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シャドウテイカー リグル・リグル15

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:4 清史《きよし》はベッドの中で眠っていた。看護師《かんごし》の話ではさっきまで起きていたはずだという。「まったく、せっ
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 清史《きよし》はベッドの中で眠っていた。看護師《かんごし》の話ではさっきまで起きていたはずだという。
「まったく、せっかく娘が来たっていうのにね」
売店で買った花を活《い》けながらツネコは言う。葉はベッドの脇《わき》の椅子《いす》に黙《だま》って腰かけていた。
(あれ……?)
ふと、葉は床《ゆか》の上に一冊の本が落ちていることに気づいた。ベッドから落ちたのかもしれない。拾い上げて中を開いた葉は、見慣《みな》れぬ奇妙な文字が並んでいるのを見る。
葉ははっと息を呑《の》んだ。裕生たちが持っているという『皇輝山《おうきざん》文書《ぶんしょ》』とはこれではないだろうか。どうしてこんなものが落ちているのだろう。
(忘れていったのかも)
裕生はさっきまでここで父と話していた。その時に置いていってしまったのかもしれない。どちらにしても床に落ちていていいものではない。葉はそれを膝《ひざ》の上に乗せた。
『中を見ないんですか?』
頭の中で自分ではないものの声が聞こえて、葉は飛び上がりそうになった——彼女に取《と》り憑《つ》いているカゲヌシ「黒の彼方《かなた》」の声だった。以前に比べて、「黒の彼方」が葉に話しかけてくることはめっきり少なくなっていた。おそらく記憶《きおく》の欠落が始まった今、放っておいても近いうちに葉の精神を支配できると踏んでいるのだろう。
わざわざ口に出して話しかけてきたのは、理由があるに違いなかった。
(なにが書いてあるか、知っているの?)
と、慎重に葉は問いかける。
『あなたにとっても意義のある内容だと思いますよ』
カゲヌシは即答を避けた。おそらく、なにか重要なことが書かれているに違いない。見てみたいという気持ちが葉にないわけでもなかった。しかし、葉が見聞きしたことは自動的に「黒の彼方」も知るところとなる。情報が筒抜けになるのを避けるために、葉はなるべく裕生のしていることを知ろうとしないように努めてきた。
『カゲヌシの秘密を知りたくないですか?』
頭の中で聞こえる声を無視して葉《よう》は立ち上がった。このカゲヌシの言葉はどうせすべて嘘《うそ》ばかりだ。彼女はしっかりと『皇輝山《おうきざん》文書《ぶんしょ》』を胸に抱え込んだ。この病院には佐貫《さぬき》も入院している。彼に預けるつもりだった。
「ちょっと出かけてきていい?」
と、葉はツネコに言った。彼女は怪訝《けげん》そうな顔をしたが、
「別にいいわよ。どうせ兄さんもしばらく起きないだろうから」
 父の病室を出て、葉は廊下を歩いていった。佐貫がいるのは四人用の一般病室である。彼に預ければ済むと思っていたのだが、一般病室に着いた彼女が見たのは空《から》のベッドだった。
「あの、佐貫さんは?」
そこへ通りかかった若い看護師《かんごし》に葉は尋《たず》ねた。
「佐貫さんならさっき手術室に入りましたよ」
手術、という言葉に葉は驚《おどろ》いた。
「大丈夫なんですか?」
「ええ。一時間もすれば戻ってくると思うけど」
葉は胸に抱えた本を見下ろす。自分がこのまま預かっているよりは、一刻も早く裕生《ひろお》に返すのがいい気がする。長い時間持ち歩いていると、今の彼女は持っていることそのものを忘れてしまう可能性があった。
(すぐに裕生ちゃんに届けに行こう)
さいわい父は眠っている。確《たし》かみちるの家の近所の公園で会うと言っていた。急いで行けばすぐに戻ってこられるはずだ。
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