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ある日、ある午後01

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:贅沢《ぜいたく》なエアポケットウイスキー党とかビール党とか日本酒党とか、それ一本にきめて他のお酒には手を出さないお酒飲み
(单词翻译:双击或拖选)
贅沢《ぜいたく》なエアポケット

ウイスキー党とかビール党とか日本酒党とか、それ一本にきめて他のお酒には手を出さないお酒飲みがいるが、せっかく一度きりの人生味気なかろう、もったいないと思う。
もちろん人それぞれ、何を飲もうとその人の勝手といえばそれまでだが、私は、色々なお酒の味を楽しめる人と食事をしたり、飲んだり、喋《しやべ》ったり、一緒に暮らしたりしたい。
たとえば女と逢《あ》う直前に、ホテルのバーに立ち寄って、さっとドライ・マティーニーで口の中を湿らせる。それから女と逢う。そういう粋《いき》さを、ひそかに男には楽しんで欲しい。
このひそかさというのは大事なことで、赤い顔をして現れたり、息がジン臭《くさ》かったり、足元《あしもと》がふらついたりしていたら、およそ興ざめなのである。
そして女にも女性の粋さというものが、あってもいいのではないかと、この頃考えるようになった。
けれども、男に逢う前に一杯ひっかけて行く、という表現はちっとも素敵ではない。やっぱりひそかに控えめに、一杯飲んで来たことなど|※[#「口へん」+「愛」]気《おくび》にも出さないで。
私自身、ホテルのバーへ一人で入って行くのが平気になったのは、三十代の後半になってからであった。人が私のことをどう見ようと、どう思おうと全然かまわないではないか、と思えるようになってからだった。問題は自分が自分をどう見るか、それだけなのである。
自分の眼に自分がどう映るか。正確に自分というものが見えさえすれば、他人の視線など全然気にならなくなるものだ。
だから私の最も好きな飲み方及び好きなドリンキングタイムは、仕事の終わりにちょっとホテルのバーに立ち寄って、軽く一杯飲むというやり方である。
あるいは、音楽会とか映画とかオペラに行くための待ち合わせのひとつ前の段階で、スウィート・ヴェルモットのオン・ザ・ロックスを、というふうに。
ひとつには区切りをつけるために。またひとつには、リラックスするために。そして次への期待をかきたてるために。
デイトやオペラに遅れそうだといって、あたふたと駆け込むようなのは、絶対に避けたい。それよりも、五分か十分、たった一人のお酒を楽しむ余裕をもちたい。贅沢《ぜいたく》なエアポケットのような時間。私たち日本人に一番欠けているのは、この一人で楽しむという、束《つか》の間《ま》の時間の過ごし方ではないだろうか。
女が一人で酒場に足を踏み入れるのには勇気がいる。一夜の相手の男をひっかけるつもりか、プロスティテュートのように見られはしないかと気にもなる。
ただし自分でそういうことが気になるうちは、やっぱりそのように見られるにきまっているから、一人で酒場へなど足を踏み入れない方が良いのにきまっている。
その筋の女に間違われるのは、やっぱりその筋の女か、あるいは心の片隅で男にひっかけられたいと無意識に期待しているかのどちらかである。そういう卑しい期待というのは、安香水のようにぷんぷんとあたりに臭うのだ。
けれども、最初から自分自身だけのために、カクテルを一杯だけ飲みに立ち寄った女に、みだらな男の声は掛かりはしない。背筋の伸び具合、顎《あご》のひき方、歩き方、飲みものを持つ手の仕種《しぐさ》、そして眼の表情で、それはわかるのである。
だから、酒場で見知らぬ男に声をかけられたら、むしろ自分の恥だと思うこと。まだまだお酒と人生の修業が足りないのである。
女の酔っ払いは頂けないというが、男の酔っ払いだって全く頂けない。お酒の上のことで男が許されて女には許されないということはないし、その逆もまたない。私はそう考える。
もしも一人で上手にお酒が飲めたら、そのひとは、他の人と一緒に飲むのも、とても上手なのに違いない。一人酒も良し、二人で飲むのもこれまた良し、更に大勢で飲むのもこれまた良し。お酒はあくまで楽しいものである。
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