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シャドウテイカー フェイクアウト33

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:「」裕生は黙《だま》ってみちるの背中を見送った。彼女が医師と会う時間はもっと先だった気もするが、勘違《かんちが》いだった
(单词翻译:双击或拖选)
「……」
裕生は黙《だま》ってみちるの背中を見送った。彼女が医師と会う時間はもっと先だった気もするが、勘違《かんちが》いだったかもしれない。彼はベッドに体を横たえて目を閉じた。ひどく体が重苦しい。両足に負った火傷《やけど》のせいだけではなく、ここ数日で色々なことが起こりすぎた。
彼はみちると佐貫《さぬき》に心から感謝していた。「黒の彼方《かなた》」を殺すことはできなかったが、あの二人がいなかったら天明と戦うこともできなかっただろう。
(それに、レインメイカーにも……)
ふと、裕生はためらった。レインメイカーに本当に感謝すべきなのか、よく分からなかった。確《たし》かに『黒曜《こくよう》』を渡してくれたが、あの男にはあまりにも分からないことが多すぎる。
(どうして『黒曜』を持ってたんだろう)
「黒の彼方」は裕生がどこから『黒曜』を手に入れたのか知りたがっていた。今まで出会った他《ほか》のカゲヌシと同じように、「黒の彼方」もレインメイカーの存在を知らないのだろう。カゲヌシにとっても謎《なぞ》の存在が、本当に人間にとって「味方」なのか——。
「寝てんのか?」
はっと裕生《ひろお》が目を開けると、ベッドのそばに雄一《ゆういち》が立っていた。
「あれ、兄さん。どうしたの」
「どうしたのって見舞《みま》いぐらい来てもおかしくねえだろ。弟が入院してんだからよ」
「そうだけど、忙《いそが》しいんじゃないの」
「んな心配すんな、怪我人《けがにん》はおとなしく寝てろ……って起こしたの俺《おれ》か」
ふう、と雄一は深く息をついた。いつもと比べると声に精彩《せいさい》がない。どことなく疲れているように見えた。
「座ったら?」
裕生はベッドの脇《わき》の椅子《いす》を指さした。しかし、雄一は腕組みしたまま動こうとしない。なにか言いたげに裕生を見下ろしていた。この兄がこんな風にためらうのは珍《めずら》しいことだった。
「……」
裕生は不安になってきた。鶴亀山《つるきやま》公園で天明《てんめい》の起こそうとした火事を止めようとしたことは警察《けいさつ》にも知られているし、父と兄にもそう説明した。もちろんカゲヌシのことは伏せたままだが、そろそろ雄一はなにか感づいているのではないか。
「……お前に聞きたいことがあんだけどよ」
突然、雄一が言った。心臓《しんぞう》の鼓動がとたんに速くなり始めた。
「な、なに?」
「俺、お前に嘘《うそ》をついたことってあったか?」
「は?」
「だから嘘だよ嘘。俺がお前を騙《だま》したことあるかって聞いてんだ」
裕生はしばし考えこんだ。質問にどう答えたらいいかではなく、どうして急にそんな質問をするのかがよく分からない。そもそも、嘘をついているかどうかは本人が一番よく知っているはずだ。
「……自分で言ったこと忘れて、全然違うこと言ったりするけど。わざわざ嘘つこうとしてついたことはないと思う……よ?」
と、裕生は答えた。雄一は顔をしかめた。明らかに不満そうに見えたので、裕生は慌《あわ》てて付け加えた。
「そう。だから、兄さんは嘘つくような人じゃないよ。嘘なんかつかなくても大丈夫な人だし」
ぼくと違って、と裕生は心の中で付け加えた——もしこの兄のようだったら、嘘などつかずに、誰《だれ》も傷つけずに戦えたかもしれない。
「……ちっ」
ふと、雄一が舌打ちをした。ますます苦《にが》い顔になっている。
「……だから相談《そうだん》されねえのか……」
「え?」
思わず裕生《ひろお》は聞きかえしたが、雄一《ゆういち》はひらひらと手を振った。
「いや。それは仕方ねえ。俺《おれ》には俺の道があるしな。だから、お前もお前の道をいけ。そういうこった」
「はあ……」
首をかしげながら裕生が言うと、雄一は深くうなずいて見せた。そして、大股にドアへ向かって歩き出す。
「え、もう帰るの?」
「ん、用事は済んだからな。また来るわ。じゃあな」
雄一は振り向かずにそのまま病室を出ていってしまった。
(なんだったんだろ、今の)
裕生は再び目を閉じて考える。今の短い会話のなにが「用事」だったのだろう。いくら考えても答えは出なかった——いつのまにか、裕生はゆっくりと眠りに落ちていった。
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