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シャドウテイカー ドッグヘッド25

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:2 加賀見《かがみ》駅のすぐそばにそのビルはあった。バブル景気の時代に建てられた、この街には不釣り合いな十五階建てのオフ
(单词翻译:双击或拖选)
 加賀見《かがみ》駅のすぐそばにそのビルはあった。
バブル景気の時代に建てられた、この街には不釣り合いな十五階建てのオフィスビルで、閉鎖《へいさ》されるはるか以前から閑散《かんさん》としていた。
既《すで》にビルには管理人もおらず、再開発のために取り壊《こわ》されるのを待つばかりになっていた。
裕生が屋上のドアを開けた途端《とたん》、強い風がどっと吹き付けてきた。もうすぐ夜が明けようとしている。昼間であれば、四方にめぐらされた金網《かなあみ》越しに加賀見市を一望出来るはずだ。加賀見市の中心部ではここが一番高い建物だった。
裕生《ひろお》は屋上のちょうど中心まで歩いて行き、右肩に下げていたバッグを静かに下ろした。立ち止まって呼吸を整《ととの》える必要がある。体はひどく冷たいのに、額《ひたい》には汗をかいている。非常階段を上がってくるのにかなり体力を使ってしまったこと、左腕がまったく使い物にならない状態であること、そしてなによりも頭が割れそうに痛かった。
「時間通りに来ましたね」
頭上から女の声が聞こえた。
振り向くと、エレベーターの機械室《きかいしつ》の屋根に片袖《かたそで》のないブラウスを着た少女と、三つ首の黒い犬が立っていた。
裕生は驚《おどろ》かなかった。既《すで》に相手がそこにいることは感じていたからだ。
「当たり前だろ」
カゲヌシの体を注意深く観察《かんさつ》する。今は見たところ怪我《けが》はなさそうだった。裕生は内心舌打ちした——相手は既に回復している。
「怪我、どうして治ったんだ」
「アブサロムの左腕を取り込んだのでね」
それで見当たらなかったのか、と裕生は思った。あのカゲヌシの腕は、「黒の彼方《かなた》」のエサになってしまったのだ。
「ところで、なにを企《たくら》んでいるのですか?」
「……なんの話だよ」
苦しい息を悟られないように、裕生はなるべくゆっくり喋《しゃべ》っていた。
「あなたがなにも企んでいないはずはないと思いますが」
「それはお前の願《ねが》いでもあるんじゃないか。多少、歯ごたえがあった方がいいだろ」
「確《たし》かにそうですね」
少女の顔に笑《え》みが浮かんだ。
「あなたがもがき、絶望にまみれて死ぬところを見たいですから」
不意に裕生はめまいを感じた。激《はげ》しい頭痛のせいだったが、足を踏ん張ってうずくまるのをこらえた。
「その荷物はなんですか?」
「え?」
「なんのために、アブサロムの卵を持ってきたのです?」
さすがにそれは気付いていたらしい。ここで白《しら》を切ってもなんの意味もなかった。
「……分かってたんだな」
「今のわたしには三つ目の首があります。同族を探る索敵《さくてき》能力も取り戻しています」
「なるほど」
裕生は自分の傍《かたわ》らにあったバッグを、「黒の彼方」たちの方へ放り投げた。その中に卵を入れて運んできたのだった。それは機械室《きかいしつ》と裕生《ひろお》の中間あたりの場所に落ちた。
「じゃあ、開けてみればいい。開ければ分かる」
と、裕生は言った。
「黒の彼方《かなた》」は裕生の落ち着き払った様子《ようす》が気懸《きが》かりだった。なにかの企《たくら》みがあるに違いない。契約者の葉《よう》がひらりと機械室の屋根から飛び降りた。仮にバッグの中身が危険なものだとしても、葉に開けさせようとすれば裕生も黙《だま》ってはいられないはずだ。
葉の体はバッグの前に立った。裕生はこちらを見ているだけで動かない。だとすれば、この中身は見たところでなんの問題もないものだろう。
「……ふうん」
と、裕生は言った。
「どうかしましたか?」
「別に。ただ……」
裕生はそこで痛みをこらえるように言葉を途切《とぎ》れさせ、頭を押さえながら立ち上がった。体調《たいちょう》がすぐれないらしい。
葉の体はバッグを開け、中身を取り出す——それはやはり黒いカゲヌシの卵だった。
「お前の首はカゲヌシの場所を正確《せいかく》に分かるわけじゃないんだと思ってさ」
「黒の彼方」は愕然《がくぜん》とした。アブサロムの卵にはほとんど一周するほどの大きな裂け目が入っていた。次の瞬間《しゅんかん》、両手の中でそれは粉々に砕《くだ》けて、彼女の足元で一山の破片と化した。卵の中身は既《すで》に空《から》だった。
「その中にはもうカゲヌシはいないんだ」
しかし、この近くにカゲヌシはいる。狂おしい思いで「黒の彼方」は裕生を見つめた。この少年の怪我《けが》は頭ではなかったはずだ。しかし、今はかきむしるように頭を押さえている——それは蔵前《くらまえ》のしぐさによく似ていた。
裕生は目を閉じてつぶやいた。
「……シャドウテイカー」
「なに!」
今度こそ「黒の彼方」は叫んでいた。この世界に現れて以来、これほど驚《おどろ》いたことはなかった。
裕生の影《かげ》が長く伸び——そこから片腕のない白い獣人《じゅうじん》がゆっくりと姿を現した。
「ぼくには契約者の資格がある」
裕生は低い声でつぶやいた。
「そして、ぼくのねがいは葉を取り戻すこと」
「黒の彼方」は今や確信していた——この少年は自分からカゲヌシの卵を割ったのだ。
かつてアブサロムだった獣人《じゅうじん》は、裕生《ひろお》のそばに仕えるように膝《ひざ》を突く。
「これがぼくのカゲヌシ、シャドウテイカーだ」
 突然、裕生の頭の中に獣人の殺意や痛みや欲望が黒い奔流《ほんりゅう》となって流れ込んできた。
このカゲヌシは深い傷に苦悶《くもん》し、同族食いの「黒の彼方《かなた》」への殺意に心を焦《こ》がしていた。同時に契約者である葉《よう》の体を引き裂き、その血肉を貪《むさぼ》ることを望んでいる——。
(違う!)
彼は歯を食い縛《しば》ってその感情の洪水に耐えた。葉を取り戻すことが彼の目的だった。もし、一歩|制御《せいぎょ》を誤れば、自分の手によって葉を殺してしまうことになるだろう。裕生がどれだけ彼女を強く思えるかが鍵《かぎ》を握っていた。
ようやく、シャドウテイカーの感情を抑えきった時、「黒の彼方」はまだ機械室《きかいしつ》の上で凍り付いていた。裕生はその様子《ようす》に疑念を抱いた。今の自分には明らかに隙《すき》があったはずだ。どうしてこのカゲヌシは襲《おそ》いかかってこなかったのだろう。
「その名前はなんですか?」
葉の口から「黒の彼方」の言葉が流れる。
「名前?」
予想外の質問に裕生は戸惑《とまど》った。
「あなたのカゲヌシの名前ですよ」
シャドウテイカー——実は彼自身にもよく分かっていなかった。どこかで聞き覚えがある気もしたが、ただなんとなく心の底から出てきた言葉だった。
「名前がどうかしたのか?」
と、裕生《ひろお》は言った。どこで聞いたのかは思い出せなかったが、意味ははっきりと分かっていた。
「……お前という影《かげ》を、葉《よう》から取り除く者という意味だ」
裕生はシャドウテイカーの左目を開かせた。黒い光が三つ首の犬に向かってまっすぐに伸びる。機械室《きかいしつ》の上部が丸い影に呑《の》み込まれた時には、既《すで》に「黒の彼方《かなた》」は飛び降りていた。同時に葉の体が自分から離《はな》れていくことに裕生は気付いた。
(「眠り首」の力を使うつもりなんだ)
契約者を巻き添えにしないように距離《きょり》を取らせているのだ。
裕生はシャドウテイカーの視線《しせん》を自分たちの足元に向ける。たちまちコンクリートのパネルが大きくたわんでいった。そして、鈍《にぶ》い轟音《ごうおん》とともに屋上に直径二メートルほどの丸い穴が開いた。
既に「黒の彼方」の眠り首は起き上がり、その口も開きかけている。次の瞬間《しゅんかん》、自分のカゲヌシに抱えられた裕生は、たった今開いた穴の中に飛び込んで行った。
「ちっ」
契約者の葉が舌打ちをする。「黒の彼方」は注意深く屋上に開いた穴へと近づいて行った。どこへも逃がさないつもりで、ビルの屋上を指定したのがかえって仇《あだ》になった。
裕生に看破《かんぱ》されたように、今の「黒の彼方」の索敵《さくてき》能力は取り戻したばかりでまだ精度が低く、距離も方向も曖昧《あいまい》にしか分からない。遮蔽物《しゃへいぶつ》の多い建物の中に入れば、思わぬところから攻撃《こうげき》をされる恐れがあった。
しかし、遮蔽物が多ければ、あのカゲヌシの能力もそれだけ使いにくくなる。効果の拡散する振動の能力を使える「黒の彼方」の方が有利だった。
「……どこまで粘ってくれることか」
葉の顔に笑《え》みが浮かんだ。満足の行く戦いになりそうだった。
歓喜《かんき》の咆哮《ほうこう》を上げながら、「黒の彼方」はその穴の中へ飛び込んで行った。
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