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記憶の絵82

时间: 2020-03-30    进入日语论坛
核心提示:巴里の夫婦巴里では男が旅に出て、女房を十日以上一人にして置けば、留守の間に女房が他の男と間違いを起こしても仕方がないこと
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巴里の夫婦

巴里では男が旅に出て、女房を十日以上一人にして置けば、留守の間に女房が他の男と間違いを起こしても仕方がないことになっている。であるから、これが逆の場合は無論、残された男が浮気をしない方がおどろくべきことであるのは当然のことである。そこでマダァム・デュフォオルが、亭主のデュフォオルを一人置いて丸二日何処かへ行っていたということは全く莫迦気たことであった。デュフォオルは早速その晩、一人のプウル(商売女)を伴れて帰って来た。オペラから帰った珠樹と私とがいつものように、玄関脇の居間兼客間に顔を出すと、正面奥の長椅子《デイヴアン》に女と並んでかけたデュフォオルがにやりと、片目を潰った。女は派手な藍色《ブルウ》の絹の洋服で、洋服と同じ布《きれ》を張った鍔広の帽子《シヤポオ》にはぐるり[#「ぐるり」に傍点]に、烏の羽毛《はね》を挿したような羽飾りがついている。やっぱり女房と反対の女がいいとみえて、マダァム・デュフォオルが、顔は西班牙美人の型と言って言えないことはないが、ごつごつの浅黒で、怒りっぽいのに比べて女は真白のぼてぼてで、いやに落ついた毒婦型である。値段がようよう折れ合って従いて来たらしい女は、ふて腐れた顔でデュフォオルにくっついている。ナポレオン時代の騎馬将校だか、騎馬巡査だかの石版画の額が掛かっている、縞と薔薇の模様のある壁紙。帽子の出来かけ、飾り紐、又はありとあらゆる端布《はぎ》れを突っ込んだ箪笥《アルモアアル》。ミシンの上に睡っている斑《まだら》猫、その猫の毛が散らばり、附着した儘の絨緞《じゆうたん》、長椅子の上の下宿の親爺とプウル。すべては正《まさ》しく、モオパッサンの挿絵がその儘生きていた、一九一七、八年度の、巴里の一市民の居間兼客間の風景である。
モオパッサンの光景はいいが、大変なのはその翌々日の昼の食卓である。マダァム・デュフォオルは硬い顔を俯向けて肉刺《フオオク》を使っているが、時々むらむらとなってくると顔を上げ、怒ると一層|平《ひら》べったくなる上唇を反《そ》らし、上《うわ》ずった声で止め度がなく怒り出すのだ。デュフォオルはその間隙を狙《ねら》って「マ、ジャンヌ」(俺のジャンヌ)「オオ、マ、ジャンヌ」と、せいぜい愛情を籠めた声で合の手を入れるより術《て》がない。お附合いで夜明しをしたらしいルイズが紅く腫れ上がった眼を上げてジャンヌに味方をする。そこへ卓子の連中が、デュフォオルの弁護をする者と、女房の方につく者との二手《ふたて》に別れてがやがやと口を出す。関係のない顔でいるのは男妾を伴れた顎の三つある婆さんと、にやりにやりと周囲《あたり》を見廻している気違い博士だけで、あった。
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