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シャドウテイカー フェイクアウト32

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:「結局、なんにもならなかった」隣《となり》のベッドから、裕生の弱々しい声が聞こえた。右腕の包帯を上にして寝転がっていたみ
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「結局、なんにもならなかった……」
隣《となり》のベッドから、裕生の弱々しい声が聞こえた。右腕の包帯を上にして寝転がっていたみちるは、ふと彼の方を振りかえった。
ベッドに起き上がった裕生が、シーツに重《かさ》ねられた自分の両手を見ていた。うつむいた顔の角度といい、憂《うれ》いを帯《お》びた表情といい、まさに初めて出会った時の裕生そっくりで、みちるはつい目を逸《そ》らした——心臓《しんぞう》がどきどきし始めている。
鶴亀山《つるきやま》の事件から一夜明けていた。
火傷《やけど》を負った二人はそのまま入院し、あろうことか大きな病室の隣り合わせのベッドが割り当てられてしまった。病院には鶴亀山での混乱で怪我《けが》を負った人たちが大勢収容されており、病室を男女別にする余裕はなかったのだ。皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》は逮捕《たいほ》された。事件の被害がどのようなものなのか、今のところははっきりしていないらしいが、鶴亀山での死者はゼロということだった。
「ぼくがもう少しうまくやっていれば、よかったのかもしれない」
悲しげに裕生が言った。みちるの胸がきゅっと締《し》めつけられる。絶対に早く退院しよう、とみちるは心の底から思った。このポジションで一緒に居続けたら、本気で恋に落ちてしまうかもしれない。
「でも、藤牧がいなかったら、たくさんの人が死んでたよ」
彼は答えなかった。みちるは裕生の顔を窺《うかが》った。あたし少しでも藤牧くんの力になりたい、という中一の頃《ころ》の自分の気持ちが亡霊《ぼうれい》のように蘇《よみがえ》る。今の気持ちと区別ができなくなりそうだった。
「それになんにもならなかったって、あたしたちが仲間になったじゃない……そんなに役に立たないかもしれないけど。あはは」
裕生《ひろお》はみちるの顔を見ながら微笑《ほほえ》んだ。
「そんなことないよ……西尾《にしお》たちにはほんとに感謝《かんしゃ》してる。協力してくれてどうもありがとう」
ごめんそれやめて、とみちるは心の中で悲鳴を上げた。似たような言葉を昔も聞いた記憶《きおく》がある。みちるの頬《ほお》はすっかり熱《あつ》くなっていた。
あの時の裕生は「見かけだけ悲しそうなただのトロい男の子」だった。でも、今は違う気がする。みちるの目にはあの天明《てんめい》と渡り合った時や、自分の体に火を点《つ》けた時の強い裕生の姿が焼きついている。
ひょっとすると、今度もまた彼の態度《たいど》に騙《だま》されているだけなのかもしれない。
(うん、きっとそうだ。今のあたしが藤牧《ふじまき》のこと、本気で好きになるわけないんだし)
どこをどう騙されているのか全然分からないのだが、みちるは強引に自分にそう言い聞かせ、ベッドの上で体を起こした。
「どうしたの?」
「あ、あたし先生に呼ばれてたから。もういくね」
包帯を巻かれた右腕をかばいながらベッドから降りると、彼女はよろけながら病室から出ていった。
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