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もめん随筆45

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:露生れつき向うみずの性格と見え、一方に又父親の教育のせゐもあつて、若い時分は男の人と肩をならべて遊びに行く事を何とも思つ
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生れつき向うみずの性格と見え、一方に又父親の教育のせゐもあつて、若い時分は男の人と肩をならべて遊びに行く事を何とも思つてゐなかつた。そのためにいろいろと面倒な事が起り、迷惑された人もあつたかもしれないが私も非常に迷惑するやうな事があつて、誰にといふ事もなくただ無暗に腹がたつた。さうして人の顔を見るのも物憂く口をきくのもいやになつたので、世間の起きてゐる昼のあひだは眠つて人の寝静まつた夜中に起きてゐる事とした。さういふ身勝手な暮し方はいまもまだたたつて、いくら努めてみても昼間は眠いので困つてゐる。
三十をこえてやうやく自分も人様とおなじやうに笑つたり泣いたり、人を好いたり好かれたりして見たいと思ふやうになつたので大勢のあつまる場所へ出掛けて行つた。何処へ行つても男の人がたくさんゐて、自分はこの中のどの人をでも好きになれるのだと思ふとわくわくする程楽しかつたが、さてどの人がいいだらうと思つて眺めると自分より年配の方方は一せいに口をひらいて、それぞれに異る意見で私の欠点をのべたてさうな気がした。それで今度は若い人の方へ眼を移すと、若い人は先づ私のふところをのぞいてそれからでなくては口をきいてくれさうもないやうに思はれた。
さういふ男の方方ばかりあつまつてをられたのではない。私の方がさういふ意固地な憎らしい気だてを持つてゐるのである。原因は己れにあると気がついたからさつぱりと、人なみに享楽したいなどといふ不遜な考へは捨ててしまつた。従つて男の人に関する媚めかしい記録といふやうなものは何もない。すこしは寂しい心地がせぬでもないけれど、心がらでいたしかたもないとあきらめてゐる。
大阪の芸者がある時私に云つた。こんな商売をしてゐるとずゐぶんえげつない事をいふお客にも出会ふ、一しよに戸外へ出てから宿屋へゆかうとうるさくせびる人もある。そんな時若い芸者なれば何云つてはりまんねとつき放してとつとと自分だけ帰つて来られもするけれど、私らのやうに二度目のつとめでは一人のお客も大切である。折よく警官の姿など見つけてよい幸ひに、宿屋ぐらゐいつ行つてもよろしいが臨検をされてはお名前にもかかはりませう、あの巡査さんも、見なはれ、あしこの旅館から出て来たにちがひない、此頃は何や一そうやかましなつてるさうだすよつて、今晩はおとなしう家へ帰つて奥さんを大事にしてあげなはれ、わてがおたくまで送つてあげますさかいとなだめすかして送つてゆく事が多い。
はぐらかされてゐるとも知らず芸者に送られていい気もちさうに帰つてゆく男をあまいものだと思つたらまちがひで、さういふ事情は一も二も承知の上で駄駄をこね、芸者に家まで送らせて細君の牽制策にしようといふ魂胆かもしれないと、私はその芸者の話を聞きながら考へたが、そのうちにふと、なぜ自分はこんなに迄男を疑らねばならないのかと気がついて茫然とした。女の人のいふ事は何でもまともに信じて、あとからまごつく事が多いくせに、男の人の言葉だとひつくり返しひつくり返し考へる、だまされるといふ事がどうしてそれ程怖しいのか訳がわからない。
僕はね、いくら好きな女が出来ても決してその女だけ呼んだりはしませんよと云つた人があつた。大がいおなじ年頃のばかり四人なら四人いつも必ず一しよに呼ぶ事にきめておくんです、それでもお座敷の都合で皆が皆いつもあつまるといふわけにはいきませんからね、二人の時も三人の時も、たまには好きな女が一人きりの時もありますね、でも僕は自分からは決して好きだなどと口に出さないのです、それとなく素振りには見せるやうな事があつてもね。それでそんな風にしてしばらく遊んでゐるうちには誰がのぼせたともなくみんながのぼせてきて、僕まだ学生の頃でせう、いい成績がとれるやうにといつて一人がお茶だちをすると一人は塩だちをする、一人は八幡さまへお百度をふむといふやうになつてくるんです、女ほど眼の前の競争意識に囚はれるものはありませんからね、さうして最後にはきつと僕の好きな女が一ばんのぼせて自分から身を投げ出してくるんです、それやもう必ずさうなるんですよ、的をはづれた事がありませんよ。
田舎の病院の若いお医者さんであつた。外来の人にも入院患者にも受けがよくて、ある金持ちの未亡人は退院してから後もよく食事に招くといふ噂があつた。半年も入院してゐるヒステリーの若い奥さんが、発作が起るとそのお医者さんでなくては納まらないといふ話もあつた。何しろしもの世話まで僕にさせるんだから助からない、医者になぞなるもんぢやないですよと本人が云つたのだからたしかである。帰省中に子供が病気をして入院したため私はその人と親しくなつたのであるが、もともと家の人達は知つてゐたので、いつのまにやら足繁く遊びにくるやうになつてしまつた。さうしてだんだんつきあつてゐるうちに、女をのぼせさす事など訳ないと色魔のやうな口をきいてゐるその人が、何となくお人よしの素直な性質に見え出した。
ある晩更けてからたづねてきて、すみませんがちよつとその辺を散歩して頂けませんかといふ声が気のせゐかしよんぼりとしてゐるので、女学校を出たばかりの妹を語らつて一しよにそとへ出て行つた。三人でしばらく家の前を往つたり来たりしたけれど、どうしたのかその人は首をうなだれて黙黙と歩くばかりで、妹がまあ美しいと月をほめても見あげもしない。くさむらの露は氷のやうに冷たくてからだ中さむ気だつてきたので、もう家へ帰つてやすみませうよとたちどまると、その人はいきなり袂の中へ手を入れて何やら白いものをぎゆつと握つて私の眼の前へつき出した。きらりとこはぜのしんちゆうがみがいた爪のやうに光つた。女の足袋のかたかたなのであつた。
家までくるみち、いくら捨てようと思つても、月の光のひろびろと流れた道端に白足袋がかたかた落ちてゐる光景をおもふと、女の足が足くびだけ一つぽつんと切り捨ててあるやうで薄気味がわるくて、足袋が生きて追ひかけてくるやうでどうしても捨てられなかつたのださうである。なぜ又そんな女の足袋なんか持つてゐるのと妹がきくと、昨夜何か宴会があつて其処へきた若い芸者が、かねて病院で顔を知つてゐる間柄なのでどうしても送つてゆくと云つてきかない、お酒を飲んでひどく酔つて到頭送つてきたのださうである。下宿してゐる家の部屋へはいり、ちやんと床が敷いてあるのを見ると今度は泊つてゆくと云ひ出していきなり其処へ寝てしまつた。さうして苦しいと云つては帯をとき、暑いといつては足袋をぬいで、あげくの果てはぐうぐうと眠つてしまつた。朝になり眼がさめて自分のゐる処がわかるとひどく驚いて、ものも云はずにせかせかと帯を結んで、呼んで貰つた俥のほろを深くおろして帰つた、よほどあわててゐたと見え、すぐそのあとから下宿のおばさんが、まああの芸者はよつぽど頓狂な女ですね、私の下駄をかたつぽ穿きちがへて行きましたよと刺すやうな声でいふのに気がついて部屋の中を見廻すと、穿くまももどかしく袂の中へ投げこんだ足袋が、布団の向う側に一つだけこぼれ落ちてゐたのであつた。
僕もあわてて着物の袖へかくしたまま病院へ行つたんです。さうして帰つてきてから風呂へ行つたり飯をくつたりしてすつかり忘れてゐたんだけれど、さつき机に向つてゐて何かの拍子に袂へ手を入れたら足袋のこはぜがさはつてね、その時はからだ中の神経がさはつたやうな気がしましたよ。それからいきなり家を飛び出してふらふらつとお宅の前まで来てしまつたものだから、つい失敬な事をお願ひしたんですけれど、まつたく僕はどうしていいかわからなくなつちまつた。弱つたなあ。
その足袋をどうしても自分で捨てる事が出来なくて私に処分してもらひたかつたのかも知れないけれど、私もまだ若い頃ではあり、お酒に酔つた芸者の足にはいたものなどへ手もふれたくない潔癖を持つてゐた。ぽーんと投げちやいなさいよと妹は高飛車に云つたが、それが出来ないからまゐつてるんだとその人は首を振つた。酒興の一夜に思ひがけないわけができてしまつて、どうしていいかわからないといふのは足袋のことではないのかも知れないと気がつかぬでもなかつたが、私は自分のお腹の中で、さういふ事に気がつくのは卑しい気もちだと考へて恥かしかつた。
十七八年も昔の話である。何のために芸者の足袋なぞわざわざ持つてきて見せたのか、いまでもその人の気もちがよくわからないけれども、技巧家と思へば技巧家のやうでもあり、不意の出来事に我れながらびつくりしてその驚きをそのまま持つて来たのだと思へば此上なく正直である。女に好かれる男といふものはいつも、心の奥に赤ん坊の皮膚のやうな柔らかいいたいたしいところを持つてゐて、どうかするとそれをむきだしに晒してみせるため、女はすぐそれをおほつてやりたい衝動に駆られて近づくのかも知れなかつた。いまでは年賀状のやりとりさへ絶えてしまつたけれども、思ひ出してさらさらと肩をすべる粉雪の音色をきいてゐるやうにその頃がなつかしい。
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