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シャドウテイカー リグル・リグル04

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:3 朝の教室。新学期の三日目だった。加賀見《かがみ》高校では普段《ふだん》通りの授業も始まり、夏休みが過ぎ去ったことを生
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 朝の教室。
新学期の三日目だった。加賀見《かがみ》高校では普段《ふだん》通りの授業も始まり、夏休みが過ぎ去ったことを生徒たちはしぶしぶ受け入れつつある。
窓際《まどぎわ》の一番後ろの席で、三人の生徒が他《ほか》のクラスメートに聞こえないよう頭を寄せ合って話をしている。藤牧|裕生《ひろお》と、その友人の佐貫《さぬき》峻《たかし》と西尾《にしお》みちるだった。
「……で、結局誰《だれ》だったんだ、その人って。本当に雛咲さんの父親か?」
佐貫が尋《たず》ねると、裕生は首をかしげた。
「よく分からないけど、とにかく見た目は葉のお父さんそのものだって兄さんは言ってた」
「でも、全然違う名前なんでしょ? 別人じゃないの?」
と、みちるが口をはさむ。
昨日《きのう》、厳《きび》しい顔で団地に帰ってきた雄一は、裕生にこっそりと「雛咲葉の父親そっくりの人物に出会った」ことを告げたのだった。
「分からないけど、兄さんがあそこまで言いきるんだからほんとに似てるんだと思うよ」
「藤牧|先輩《せんぱい》、名前|憶《おぼ》えんのは苦手《にがて》だけど顔は間違えないんじゃないか」
佐貫《さぬき》が腕組みをしながら言った。
佐貫とみちるは裕生《ひろお》の協力者である。すでに裕生は二人に葉《よう》と自分たちの秘密を打ち明けていた。
彼の幼なじみの雛咲《ひなさき》葉には「黒の彼方《かなた》」というカゲヌシ——異世界から来た怪物が取《と》り憑《つ》いている。放っておけばいずれ葉は完全に意識《いしき》を乗っ取られてしまうはずだった。記憶《きおく》の欠落もその兆候《ちょうこう》である。
裕生と葉は「黒の彼方」を引《ひ》き離《はな》す方法を探るのと同時に、同族を捕食《ほしょく》する「黒の彼方」の力を使って、人間に害をなす他《ほか》のカゲヌシと戦ってきた。先月、鶴亀町《つるきちょう》で事件を起こした皇輝山《おうきざん》天明《てんめい》も、「龍子主《たつこぬし》」というカゲヌシに取り憑かれていた。
「もし雛咲さんのお父さんだったら、例の『皇輝山文書』のことも分かるんじゃねえか?……なんで、カゲヌシの『サイン』があれに書いてあんのか」
『皇輝山文書』とは、皇輝山天明が持っていた偽《にせ》の古文書《こもんじょ》のことだった。もともと題名もついていない粗末《そまつ》な和綴《わと》じの書物で、天明の話では失踪《しっそう》する直前の雛咲|清史《きよし》から託されたものだという。暗号のような奇妙な文字で書かれているため、持ち主だった天明にも解読できなかったらしい。逮捕《たいほ》される直前、天明はそれを佐貫に託していた。
もちろん、裕生たちにもどういう内容なのかはさっぱり理解できなかった。しかし、つぶさに見ていくうちに見覚えのある記号がいくつも出てくることに気づいた。
『皇輝山文書』の文字には、なぜか今まで裕生たちが目にしてきた「サイン」——カゲヌシの体に刻まれた固有のしるしが含まれていた。つまり、この書物にはカゲヌシに関係することが書かれているのだった。
ただ、仮に葉の父親が『皇輝山文書』を作ったのだとしたら、ひとつ気がかりなことがある。「サイン」が書かれているということは、葉の父親もカゲヌシとなんらかの関係があることになってしまう。
「あれが本当に雛咲さんのお父さんが作ったものかどうかも、聞けば分かるしね」
と、みちるが口をはさむ。『皇輝山文書』が手に入った時から、彼女はずっと葉の父親がそれを作ったという話に疑問を唱《とな》えてきた。あの天明がどこまで本当のことを言うかは分からない。裕生はどちらの可能性もあると思っていた。
「ただ、本当に葉のお父さんだったら、一緒《いっしょ》にいた女の子は……」
裕生は口をつぐんだ。三人の間に沈黙《ちんもく》が落ちる。もし、船瀬《ふなせ》という男が雛咲清史だとしたら、失踪中に別の家族を得たということになる。ずっと両親の帰りを待っている葉に、とても伝えられる話ではなかった。
「とにかく、その船瀬って人を捜して、会っておきたいんだ」
と、裕生は言った。
「どこに住んでるか、分からないの?」
と、みちる。昨晩の会話を思い出して、裕生《ひろお》は顔をしかめた。
「どのへんに住んでるのか兄さんは聞いたらしいんだけど、ぼくには教えてくれなかったんだよ」
「なんで?」
みちると佐貫《さぬき》が同時に尋《たず》ねた。
「『俺《おれ》に任せとけ』って。心配するなって言われた」
「……なにするつもりなんだ?」
「さあ……」
裕生は不安にかられていた。兄がなにか突拍子《とっぴょうし》もないことを始める前に、その船瀬《ふなせ》が葉《よう》の父親かどうか確《たし》かかめておきたかった。
「どうにか、兄さんから聞き出してみるよ」
と、裕生は言った。
「なに言ってんだよ」
佐貫があきれ顔で言う。
「その人の『娘』っていう女の子がうちの学校に編入《へんにゅう》したんだろ? まずその子を捜《さが》せばいいじゃねえか」
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