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シャドウテイカー ドッグヘッド26

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:3 裕生たちが落ちたのは殺風景なオフィスの中だった。そこは最上階の十五階のフロアだった。シャドウテイカーの左側には窓があ
(单词翻译:双击或拖选)
 裕生たちが落ちたのは殺風景なオフィスの中だった。そこは最上階の十五階のフロアだった。シャドウテイカーの左側には窓があり、右側には廊下に通じるドアがあった。カゲヌシは裕生を抱えたまま、もうもうと舞《ま》い上がった粉塵《ふんじん》の中を走り出した。
体の下になっているせいか、裕生《ひろお》の左手がきりきり痛む。こんな風《ふう》に抱えられたまま「黒の彼方《かなた》」と戦うわけにはいかない。なにか方法を考えなければならなかった。
シャドウテイカーはドアから飛び出すと、廊下の一番奥へ向かって走った。そこにはさっき裕生が屋上へ上がった時に使った非常階段とは別の階段へ通じるドアがある。
肩からぶつかってドアを突き破った時、「黒の彼方」が同じフロアに降り立ったのが分かった。
その時、名状《めいじょう》しがたい振動を裕生の耳がとらえた。皮膚《ひふ》の表面が裕生の意志に関係なくぶるぶると震《ふる》えている。鼓膜に針を刺されたような痛みが襲《おそ》ってきた。
「つっ……」
裕生は顔を歪《ゆが》める。「黒の彼方」が振動の能力を使っているに違いない。壁《かべ》やドアの遮蔽物《しゃへいぶつ》があっても、多少の効果はあるようだ。もし、真正面から受けた場合のことを考えるとぞっとした。このカゲヌシはともかく、契約者である裕生は耐えられないだろう。
シャドウテイカーは裕生を抱えたまま、手すりを乗り越えて十四階へと飛び降りる。着地の衝撃《しょうげき》で左手から全身に痛みが広がった。よろけながら裕生は自分の足で立った。
今、「黒の彼方」は廊下で立ち止まっているらしい。慎重に動いているのは、裕生たちがまだ同じ階にとどまっているのか、そうでないのか判断がつかないからだろう。
裕生たちは階段で二手に分かれた。裕生はさらに階段を下って十三階へ、シャドウテイカーは十四階にとどまった。階段を降りきった裕生は廊下を走る。適当にドアを開けると、そこはやはりなにもないオフィスだった。彼は頭を押さえながらぐったりと座り込んだ。
彼は自分の五感が奇妙に分裂する感覚を味わっていた。自分は確《たし》かにここにいるのに、頭の中にはカゲヌシの目と耳によって得られた情報が、カゲヌシの感情と一緒《いっしょ》に流れ込んでくる。
どちらに本当の自分がいるのか、どちらが本当の自分なのか分からなくなりそうだった。
(これが葉《よう》の見ていた世界なんだ)
自分の精神が別のなにかと混ざり合い、一瞬《いっしゅん》でも油断すれば呑《の》み込まれそうになる。彼女もこんな不安を味わっていたのだ。
今、シャドウテイカーは十四階の廊下のちょうど真ん中あたりに立っている。左右にはずらりとオフィスのスペースに通じるドアが並んでいる。「黒の彼方」は階段を降りてくるところだった。
そのまま十四階に来ればシャドウテイカーが正面から「黒い光」をぶつけ、もっと下の階に降りようとすれば階段で背後から攻撃《こうげき》するつもりだった。「黒の彼方」は十四階のドアの前で立ち止まった。どうやらためらっているらしい。
開けろ、と裕生は心の中で念じた。こちらの攻撃する準備は既《すで》に終わっていた。
ドアの向こうから相手の動こうとするのが分かる。
その時、シャドウテイカーの背後からかすかな足音が近づいてきた。
(……えっ)
カゲヌシと同時に裕生《ひろお》も愕然《がくぜん》とした。わずかに振り向いたことが、致命傷を避ける結果になった。銀色《ぎんいろ》の刃《やいば》が剛毛《ごうもう》に覆《おお》われた獣人《じゅうじん》の背中を切りさいた。
「あっ」
伝わってくる痛みに裕生は悲鳴を上げた。しかし、体をよじっていなければ背骨に刃が食い込んでいたかもしれない。シャドウテイカーの背後に立っていたのは葉《よう》だった。あのドッグヘッドを切り落とした斧《おの》を手にしている。
(葉に攻撃《こうげき》させるなんて)
彼女は体をくるりと一回転させて、斧を横からカゲヌシの右脚に打ち込んだ。傷口からどろりと血が噴《ふ》き出した。裕生の足にも激痛《げきつう》が走り、彼は意識《いしき》を失いかけた。
獣人はバランスを崩《くず》しながらも、その斧を右手で掴《つか》んでいた。そのためにドッグヘッドのように完全に切り落とされることを免《まぬが》れていた。
葉は武器から手を放し、向きを変えて一目散《いちもくさん》に駆け出した。今までにない激怒《げきど》と殺意がシャドウテイカーの精神を満たした。奪《うば》った斧を彼女に投げ付けようと身構えた。
「やめろ!」
裕生は死にもの狂いに念じた。ぎりぎりのところでカゲヌシは斧を下ろし、葉は廊下の角を曲がって行った。
ほっと胸を撫《な》で下ろしたその時、裕生自身の耳に階段の方からドアが開く音が聞こえた。いつの間にか「黒の彼方《かなた》」が裕生と同じフロアに降りてきていた。
(そうだったのか)
最初から「黒の彼方」は裕生とシャドウテイカーが二手に分かれることを予測していたのだ。そして、シャドウテイカーにはこちらから攻撃出来ない葉を、裕生には「黒の彼方」をぶつける。
(……まずい)
ここにいてはすぐに見つかってしまう。立ち上がろうとした裕生は、がくんと膝《ひざ》を突いた。今、シャドウテイカーから伝わった足の痛みがまだ残っていた。当然、真上の階にいるシャドウテイカーも怪我《けが》のために素早くは動けない。
「黒の彼方」は順番にドアを破って確認《かくにん》しながら、裕生のいる部屋へ向かってきている。
「くそ……」
ここで自分が死ぬわけには行かない。葉からあのカゲヌシを取り除かなければならない。
裕生はシャドウテイカーの左目を全開にした。十四階の廊下の半分が黒い影《かげ》に沈んだ。壁《かべ》も天井《てんじょう》も床《ゆか》も軋《きし》みながら波打ち、大きく歪《ゆが》む——そして、すべてのものが黒犬のいる廊下へと降り注いだ。どすんという音とともにビル全体が揺れる。カゲヌシの前面にあった廊下は完全にえぐり取られて、吹き抜けのような奇妙な空間が拓《ひら》けていた。
シャドウテイカーは足を引きずりながら進み、半ば落ちるように十三階へ飛び降りる。そこはコンクリートや鉄骨や配線《はいせん》のケーブルや、様々《さまざま》な残骸《ざんがい》の山の上だった。
「黒の彼方《かなた》」はシャドウテイカーのいる場所から数メートル先の残骸の下だった。そちらへ慎重に近づいて行くと、完全につぶれた空調《くうちょう》のダクトの下から悲鳴を上げるように開いている犬の口が覗《のぞ》いていた。
(あそこだ)
と、裕生《ひろお》が思った瞬間《しゅんかん》、その口から見えない波がカゲヌシの方へ押し寄せてきた。まるで沸騰《ふっとう》するかのように獣人《じゅうじん》の体温が上昇し、全身から煙が上がる。新宿《しんじゅく》でも使用した「黒の彼方」の発する振動の一種で、敵の水分を振動させ高熱《こうねつ》で「煮立たせる」能力だった。
五感を通じてその高熱は裕生にも伝わっていた。ほとんど気を失いながら、裕生は必死に反撃《はんげき》を試みた。
シャドウテイカーはもう一度左目を開こうとする。しかし、「黒の彼方」は眠り首からの放射を続けながら残骸から這《は》い出て、既《すで》にシャドウテイカーの許《もと》へ飛びかかってきていた。
三つの首が同時にシャドウテイカーの頭を狙《ねら》う。既に瀕死《ひんし》となった獣人は、右腕で一番手近な首——かつてのドッグヘッドを掴《つか》むと、自分の左目に押し付けた。「黒の彼方」の三つ目の首は黒い光に包まれ、頭を掴んでいる右手ごと粉々に砕《くだ》け散っていった。
その時には「黒の彼方」の司令塔がシャドウテイカーの頭の右半分を捕らえ、完全に噛《か》み千《ち》切《ぎ》っていた。激痛《げきつう》とともにぷつんとカゲヌシの視界が途切《とぎ》れた。
「黒の彼方」はぼろきれのようになった獣人を残して立ち上がった。このカゲヌシを食うことはいつでも出来る。その前に今度こそ裕生の命を絶っておきたかった。放っておいては、またなにを始めるか分からない。
黒犬は天井《てんじょう》の破壊《はかい》された部分を通り抜けて、廊下の奥へと進んで行った。ちょうど廊下を曲がって、契約者の葉《よう》もやって来たところだった。
この少女の目の前で、裕生を殺すこと——それは以前からこのカゲヌシが心に決めていたことだった。合流した場所のすぐそばに、わずかに開いているドアがある。「黒の彼方」たちはその部屋へ入って行った。
窓の外の空は白《しら》み始め、かすかな光が部屋の中を淡《あわ》く照らしていた。裕生は壁《かべ》にもたれて座っていた。両足を投げ出し、吊《つ》っていない左腕は床《ゆか》の上にだらりと投げ出している。気を失っているのかと思ったが、近づいて行くと重そうに頭を上げた。
「なかなか、楽しませてもらいましたよ」
と、カゲヌシは葉に言わせた。裕生の視線がゆっくりと動き、黒犬の肩のところで止まった。
「……また、首がなくなったんだな」
ちらりと自分の肩を見る。せっかく取り戻した三本目の首は、あのシャドウテイカーに完全につぶされていた。
「今度はすぐに戻るでしょう。アブサロム・ドッグヘッドとして活動していた時とは違って、完全に死んでいますから。死んでいれば、新しく生《は》え替わることも出来るのです」
この部屋の外には「餌《えさ》」もある。完全な状態ではなかったが、最強のカゲヌシを倒したことには変わりない。「黒の彼方《かなた》」にとってはこの上ない栄養になるはずだ。三本目の首などすぐに生える。
「もうあなたにはなにも出来ません。今度こそ無力ですね」
なにを言い返してくるか、反応を見たつもりだったが、裕生《ひろお》はわずかにうなずいただけだった。本当に疲労困憊《ひろうこんぱい》しているらしい。
「ぼくにはもう、なにも出来ない」
と、裕生は「黒の彼方」の言葉を繰《く》り返した。
「ぼくに出来ることは全部終わった。だから……」
その時、ようやく「黒の彼方」は部屋の中が再び暗くなり始めていることに気付いた。窓を見たカゲヌシは愕然《がくぜん》とする——外には雨が降っていた。
「だから、レインメイカーに頼んだ。条件通り、お前の首を一つつぶした……もう、完全体じゃない」
黒犬は窓に向かって走って行った。窓の外の下界はいつの間にか見渡す限りの黒い雲に覆《おお》われ、なにも見えなくなっていた。まるでこのビルだけが雲の上に突き出ているかのようだった。そして、その雲海はさらにせり上がり、「黒の彼方」たちのいる場所をも呑《の》み込もうとしていた。
(始めたのか)
急いで廊下へ出ようとする。しかし、部屋を出る前に周囲は完全な漆黒《しっこく》に沈んだ。今、この世界すべてがこの霧《きり》に包まれているはずだった。そして、この霧がなくなった時、「黒の彼方」の餌となるべき他《ほか》のカゲヌシはすべて消えてしまう。
「シャドウテイカーでお前を倒せるかどうか自信がなかった」
どこからか裕生の声が聞こえる。やはり疲れきった声だった。
「倒しきれなくても、首を一つつぶすつもりだった……すべてのカゲヌシが卵に返れば、お前もこの世界にはいられない」
(レインメイカーめ)
「黒の彼方」は歯ぎしりをした。あの気まぐれな「管理者」がいなければ、しばらくはこの世界で遊んでいられたものを——。
もはやなす術《すべ》はない。「黒の彼方」は闇《やみ》の中にただ立ち尽くしていた。
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