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シャドウテイカー フェイクアウト31

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:7 佐貫《さぬき》は慎重《しんちょう》な足取りでタンクローリーへ近づいていく。裕生とみちるは公園の隅にある水道栓《すいど
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 佐貫《さぬき》は慎重《しんちょう》な足取りでタンクローリーへ近づいていく。裕生とみちるは公園の隅にある水道栓《すいどうせん》のそばで気を失っている。今頃《いまごろ》、意識《いしき》を取り戻した葉が二人を介抱しているはずだ。結局、大した火傷《やけど》を負わずに済んだが、それにしても自分の体に火を点けるというのはムチャクチャだと佐貫《さぬき》は思った。
自分はそこまでできないと思う——いや、それしかないと判断すればやるかもしれないが、なんの迷いもなくあんな風にはとてもやれない。それができる二人に佐貫は素直に感心していた。
(まあでも、あの二人が暴走したら止めないとな。うん)
彼は自分自身にうなずきながら、ふと立ち止まった。すぐ目の前の水面に、皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》が仰向《あおむ》けに倒れていた。
彼は目を開けて、ぼんやりと夜空を眺めていた。
「……なにしに来た?」
弱々しくかすれた声で言った。
「いや、警察《けいさつ》がもうすぐ来るみたいなんで。さっき道路も開通したみたいだし」
佐貫はふもとの方をすっと指さしながら言った。消防車のものとは違うサイレンが聞こえる。
「そんなもの放っといても来るだろう。それを言いにわざわざこんな危ないところに戻って来たのか?」
「いや、なんていうか……」
佐貫は一瞬《いっしゅん》目を逸《そ》らして、ガソリンでばりばりになった頭をかいた。
「結局、『皇輝山文書』ってなんだったのかなって」
ぽかんと口を開けて天明は佐貫を見上げる——それから、低い笑い声を上げ始めた。
「まったく、お前らはどいつもこいつも……そんなことが聞きたくて、わざわざ俺《おれ》みたいな悪党のところに戻って来たってのか?」
彼は無言でうなずいた。この事件はともかくも終わった。そうすると、先日から抱えていた好奇心がむくむくと頭をもたげて来た。天明が警察に捕まれば、もう直接話を聞くことはできないだろう。機会は今しかないと思ったのだ。
「……お前はどう思ってた? 『皇輝山文書』のことは」
「存在しないかもしれないって思ってた。あんたが適当にでっち上げたのかもって」
「半分当たりで、半分外れだ」
と、天明はつぶやいた。
「『皇輝山文書』は確《たし》かに存在するし、俺が持ってる。ただ、俺が喋《しゃべ》ってた内容のほとんどはでっち上げだ。はっきり言うと、俺にも読めないんだ」
佐貫は目を瞬《またた》いた。
「……ワケ分かんねえんだけど」
と、彼は素直に言った。
「俺が書いたんじゃないんだよ。俺は四年前に怪我《けが》をして以来、何度も妙な夢を見るようになった。暗い海の中を漂《ただよ》っていて、気が付くとどこかの島へ流れ着くんだ。そして、海岸で身の毛もよだつようなバケモノに出会う。毎晩毎晩、繰り返し同じ内容だった」
ふと、佐貫《さぬき》は既視感《きしかん》を覚えた。つい最近、同じような夢の話をどこかで聞いた——そうだ、と佐貫は思った。裕生《ひろお》が「黒の彼方《かなた》」というカゲヌシの名前の由来を話していた時、似たような夢の話をしていた気がする。
「それを昔からの知り合いに話したら、そいつは一冊の本をくれた。俺《おれ》にはその本を持つ資格があるとか言ってな。中を開いたら、見たこともない文字で書かれてた。まあ、確《たし》かにただのデタラメだったのかもしれないな。俺はそれに『皇輝山《おうきざん》文書』という名前をつけて、ずっと嘘《うそ》をつき続けていた」
天明《てんめい》はスーツのポケットを探ると、佐貫に一本の鍵《かぎ》を差し出した。
「そいつは鶴亀《つるき》駅のコインロッカーの鍵だ。ロッカーの中に『皇輝山文書』が入ってる……お前にやるよ」
「……いいのか?」
「俺は夢から覚めた。もう嘘をつく必要はなくなったんだ」
ふと、天明は目を閉じた。そして、口の中でつぶやいた。
「……八尋《やひろ》」
なにを言っているのか佐貫にはよく分からなかったが、彼はうなずいて鍵を受け取った。裕生たちの様子《ようす》が一段落したら、取りにいこうと思った。
佐貫はポケットに鍵をしまって、天明から離《はな》れようとした——が、足を止めて振りかえった。
「その『皇輝山文書』、あんたが書いたんじゃなかったら、誰《だれ》が書いたんだ?」
沈黙《ちんもく》が流れた。どこかからパトカーのサイレンが、公園の方へ近づいて来ていた。
「お前にも多少はゆかりのある人間だよ」
天明は目を閉じたままで言った。
「雛咲《ひなさき》清史《きよし》……あの雛咲|葉《よう》の父親だ」
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エピローグ
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黒い海がありました。
海のむこうにちいさな島があります。その島には、女の子がすんでいました。
気がついたときから、女の子はずっと一人だったので、名前がありませんでした。
だから、コトバも——
 葉《よう》はふと目を開けた。
確認《かくにん》しなくともはっきりと思い出せる文章は、以前に比べるとまた少なくなっている——確実に症状は進んでいた。
団地の以前住んでいた部屋で、彼女は小さなノートを手にしている。藤牧《ふじまき》裕生《ひろお》、と書かれた文字に軽く触れた。
(いつまで一緒《いっしょ》にいられるか、分からない)
彼女は心の中でつぶやいた。
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