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記憶の絵66

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:苺アイスその他清水町の家の格子を開けて、仏蘭西語を囀《さえず》る早瀬主税と、円い顔で太ったお蔦が散歩に出て寄るところはい
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苺アイスその他

清水町の家の格子を開けて、仏蘭西語を囀《さえず》る早瀬主税と、円い顔で太ったお蔦が散歩に出て寄るところはいろいろとあったが、〈山田珠樹が早瀬主税じみて見えたのは、家や町が粋《いき》だったからもあるし、彼自身仏蘭西文学をやってはいても、新派のまだ旺《さかん》だった大正人間だったからでもあるが、もう一つの理由は、彼が結婚するというのでお芳さんが造らえたたて縞の浴衣や、紅葉山人が普段に締めていそうな、薄い藍鼠《あいねず》の端に絞りのある兵児帯《へこおび》なぞから来る印象のせいでもあった〉私が感激したのはおかしいことに氷水屋だった。私の父親は、日本陸軍のだか、独逸の軍隊のだか、委《くわ》しいことは知らないがもの凄い衛生思想を持っていて、夏は湯ざましか麦湯を飲ませ、果物はすべて煮たものを与えていた。それで私は親類の家で水蜜桃の生をたべてはその美味に驚き、谷中清水町では氷水を覚えた。緑色に塗った不細工な機械が絶えずカチャカチャ言っている氷水屋の椅子にかけて苺アイスという、バケツの水だか、どこの水だか判らない水に紅いドロドロを混ぜて凍らせた、名状すべからざる代物を注文すると、小女《こおんな》が(いちアイ二つ)と叫んだ。千駄木の家は一種の特殊地帯で、父親が(西洋料理屋のドロドロはあらゆる鍋や杓子に触れる度に、方々で黴菌がつくから不潔だ)と、嘘字をみつけた時のような顰め顔で言い、家で造れと母に命じるので、バタの匂いの嫌いな母は鼻を撮《つま》んで造らえた。又肉やしゅん[#「しゅん」に傍点]の野菜、しゅん[#「しゅん」に傍点]の魚、果物、菓子等を、ふんだんにたべさせたから、たっぷりたべ放題だったが、贅沢な特別階級のたべるものは名も知らずに育ったので、内紫《うちむらさき》(ザボン)、チャトニ(印度の福神漬の如きもの)、カヴィア、ポンカン、なぞも三田台町ではじめて知った。〈千駄木町では団子坂上の春木屋という鳥屋と、本郷追分の西川牛肉店が定まった店で、「春木屋さんですか? 笹身と赤身を二百目と卵を二円届けて下さい」というのと「西川さんですか? 牛肉のいいところを二百目、お刺身のように切って届けて下さい」という女中の声が交り交りにしていた。菓子は本郷通りの青木堂、薬は瓜生《うりゆう》や高嶋屋、野菜は団子坂では大きかった、店先に水道のあった≪水道の八百屋≫だった〉自動車に乗ったのもたしか結婚式の日に父母の間に挾まれて乗ったのが始めてで、何かというと人力車だった。だから山田陽朔がらっこ[#「らっこ」に傍点]の帽子に同じくらっこ[#「らっこ」に傍点]の襟つきの二重廻しで背中を後にもたせ、その頃自動車には大抵ついていた、揺れる時に掴まる紐に肱を入れ、ゆったり袴の膝を開いて、葉巻を燻らすのを見て、成程これがお金持というものであるかと、感心した。たった一度私が十三位の時千葉の帰りに山下から家まで、父親が私たちをオープンカアに乗せてくれた。車が疾走しはじめるや私たち三人はキャア、キャア声を枯らして叫びつづけ、往来の人々が皆ふり仰いで笑ったのを覚えている。
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