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記憶の絵23

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:卵私は異常なほどの卵好きで、高血圧が早く来ることを予防するために、蛋白質の多い白身をやめてから三カ月になるが、一つの痛恨
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私は異常なほどの卵好きで、高血圧が早く来ることを予防するために、蛋白質の多い白身をやめてから三カ月になるが、一つの痛恨事である。一週に一度位の割で白身も使う卵料理を造る。ふだんは黄身だけを肉汁《スウプ》に落したり、茹でてサラダに入れたりしている。
私の卵好きはたべることだけではない。まず形がすきで、店先に新鮮な卵の群を見つけると、家に買い置きがあっても又買いたくなる。あの一方の端が少し尖った、不安定な円い形が好きだ。楽しい形である。私は人間の赤子も、あんな殼に入って生れて、両親で温めると或日|破《わ》れて生れ出るのだったら、清潔で楽しいだろうなぞと奇妙な空想を浮べる。新鮮な卵の、ザラザラした真白な殼の色は、英吉利|麺麭《パン》の表面の細かな、艶のある気泡や、透明な褐の珈琲、白砂糖の結晶の輝き、なぞと同じように、楽しい朝の食卓への誘《いざな》いを潜めているが、西班牙《スペイン》の街の家のような、フラジィルな(ごく弱い、薄い)代赭《たいしや》、大理石にあるような、おぼろげな白い星(斑点)のある、薔薇色をおびた代赭、なぞのチャボ卵の殼の色も、私を惹きつける。たべるのには代赭色のが美味しく、薔薇色をおびて、白い星のあるのはことに美味しいが、楽しむために、真白のも買ってくる。朝の食卓で、今咽喉に流れ入った濃い、黄色の卵の、重みのある美味しさを追憶する時、皿の上の卵の殼が、障子を閉めたほの明るい部屋のように透っているのを見るのは、朝の食卓の幸福である。卵の味には明るさがあり、幸福が含まれている。フライパンにバタを溶かし、片手にとった卵を割り入れ、固まりかけたところを箸で掻きまぜながら三つ折りにして形を造り、二三度返して皿にとる。その楽しい黄色に焼け上ってくる時が楽しい。銀色の鍋に湯が沸《たぎ》って渦巻いている中に、真白な卵が浮きつ沈みつしているのも、なんともいえない楽しさだ。新鮮な生卵をかけた熱い御飯、柔かく焼いたオムレツに塩胡椒を添えたもの、半熟卵は最上の美味である。茶碗蒸しに炊《た》きたての白米、卵粥、黄味を混ぜた鶏挽肉の淡味煮、笹身の極上を入れた親子丼、卵入り煎《い》り豆腐、固茹で卵を醤油と清酒でさっと煮たもの、固茹で卵入りの独逸サラダ、フウカデン、菜の花のような煎り卵、戦前の江戸っ子(上野、御徒町)の卵焼、同じく戦前の味醂と醤油の香《にお》いのする厚焼卵の寿司。又卵のブランディー、長崎のカステイラ(文明堂の出来ぬ前のもの)、卵入りクリイムの美味しかった戦前の風月堂のシュウクリイム、ヴァニラの香《にお》いの中にはっきり、卵黄の味がした戦前の上野風月堂のアイスクリイム(私は野蕃な戦争が烈しくなって来た頃、〈昭和十九年〉上野の風月堂に毎日のように並んで、四つ盛りのアイスクリイムをたべ、その上に持参の魔法壜に詰めて貰って、下車坂の勝栄荘に引上げた)。ともかく私にとって卵は、幸福と楽しさの源泉の中の一つなのである。
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