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もめん随筆02

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:夙川雑筆   一平原に生れた自分は必然に平原を愛し、山の近くに住む事は何か恐怖に近い感情であつたが、思ひがけない夙川の住
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夙川雑筆
   一

平原に生れた自分は必然に平原を愛し、山の近くに住む事は何か恐怖に近い感情であつたが、思ひがけない夙川の住居に朝夕見馴れてゐる間には、山には山の感情のある事がおのづから私にもわかつてきた。雨あがりの曇り空の下に連なるひるまへの六甲山は、夙川の松林を前景にして参百年昔の感情をそのまま見る人の胸へうつす。一抹の刷毛でぼかしたやうな山の姿は、見てゐるまにさぎりの間に霽れていつて、山のひだひだから煙のやうに白い靄がたちのぼり、判然とあらはれてきた山の峰峰は、やがて裸の山肌をあらはに自分の眼前に展開して見せるのだつた。それは呼べば応へさうに近い。そして立樹の一本一本さへが数へられると思ふ程にはつきりとしてゐる。山の姿はあらはな肉の角角を持つ故一そう自分に親しいのかもしれなかつた。やがて自分はあの山へのぼる折がきたら今よりなほ一そうあの山を親しく感ずるであらう。人は秀麗な富士山を見て、見るだけで満足せず、のぼつて汚ない処を歩き失望して帰るのを自分は愚かな事と思つてゐたが、それは男女の関係に於ても同様である事を、自分は今頃にやうやく気がつくのであつた。汚ないと思つて歩きまはつた富士山も又離れて見る時それは変りなく美しい富士山で、人はそれにのぼつてきた事で一そう断ちがたい愛着を感ずるのだ。山の汚なさはさう思へば女の肉体の汚なさと酷似してゐる。山の秘密も又女の肉体の秘密にひとしい。波にたはむれる海辺の人をもし刹那の感触に酔ふ官能派とするなら、山をきはめる登山家は永久に女の秘密を探る猟奇者と見てもよからう。自分は雨の霽れてゆく六甲山を見てゐるうちに、ついこんな事を思つた。
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