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もめん随筆48

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:木綿のきもの陸軍被服本廠被服協会といふいかめしいお名前のところから、ふだん着には何を着るか、又その品をどんな店で買ふかと
(单词翻译:双击或拖选)
木綿のきもの

陸軍被服本廠被服協会といふいかめしいお名前のところから、ふだん着には何を着るか、又その品をどんな店で買ふかといふ問ひ合せのお葉書をいただいてすぐお返事を書いた。常着よそゆきの区別なくお召を着てゐる。お召が一ばん皺にもならず丈夫だと思ふからで、それも西陣の品がよいやうに思ふと正直に書いて出したところが、その葉書はついたのかつかなかつたのかその後べつに雑誌も頂戴しないので何となく気にかかつてゐる。自分の言葉が空中に吸ひとられて行方不明になつたやうな何かおちつかぬ心地である。
もつとも初めの言葉は向うからかけられたので、こちらはそれにお返事をしたまでの事だからそれで一応事は落着してゐるのだけれど、いはゆる葉書回答といふものは殆ど全部それが印刷されてもう一度自分のところへ帰つてくるので、それ一つだけはやはり迷子になつたやうな気がされるのである。ふだん着にお召を着るとは贅沢だと思はれたのかしらん、木綿を着ると書いておいたら質素に見えてよかつたかしらなどと、つまらぬ事まで考へてみた。
たしかこの春の頃と記憶するけれど、佐野繁次郎画伯が着もののはなしをお書きになり、大へんたのしく読ませていただいた。その中に木綿の着物を推称されるお言葉があつて、それはもちろん男の着ものの事に違ひなかつたが、それにしても木綿の着物を日常にピンと着てゐるといふ主張は贅沢の中の贅沢と、思はず眼をみはらされた。よほど手のあまつてゐる家かそれともよほどまめやかな主婦のゐる家でないかぎり普通には到底望みがたい事であつて、もし忙しい中から旦那さんにいつもピンとした木綿ものを着せておく奥さんがあつたら、その奥さんはたつたそれ一事で十分に御はうびを貰ふねうちがあると思ふ。
木綿の着ものを労働着としてくしやくしやに着るのは訳ないが、それをしやつきりと着る手数は野菜料理の贅沢さと優り劣りがないやうである。いふまでもなく佐野さんはただ価が張つてゐるだけで薩摩や結城を最上とおもふ人へ、もう一つその上の木綿の贅沢を教へられたにちがひなかつた。
のぶ女さんといふ方が抗議文をお書きになり、それも面白く拝見した。結城のはなしがややこしく、最初は寝間着にしてきる程のそれほどの本結城でなければ東京では結城とはいはないといふ主張が、すこしばかり私には腑におちかねる心地がした。
父が若い二十の頃、東京で買つた結城が絣と縞と二枚ばかりいまだに残つてゐて、品質の堅牢さはゴリゴリする手ざはりでも知れるのに、惜しい事に衿と膝の色が変つてもう人前には着て出る事が出来ないのである。
こんなものを寝間着に着たら着てゐるうちに色が変つて生地がしなやかになつた頃には役に立たぬのではなからうかとそんな疑惑を抱きながら銀座の百貨店へ行つてみると、番頭の和井さんがやつぱり佐野さんの愛読者ですぐと結城の話をした。結城は人の思ふ程丈夫なものではないといふ。「実は私も商売冥利に結城ぐらゐ着なくてはと着てみましたが、いけませんなあ。三月とほして着ましたらすつかり駄目になりました」
ちよいと着てはちよいと洗ひといふ風に、しじゆうまめに手入れをして休ませておかなくては結城は保たないさうである。それではやはり木綿同様、贅沢なきものである。
 遅い朝食のあとの新聞をひろげると障子紙はいばらといふ広告が眼について思はずああと声をたてると傍から子供がのぞきこんだ。なあに、障子紙? 障子紙ならこのあひだから角の小間物屋でも売つてゐるわとさもあたりまへのことにいふ。それがね景品つきなのよとめつたにそとへ出ぬ私を慰め顔に弟の方がすぐあとをひきとつて云ふのである。二本買ふと新しい刷毛をひとつくれるし、一本だとなまふのりをあげますと書いてあるの。なまふのりはよかつたとみんな笑ひ出したが本人はすこし不服で、ぢや生きふのりとよむの? そんなのなほをかしいぢやないか。
中学の三年にもなつてゐて生ふのりをなまふのりと読んでくる子供の迂濶さもさる事ながら、それにしても男の子と女の子とのちがひはこんな茶飯事にもうかがはれるやうで面白い。新しい合帽の輸入広告が男の眼をひくやうに、障子紙や蒲団綿の広告に季節を感ずる女の気もちは何かしみじみと自らいたはりたいやうな思ひがされなくもないのである。長い夏のすだれを払つて新しく閉める障子の紙の白さは、日本の家に住む主婦の家族へ贈る心づくしの一つであるが、思ふばかりで実際には手のとどかぬ事が多い。
震災の前年からその年へかけて池袋に住んでゐた。樹の多いしつとりとした一廓でおなじやうな家並の住み手はお役人や軍人さんの御家族で、従つて一年のあひだにも思ひがけない転任でうつり変りが多かつた。陸軍大佐で赤羽の工兵隊の大隊長が筋向うにをられたが、少将に昇進され遠くへ転任されて家をひき払つてゆかれる時、その慌しい旅支度の最中に夫人みづから手を下して二階から階下から家中の障子といふ障子をことごとくまつ白に新しく張り替へてしまはれた。おたちになつたあとからその話を耳にして今更のやうに感じたが、そのおくさんには私もいろいろと御世話になり、思ひ出すといつも何か清涼な風に吹かれるやうな心地がする。
その頃はわけても神経質であつた私が、胃腸の弱い子供を気づかつて殆どそとへ出さないのをおくさんがあはれがり、毎日のやうに連れていつて遊ばせて下すつた。私がかうしてお茶の間からお針をしながら見てをりますから、まちがひはございませんよ。さういつておうちのお嬢さんとお庭で遊ばせて下すつた。お八つの時には紙に包んだお菓子を、一度お母さまに見せてからとうちまで持つて帰らせて、私がさしつかへないといふと又引つかへして皆さんと御一しよにいただくのである。
いへば何でもないやうな事ながらそれだけの親切はなかなかつくしがたいものである。肌寒いある夕方道ばたに行きあふと、ほつそりと細おもての美しいおくさんは両の袖を胸にかきあはせて、おさむうございますことといはれた姿が、清方の一枚絵でも見るやうに清清《すがすが》とうつくしかつた。かきあはせた両の袖がぢみな染絣であつたのに、まるで切りたての結城のやうにきりりしやんと着てをられたのである。
この春の新聞に、その将軍が満洲から凱旋された記事が出て、昔ながらのまるまるとにこやかなお顔をなつかしく拝したが、私の眼にはその向うにほつそりと清らかなおくさんの面影がありありと浮みあがつた。木綿の着ものはあのやうな夫人に着られてこそ初めて生きがひを感ずるであらう。私には資格がない。
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