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シャドウテイカー フェイクアウト34

时间: 2020-03-29    进入日语论坛
核心提示:トートバッグを提《さ》げて、葉《よう》は病室に足を踏み入れた。 奥から数えて二番目が裕生のベッドで、今は毛布をきちんとか
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トートバッグを提《さ》げて、葉《よう》は病室に足を踏み入れた。
 奥から数えて二番目が裕生のベッドで、今は毛布をきちんとかけて眠っている。彼女は足音を忍ばせて近づいていった。隣《となり》はみちるのベッドなのだが、今は外出しているのか姿が見えなかった。
葉は裕生の顔をじっと見おろした。すやすやと寝息を立ててよく眠っていた。目を覚ましてしまうかもしれないが、ちょっと頬《ほお》に触ってみたくなる。
自分が指を伸ばすところを、なんとなく葉は想像した。
指では起きてしまうかもしれない。
それなら、唇《くちびる》——。
葉ははっと口元を押さえてうつむいた。自分が想像しかけたことを、今すぐ誰《だれ》かに謝《あやま》りたい気持ちになる。そんなことを考えるのは、彼女にとって「とてもよくないこと」だった。すぐに心の奥底《おくそこ》に沈めてしまった。
葉はそばにあった椅子《いす》に座り、静かに目を閉じた。裕生が入院して以来、あまり眠ることができない。「黒の彼方《かなた》」を引《ひ》き離《はな》すことに失敗したこと、あのカゲヌシがより強くなってしまったことはすでに聞かされている。そのことを思うと不安が募《つの》った。
今、ベッドのそばでこうして座っていると、懐《なつ》かしく落ち着いた気持ちになった。裕生が入院し始め、彼女の両親が家にいた頃《ころ》——なんの不安も持たなかったあの頃のことを思い出すことができた。
 ふと気が付くと、葉《よう》はベッドに顔を伏せていた。
慌《あわ》てて体を起こす——いつのまにか裕生《ひろお》がベッドに半身を起こしていて、彼女を見つめていた。
「おはよう」
と、裕生は微笑《ほほえ》んだ。
「あの、ごめんなさい……寝てました」
「いいよ、そんなの。ぼくだって寝てたんだし。別にもっと寝ててもいいよ」
葉は慌てて首を振った。自分がどんな顔で眠っていたのかと思うと、今すぐここから逃げ出したい気持ちになった。
「……葉」
不意に裕生は真剣な顔で言った。
「ごめん……嘘《うそ》をついて、それでもうまくいかなかった」
再び彼女は首を振った。全部彼女のためにしたことなのだ。裕生が謝《あやま》ることではないことぐらい分かっている。ただ——。
「いつかまた、わたしにうそをつく?」
一瞬《いっしゅん》、裕生の顔がゆがんだ。
「……つくかもしれない。そうするしかなかったら」
答えは聞く前から分かっていた。「黒の彼方《かなた》」を出し抜くには、同時に彼女に嘘をつくしかないのだ。
「……ついて」
と、葉はつぶやいた。
「え?」
「うそ、ついていいです。わたし、大丈夫だから」
裕生は黙《だま》ってうなずく。彼にとってもつらい選択《せんたく》だと、葉にも分かっていた。
「……でも、一つお願いしてもいいですか」
彼は何度かまばたきをした。
「いいよ。なに?」
葉は傍《かたわ》らに置いていたバッグから、小さなノートを出した——「くろのかなた」が書かれたあのノートだった。
「これ……」
裕生は目を瞠《みは》った。
「ごめんなさい。わたしがずっと持ってました」
「ううん。そんなの別にいいよ……そうだったんだ」
裕生《ひろお》はなにも尋《たず》ねなかった。彼が物語を書いた時に比べて、ひどくノートが傷《いた》んでいることにも触れなかった。ただそれを手に取って、懐《なつ》かしそうにページをめくっている。
独《ひと》りぼっちの女の子に出会った男の子は、彼女に言葉を教え、最後に名前を与える。そして二人で舟に乗って旅に出る——そこで物語は途切《とぎ》れていた。
「つづき、書いて下さい」
と、葉《よう》は言った。彼は顔を上げる。
「わたし、そのつづきが読みたい」
それがわたしのねがい。
ずっとその言葉を口にする勇気がなかった。でも、今なら言うことができる。一緒《いっしょ》にいられる時間は、もう残り少ないかもしれないから。
ふと、裕生が手を伸ばして葉の髪に触れた。彼女の淡い色の髪の上を、彼の指先がゆっくりと動いた。
「……分かった。必ず書くよ」
裕生は優《やさ》しい笑顔《えがお》で言った。
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