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シャドウテイカー リグル・リグル01

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:プロローグ その日、雛咲《ひなさき》は急いでいた。小柄《こがら》な体を丸めるようにして、少し前の地面を見据《みす》えたま
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プロローグ
 その日、雛咲《ひなさき》は急いでいた。
小柄《こがら》な体を丸めるようにして、少し前の地面を見据《みす》えたまま脇目《わきめ》もふらずに走っていた。
背中のランドセルの中で、教科書やノートがかたかたと揺れている。小学校を出る時、校舎の時計を見ると、もうあまり時間はなかった。一度団地に帰って、ランドセルを置いてから、幼馴染《おさななじみ》の裕生《ひろお》に会いに行くつもりだった。
(裕生ちゃん……裕生ちゃん)
葉は心の中で、幼馴染の名前を繰《く》り返している。ずっと名前を唱《とな》えていれば、悪いことはなにも起こらないような気がしていた。
加賀見《かがみ》団地の近くまで来た時、葉は知り合いに出会った。出会った、というよりは轢《ひ》かれそうになったと言った方が正しい。相手はバイクに乗っていた。細い路地《ろじ》から急に飛び出した葉の目の前で、緩《ゆる》いスピードでよろよろと走っていたバイクが急停止した。
「あっぶねー……ってなんだ。葉かよ」
加賀見高校の制服を着た金髪ピアスの少年が、バイクのシートの上でほっと息をついた。団地の同じ棟《むね》に住んでいる藤牧《ふじまき》雄一《ゆういち》だった。葉にとっては昔からよく知っている「近所のお兄さん」だが、世間的には立派《りっぱ》な不良である。駅前でしょっちゅうケンカしている、とか、しょっちゅう警察《けいさつ》に補導《ほどう》されている、とか、よくない噂《うわさ》ばかり聞いていた。
葉は彼の乗っているバイクをしげしげと見る。雄一はバイクを持っていなかったはずだ。それに、よく見るとイグニッションキーの鍵穴《かぎあな》のあたりが、なにかを無理やりねじこんだようにぼろぼろになっていた。訝《いぶか》しげな葉のまなざしに気づいたのか、雄一はこほんと咳払《せきばら》いをした。
「あのな、葉。これは借りモンだ。マジで借りただけだ」
雄一は真面目《まじめ》くさった顔つきで言う。葉は戸惑《とまど》いながらうなずいた。
「で、ひょっとすっとお前はこの後お巡《まわ》りさんに会うかもしんねえ」
葉は首をかしげた。いきなり「お巡りさん」が話に出てくる理由がよく分からなかった。
「なんか聞かれても、俺《おれ》がバイク乗ってたって言うんじゃねえぞ? 俺がどっちに行ったか教えんのもナシだ。ちっと一回りしたら返すんだからよ……もと置いてあったとこに」
雄一がなにが言いたいのか、葉にはよく分からなかった。かなり不穏《ふおん》な話だった気もしたが、深く考える余裕はなかった。話を切り替えるつもりなのか、雄一はばんと両手をいきなり叩《たた》いた。
「で、そんな急いでどうした? なんかあったのか?」
「病院に行く」
かすかに雄一の眉根《まゆね》に影《かげ》が射《さ》した。
「……裕生の見舞《みま》いか?」
葉はうなずいた。病名はよく知らなかったが、二週間ほど前から藤牧裕生は重い病気で入院している。今日《きょう》はその手術の日だった。
「そっか。よろしく言っといてくれ」
少しだけ沈んだ声で雄一《ゆういち》は言った。
「……行かないの?」
「別に俺《おれ》が行く必要ねえだろ。早く元気になれって伝えてくれや。何の病気か知らねーけど」
思わず葉《よう》は息を呑《の》んだ。雄一は裕生《ひろお》の手術が今日だということも、手術をしなければならないほど重い病気だということも知らないらしい。ほとんど家に帰っていないし、家にいても家族とはほとんど口もきいていない、と裕生から聞いている。
「あの……」
一緒《いっしょ》に来て、と言おうとした時、
「……ヤベ」
雄一が口の中でつぶやいた。彼の視線《しせん》の先を追うと、自転車に乗った制服|警官《けいかん》が、なにか叫びながらこちらに向かって走ってくるところだった。雄一はなぜか慌てたようにハンドルを握った。
「そういうわけで俺《おら》ァ行くわ。じゃあな——————」
と、言い残して雄一を乗せたバイクは走り出した。よろけながら遠ざかるバイクを葉は見送った——そういえば雄一が免許を持っているという話を、聞いたことがない気がする。
 葉は団地の玄関のドアを開けた。
部屋の中はしんと静まりかえっている。キッチンにも居間にも母親の姿はない。鍵《かぎ》がかかっていなかったことに葉は疑問を感じなかった。多分《たぶん》、団地の敷地《しきち》の中にあるスーパーへ買い物に出かけたのだろう。その程度の外出で鍵を閉める住人の方が珍しかった。
(手紙、置いていこう)
母親への置き手紙の文面を考えながら、葉は自分の部屋へ行って机の上にランドセルを置いた。急いで居間へ戻った葉は、びくっと立ちすくんだ。
部屋の中心にいつのまにか眼鏡《めがね》をかけた背の高い男が立っていた。
「……葉」
喉《のど》になにか詰まっているような、ざらついた声で彼は言った——父の雛咲《ひなさき》清史《きよし》だった。葉はほっと息をつく。一瞬《いっしゅん》、なぜかそこに立っているのが父ではないような気がした。そういえば、今日父は会社を休んでいた。
「どこかへ出かけるのか?」
と、清史は言った。どことなく咎《とが》めるような声の響《ひび》きに葉は戸惑《とまど》った。
「裕生ちゃんのお見舞《みま》い」
清史は黙《だま》っていた。ぼんやりした目つきで部屋のなにもないところを見つめているだけだった。
「お母さんは?」
何気なく葉《よう》が尋《たず》ねると、ごくり、と清史《きよし》の喉《のど》が動いた。なにか慌てて言葉を呑《の》みこんだように見えた。しかしその時の葉にとってはすべて些細《ささい》なことだった。一刻も早く病院へ行って裕生《ひろお》に会いたかった。
「ちょっと出かけてるんだ。帰りは遅くなる」
父のその言葉に、葉は上《うわ》の空《そら》でうなずいた。母が出かけているのは最近ではよくあることだった。父と二人で帰りを待つことも珍しくない。
「実は父さんもちょっと出かけなきゃいけなくなった」
と、清史は言った。葉はその言葉を聞きながら、ちらりと居間の時計を見上げる。ここでぐずぐずしていると、手術前に裕生と話すことはできないかもしれない。
「お母さんも一緒《いっしょ》なの?」
「……そうだ。お母さんも一緒だ」
葉はむしろその話を聞いてほっとしていた。それなら自分が病院に出かけることも、父から母に伝わるはずだった。
「葉、一人でここで父さんたちの帰りを待てるか?」
葉は再びうなずく。どうしてわざわざそんなことを聞くのか分からなかった。葉は留守番に慣《な》れているし、今まで「待てなかった」ことなど一度もない。ただ——。
「どこに行くのかは言えないんだ」
突然、きっぱりと清史は言った。葉は初めて父親の顔を見上げる。漠然《ばくぜん》と不安は覚えたが、そう言われた以上、なにも聞いてはいけない気がした。
「……もう出かけなさい。急いでるんだろう」
一瞬《いっしゅん》、胸に浮かんだもう一つの質問——いつ帰ってくるのか、を口にするか迷ったが、確《たし》かに父の言うとおり急いでいた。どうせ待っていれば帰ってくる。
玄関のドアを開けた時、葉は立ち止まった。なにかの気配《けはい》を感じたからではない。むしろその逆で、この部屋に帰ってきた時と同じように、人の気配が背後からまったく感じられなかったからだ。
葉は振り返った。誰《だれ》もいないと思ったが、短い廊下の向こうに清史が立っていた。声をかけるでもなく、ただ葉をじっと見ている。
「……行ってきます」
と、葉は言う。清史は答えなかった。団地を出た後も、父が黙《だま》っていたことが妙《みょう》に葉の胸に引っかかった。
(裕生ちゃん……裕生ちゃん)
しかし、その名前を繰り返すうちに、すぐに彼女はそれを忘れた。
 裕生《ひろお》の手術は成功した。
団地に戻ってみると本当に両親はいなくなっており、葉《よう》は「一人で」二人の帰りを待つことにした。
 何年|経《た》っても両親は帰らなかった。
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