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シャドウテイカー ドッグヘッド17

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:2「ありがとうって言われちゃったよ」と、みちるがつぶやいた。その言葉に裕生《ひろお》が振り向いた。「なにか言った?」「え
(单词翻译:双击或拖选)
「……ありがとうって言われちゃったよ」
と、みちるがつぶやいた。その言葉に裕生《ひろお》が振り向いた。
「なにか言った?」
「え、な、なんでもない」
みちるは慌てて首を振った。二人は船瀬《ふなせ》がいるはずの幽霊《ゆうれい》病院に向かっている。怪我《けが》のせいで少し熱《ねつ》が出ているはずだが、裕生はしっかりした足取りで歩いていた。駅を出てから一度も休んでいない。
(雛咲《ひなさき》さん、どうしてるだろ)
さっき、葉《よう》が言いたかったことがみちるにはすぐに分かった。というより、裕生が全然分かっていないことに驚《おどろ》いていた。彼女の表情も声も、裕生と離《はな》れるのが不安だと訴えていた。
時々、裕生は葉の気持ちにあまり関心がないように見えることがある。もう少し気を遣《つか》ってあげればいいのにと思うのと同時に、どこかでほっとしている自分がいる。もし、葉を女の子としてまったく見ていないなら、自分にもチャンスがあるかもしれないと考えてしまう。
(今、なに考えてるのかな)
裕生の顔を見ながら、みちるは心の中でつぶやいた。アブサロムの起こした事件のことか、傷ついた佐貫《さぬき》たちのことか、残してきた葉のことか——あるいは、これから会うレインメイカーのことをなにか考えているのかもしれない。
(アオカガミ、か)
さっき駅で裕生に聞いた話によると、蔵前《くらまえ》はこの世界でのレインメイカーの名前を口にしたらしい。その「アオカガミ」という名前を船瀬に唱《とな》えさせれば、レインメイカーが船瀬の影から現れるかもしれない。レインメイカーが持つという、カゲヌシを卵に返す能力なら、アブサロムを無力化することは可能だった。
「……西尾《にしお》」
「は、はいっ」
急に話しかけられて、妙な声が出た。
「さっきから考えてたんだけど」
少しうつむき加減の裕生の顔には、思いつめたような表情が浮かんでいた。
「なに?」
「西尾に話があるんだ」
「あ、あたし?」
他《ほか》でもないみちるのことを考えていた——途端《とたん》とたんにみちるの動悸《どうき》が速くなり始めた。こんな真面目《まじめ》な顔で考えていた「話」というのは一体どんなことなのだろう。いや、どんなことなのかまったく想像が出来ないというわけではない。むしろその想像を振り払うのに努力が必要だった。
(告白……じゃないよね)
もしそうだったとしても、この大事な時に言うはずがない、と冷静な自分は思うのだが、こんな時だから言う気になったのかもしれないとも思う。もちろん、みちるの側としてはにっこり笑って、「ありがとう、付き合おうよ」などとはとても言えない。今はとてもちゃんと考えて答えるだけの心の準備も出来ていない。
でももし、気持ちだけでも聞かせてほしいと言われたらあたしは——、
「ぼく、西尾《にしお》になにか悪いことした?」
「ええっ?」
みちるは自分の耳を疑った。
「なにかしたんだったら謝《あやま》ろうと思って」
「えっとごめん、ちょっと待って。なに言ってるのか全然分からないんだけど……」
とりあえず告白でないことは分かった。
「だって、ここんとこぼくのこと避けてるし、話しかけても目も合わせようとしないし。佐貫《さぬき》とは会ってるみたいだけど、ぼくが誘うと絶対に出てこないし」
みちるの全身から力が抜けていった。この一ヶ月、恥ずかしがっていた自分は一体なんだったのか。
「ひょっとして、あたしが怒ってると思ってたの?」
「え、違うの?」
裕生《ひろお》は心底|驚《おどろ》いたようだった。
「そんなわけないでしょ。なんであたしが藤牧《ふじまき》に怒らなきゃいけないわけ?」
その発想にむしろ腹が立ちそうだった。ここまで鈍《にぶ》いとは思ってもみなかった。
「じゃあ、なんだったの?」
「な……」
無造作に聞き返されて、みちるは詰まった。自分の顔が真《ま》っ赤《か》になるのがはっきり分かる。夜で良かった、と彼女は思った。
「べ、別になんでもないよ。先月、リグルの時に色々あったでしょ。ショックとかそういうので……別に藤牧のせいじゃないんだけど」
我《われ》ながらひどい言《い》い訳《わけ》だと思った。もし色々聞かれたらどうしようかと思ったが、裕生は大きくうなずいていた。
「そっか。それなら別にいいんだけど」
あっさり納得されるとそれもそれで不満だった。みちるはつくづく自分の身勝手さが嫌《いや》になった。
「……佐貫《さぬき》も同じこと言ってたよ。だからそっとしておいてやれって」
佐貫も同じ言《い》い訳《わけ》をしたらしい。色々と迷惑をかけてしまった。
「いつかもっとちゃんと話すから。ごめんね」
「ううん。別にいいよ。無理に聞こうなんて思ってないし」
角を曲がると、唐突《とうとつ》に明かりの消えた建物が現れた——噂《うわさ》に聞く幽霊《ゆうれい》病院で、肝試《きもだめ》しスポットとして有名な場所だった。産婦人科の病院だったが、十年ほど前に閉鎖《へいさ》されたらしい。みちるは一度もこの建物に入ったことはない。
「じゃ、西尾《にしお》はここで待ってて」
そう言って、裕生《ひろお》は錆《さ》びた鉄の門をくぐろうとする。みちるは慌てて裕生の腕を掴《つか》んだ。
「ちょっと待って。どういうこと?」
「もし、レインメイカーを呼び出しても、ぼくたちに協力してくれるかどうか分からない。相手は人間じゃないんだし、万が一のことだってあるよ。だから、西尾にはここで待っててもらおうと思って」
みちるははっとした。どうしてそこに気づかなかったのか、我《われ》ながら不思議《ふしぎ》だった。
(藤牧《ふじまき》はそこまで考えてたんだ)
裕生が葉《よう》を置いてきた理由も分かる気がした。さっきははっきりと言わなかったが、レインメイカーが人間ではなく「同族食い」に敵対している可能性もある。ただ、それを説明すれば、裕生が危険にさらされることに葉も気づくはずだ。
「なに言ってるの。あたしも行くよ」
みちるはリグル・リグルの事件のことを思い出していた。船瀬《ふなせ》千晶《ちあき》に会いに行った時、こんな風《ふう》に彼女は取り残されて、裕生たちだけを危険な目に遭わせてしまった。今日《きょう》も佐貫と一緒《いっしょ》に新宿《しんじゅく》へ行っていれば、裕生たちの役に立てたかもしれない。もう同じ後悔をしたくなかった。
 みちるたちは病院の敷地《しきち》に足を踏み入れた。三階建ての建物の前はがらんとした空き地になっている。そこを歩きながら、暗闇《くらやみ》に浮かぶ廃墟《はいきょ》を見上げた。
(ここで人が死んでるんだよね)
みちるはぶるっと体を震《ふる》わせる。この建物の屋上で、カゲヌシに焼き殺された人間がいると裕生に聞いたことがある。
「……あ」
ふと、裕生が立ち止まった。
「どうしたの?」
みちるもつられて足を止める。裕生の視線《しせん》をたどると、両開きのドアの前に黄色《きいろ》い塊《かたまり》がぼんやりと見えた。
彼女は目を凝《こ》らす——それは背中を丸めてしゃがみ込んでいる、レインコートを着た人間だった。彼はドアを背にして、がくりと首を前に折っている。側頭部が鈍《にぶ》い銀色《ぎんいろ》の光沢《こうたく》を放っているのがみちるにも見えた。
(あれが船瀬《ふなせ》……レインメイカー)
みちるたちは慎重に船瀬の方へ近づいて行った。その気配《けはい》を察したのか、相手ははっと顔を上げた。しかし、それ以上動こうとしない。その場所で来客を待っていたように見えた。
男までほんの数歩のところで、二人は立ち止まった。
「ぼくの言ったことを、繰《く》り返して下さい」
と、裕生《ひろお》は言った。船瀬はぼんやりと裕生の顔を見つめている。
「……アオカガミ」
船瀬の口元がかすかに動いたが、声は聞こえなかった。
「アオカガミ!」
今度はもっとはっきりした声で裕生は言った。船瀬はわずかに声を洩《も》らしたが、それは言葉というよりはただのため息に聞こえた。
「……やっぱり、難《むずか》しいのかな」
「なにやってるの。そんなやり方じゃダメだよ」
みちるは裕生を押しのけると、つかつかと船瀬に近寄ってしゃがみ込んだ。無精《ぶしょう》ひげを生《は》やした中年男の顔がすぐそばにある。男はうろたえて目を背《そむ》けようとしたが、みちるは耳のあたりを掴《つか》んで固定した。
(要するに子供みたいなもんでしょ)
こちらの言うことをちゃんと理解してはいないが、周囲の動きには反応する。
「あたしの真似《まね》をして!」
と、みちるは言った。
「ア、オ、カ、ガ、ミ!」
相手に見せるように、なるべく口を大きく動かし、明確《めいかく》に発音した。みちるは学校で演劇部《えんげきぶ》に所属している。喋《しゃべ》るところを他人に見せるのは慣《な》れていた。
「ア……オ……」
と、船瀬が不明瞭《ふめいりょう》につぶやいた。みちるは大きくうなずいて、その続きを口にした。
「カ、ガ、ミ!」
「……カ、ガ……ミ」
不意に足元から冷気のようなものがさっと駆け上がってきた。次の瞬間《しゅんかん》、地面から飛び出してきたなにものかに彼女の体は吹き飛ばされた。このカゲヌシは危険かもしれないという話を今さらながら思い出した。
地面に尻餅《しりもち》を突いたみちるの背中が、裕生にぶつかった。
「え……」
既《すで》にそれは完全に影《かげ》から出現していた。みちるたちの目の前には、青いマントのようなものを体に巻き付けた子供が立っていた。身長だけ見れば七、八歳で、見た目の性別は少年のように見える。つやのある黒い髪《かみ》を肩まで伸ばしていた。見た目は人間にかなり近いが、顎《あご》から下の首筋が爬虫類《はちゅうるい》のようなざらざらしたうろこに覆《おお》われていた。マントの合わせ目からかすかに見えている指先にも、青いうろこがある。
マントの下はどうなっているんだろう、とみちるはぼんやり思った。
そのアオカガミは二人の顔を順々に見つめた。その目にはまぶたがなく、碁石《ごいし》のような黒く丸い瞳《ひとみ》が鈍《にぶ》い光を放っている。まるで蛇《へび》の目だった。
「ありがとう」
鈴《すず》のようにきれいな声で、その子供は言った。
「ぼくがアオカガミだ」
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