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もめん随筆05

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:夙川雑筆   四又ある時、裁判所の判事をしてゐる人が遊びに来て、子供の時に鳥打ちに行つた話をした。その人の言葉は実にゆつ
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夙川雑筆
   四

又ある時、裁判所の判事をしてゐる人が遊びに来て、子供の時に鳥打ちに行つた話をした。その人の言葉は実にゆつくりしてゐて、判事なぞといふ職業から聯想されるテキパキとしたところはみぢんもなく、しかしその、どこといつて区切りのない紐のやうにずるずると引ずつた話しぶりのために、反つて相手は一言も言葉をさしはさむ隙を与へられないのであつた。その人が話すには、
「僕、君の兄さんとな、てつぽ打ちに往た事あるんや。そやなあ、十七位の時やつたかなあ。子供で鑑札貰へへんよつて、君とこの男しの名でとつてあつたんや。
二人でな、それ持つて出かけたんや。たしぎがええ云うてな、たしぎのゐるとこへいたんや。たしぎ仰山ゐよるんや。そこでねらひをさだめてドーンと打つたらな、たしぎばたばたつと皆逃げてしまひよつたんや。はあみな逃げてまひよつたと思とつたらな、そこらからごそごそと人出て来よつたんや。百姓や。なんでわいの手エ打ちよつた云うてえらいけんまくや。僕、たしぎ打たんと人間の手エ打つてもうたんや。左の手エでナ、たま三発もかすつて血みどろや。さあなんで打つた、云うてるうちに君の兄さんを見てな、坊《ぼん》でしたかいナ、云ふんや。君とこへ出入りの奴やつたんやな。何でも君の家で菓子料出して、すましてくれたちふ話や。
それからな、こんどは僕一人でてつぽ打ちに往たんや。だいぶあとの話や。御陵さんとこな、ぎやうさん鳥ゐよるねん。打つたらいかんと云ふ事になつてるのやけど、僕そこへ往てドーンと打つたつてん。鳥ばたばたと飛んでまひよつてん。するとごそごそと人出て来たんや。僕てつぽ打つと、いつかて鳥逃げて人出てくるのや。なんでてつぽ打つた、御陵さんでてつぽ打つたらいかんと云ふ事知つてるやろがと大きな声でどなりよつてん。それから僕見てな、あんたでつかいナ、云ふんや。僕、御陵さんの番人心易いのや。鳥どないしました云ふのや。鳥あんじやう逃げてまひよつたんや。そこら探したかてあれへん。あつたら番人にやろと思たんやけどな。あんた御陵さんの中で打つたのやおまへんやろな云ふんや。そやないそとから打つたんやと云うたけどな、ほんまは中で打つたんや。中で打つたかて僕のてつぽはあたらへんのや……」
おなじ事柄がもし東京の言葉で話されたとしたら、内容までがちがつたものに感じられはしないだらうか。いつか宗右衛門町の宿屋で、女中がかけてゐた電話に、
「あんまりあつちやこつちや浮気しやはるさかい、そんな事になりますのどつせ。そいで旦那はん、いまその女子はんのところにゐやはりまんのか。……まアま、こはいこと」
その、まアまこはいこととひどく声を落して云つたのが、沁みいるやうに応へてきて、私は思はず微笑をさそはれた。静かな昼の事で、私はそこの下座敷にひとり人を待つてゐたのであつたが、電話を切つた女中が朋輩に話してゐるのを聞くと、前夜女を連れて泊りに来た客が、女を置いて自分だけ先へ帰つたのだが、その足で又別の女を連れて他の宿へ行つてゐる。しかし自分の家の者にはこの宿にゐると云つてあるのだから、家から電話でもかかつてきたならやはりこの宿に泊つてゐると云つておいてほしい、自分は明日は又この宿へくるからと、そのお客から女中へかけてよこした電話なのであつた。だがついでに客は、自分の残して出た女はあれからどうしたか、無事に一人で帰つたか、それとも電話をかけて他の男を呼んでこちらに泊りはしなかつたかとたづねたのださうである。「阿呆らしい」と女中達は笑ひ興じてゐたが、それは阿呆らしさうでなくて面白さうであつた。大阪といふところは私などが今迄に、取りすまして幾重にも重ねて着てゐた着物を、一枚一枚はがしていつてくれる土地かも知れぬ。
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