段の方だ。佐貫はみちるが付いて来ているのを確認して、元来た方へ走り出した。
ふと、石段を上がってくる人影《ひとかげ》が見えた気がした。誰《だれ》だろう、と佐貫が目を凝《こ》らそうとした刹那《せつな》、あたりの景色がさっと白く染《そ》まり、踏みしめていた石畳《いしだたみ》の感覚が消えた。
「え?」
気がつくと、佐貫は地面に膝《ひざ》をついていた。かついだままの葉の体重が肩にぐっとのしかかる。相変わらず彼は神社の境内にいて、石畳の感覚も元に戻っている。なんだったんだ今の、と思ったその時、
「佐貫《さぬき》!」
なぜか離《はな》れた場所からみちるの声が聞こえた。
「えっ」
声の聞こえた方を見ると、十メートルほど離れた石段の近くにみちるが立っている。佐貫は混乱し始めた——いつのまに西尾《にしお》は俺《おれ》から離れたんだろう。いや、違う。さっきまで俺もあそこにいたはずだ。
ふと、佐貫は自分のすぐそばに鐘楼《しょうろう》があること気づいた。はっと振り向くと、すぐ目の前に黒い蜥蜴《とかげ》の顔がある。一瞬《いっしゅん》のうちに佐貫の全身が凍《こお》りつく。動いたのは佐貫たちの方だった。この怪物の能力は、ただ自分の体を移動させるだけのものではない——。
(獲物《えもの》を引き寄せることもできるんだ)
かぱっと蜥蜴の口が大きく開いた。今までの人生でこれほど唐突《とうとつ》に死と向かい合ったことはなかった。暗い洞《ほら》のような口の中で、二股《ふたまた》に分かれた舌が別の生き物のように蠢《うごめ》いていた。ゆっくりと蜥蜴の両顎《りょうあご》が佐貫の視界を覆《おお》い尽くしていく。彼の方も呆然《ぼうぜん》と口を開けたまま、ありえない光景をただ見守っていた。
ふと、どこかからかすかな水音が聞こえた。鼻先がぶつかるほどの距離《きょり》まで迫っていた蜥蜴の口が、急速に遠ざかっていった。誰《だれ》かが佐貫と葉《よう》をかばうように彼の前に立つ。
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「……裕生《ひろお》?」
彼の友人がそこに立っていた。長い距離《きょり》を走って来たらしく、Tシャツの背中は汗に濡《ぬ》れて息をしている。なぜか彼の手には栓《せん》の開いたガラスのビンがあった。
佐貫《さぬき》たちから離《はな》れた怪物は、苦しげに身を震《ふる》わせていた。黒いうろこに覆《おお》われた背中から、しゅうしゅうと焼けただれているように煙《けむり》が上がっている。裕生は無言で怪物の方へ走っていくと、怪物に向かって瓶を大きく振った。わずかな黒い水滴が怪物の体に飛び散っただけだったが、水滴に触れたところからさらに煙が噴《ふ》き出す。
どうやら、裕生はその瓶の中身を使って佐貫たちを助けようとしているらしい。とどめとばかりに裕生が瓶を振り上げた瞬間《しゅんかん》、ますます激《はげ》しく身を震わせていた怪物がふっと姿を消した。
裕生はしばらく確《たし》かめるようにあたりを見回していたが、やがて佐貫と葉《よう》の方へ戻って来た。
「あいつ、死んだのか?」
おそるおそる佐貫は尋《たず》ねた。裕生は首を振った。
「違うと思う。『契約者』の影《かげ》に戻っただけだよ」
それから悲しげに付け加えた。
「……またいつか襲《おそ》って来る」
裕生は葉の体を佐貫から受け取り、地面に横たえた。
 葉自身の命に別状はないようだった。ただ気絶しているだけらしい。
裕生は立ち上がると、本殿《ほんでん》の前に倒れている「黒の彼方《かなた》」に慎重《しんちょう》に近づいていった——首が一つない。武器を持っている「眠り首」の方だ。裕生がここへ到着した時には、すでに「黒の彼方」は倒れていたが、なにが起こったのかは想像がつく。おそらく、あの蜥蜴《とかげ》のカゲヌシと戦って敗北したのだ。
(でも、死んだわけじゃない)
以前にも「黒の彼方」は首を失っていると聞いた。司令塔であるこの最後の首がなくならない限り、活動することは可能だろう。「黒の彼方」を殺す時は、犬の首に気をつけろとレインメイカーは言っていた。それも後一つ、ということになる。しかも、もうあの振動の武器も使うことができない。
不意に「黒の彼方」の肉体が透《す》き通り、ふっと石畳《いしだたみ》の上から消えてしまった。契約者もカゲヌシも意識《いしき》を失えば、召還《しょうかん》されたカゲヌシは自動的に契約者の影に戻ってしまう。
「……藤牧《ふじまき》」
振り向くとみちるが立っていた。
「どういうことなのか教えて。詳しいことは藤牧に聞けって言われたの」
彼女はいったん言葉を切り、裕生の目をまっすぐに見た。
「……『黒の彼方』から」
あいつは名乗ったんだ、と裕生《ひろお》は思った。もうこの二人にはその場限りの説明でごまかすわけにはいかない。しかし、自分の他《ほか》にもなんの力もない人間をこの戦いに巻きこむべきなのか、裕生には判断できなかった。
「その前に、ここでなにがあったのかぼくに話して欲しいんだけど」
と、裕生は言った。
 みちるたちは鐘楼《しょうろう》の陰に移動して座りこんだ。裕生は気絶したままの葉《よう》の上半身を抱きながら、みちるたちの説明に無言で耳を傾けている。みちるは「カゲヌシ」や「サイン」がなんなのか、何度か説明を求めたが、裕生は話の先を促《うなが》すだけだった。
やがて最後まで話し終えた二人は、裕生が口を開くのを待った。しかし、裕生はいつまで経ってもなにも言わなかった。
「で、お前からの説明は?」
焦《じ》れた佐貫《さぬき》が言ったが、裕生は首を横に振った。
「悪いんだけど話せない」
「なんだそりゃ」
佐貫がむっとした顔で言った。
「さんざん喋《しゃべ》らせといてそりゃねえだろ? 俺《おれ》たちだって危ない目に遭《あ》ったんだから、なにがあったのか知る権利ぐらいあるんじゃねえか?」
「聞いたらもっと危ない目に遭うかもしれない」
と、裕生は冷静に言った。
「ぼくだってあいつらのことを全部知ってるわけじゃないけど、それでも前に警告《けいこく》されてるんだ。なんの力もない人間がなにかしようとしたら危ないって。確《たし》かに二人とも大変な目に遭ったけど、全部見なかったことにすれば、多分大丈夫だと思う」
「お前なあ」
と、佐貫が言った。
「目の前で起こったこと忘れるほど、俺たちの頭は都合《つごう》よくできてねえよ。こんなこと忘れるヤツいるわけねえだろ? そんなの無理だろ?」
忘れる、という言葉を佐貫が口にすると、なぜか裕生の表情が曇《くも》った。悲しげに目を伏せて、気を失ったままの葉の額《ひたい》を静かに撫《な》でた。
はっとみちるは息を呑《の》む——初めて会った時の裕生が今の姿に重《かさ》なった。
「藤牧《ふじまき》は雛咲《ひなさき》さんを助けようとしてるんだよね?」
みちるは静かに言った。裕生はなにも答えなかった。
「そのためには、人間のままで怪物と戦わなきゃならない。だから、危険だって警告されたんでしょ?」
裕生《ひろお》はそれにも答えない。みちるはちょっとためらってから、また口を開いた。
「藤牧《ふじまき》が言いたいのは、雛咲《ひなさき》さんのために命をかける覚悟がなかったら、このことに係《かか》わる資格がないってことでしょ?」
重い沈黙《ちんもく》がみちるたちを包みこんだ。佐貫《さぬき》も無言で腕を組んでいた。
「……知りたいから教えるってわけにいかないんだよ」
裕生はようやくそれだけ言った。
「だってさ、佐貫。後はあたしたちが考えようよ」
みちるは佐貫に言った。
「……分かった」
と、佐貫も真顔でうなずいた。
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