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ある日、ある午後11

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:夫と妻のいい関係いい空間人との関係で私が一番重要視しているのは、距離のとり方である。どんなに親しくとも、たち入ってはなら
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夫と妻のいい関係いい空間

人との関係で私が一番重要視しているのは、距離のとり方である。どんなに親しくとも、たち入ってはならない心の空間が、あるものなのだ。時と場合によって、つかずはなれずという、むずかしい距離感。
住いというのは、人間関係を容れる器である。その中で、所詮《しよせん》は他人である男と女が長きに渡って暮らしていかなければならない。人を容れる器というものが、ある程度の広さを必要とするのは、言うまでもないことだ。
こんな実話がある。
ある愛しあう男女がいた。二人はヨットで世界一周の旅に出た。二人きりのヨットの航海。なんてロマンチックなのだろうと、人は思う。
夜は降るような星の下で眠り、昼には太陽がさんさんと降り注ぐ。タヒチやミクロネシアの島々。珊瑚礁《さんごしよう》。夕日。椰子《やし》の木。
実際にはどうだろう? 海、海、海。来る日も来る日も眼に映るのは大海原。風も吹く。想像を絶するような強風だ。嵐《あらし》にも遭遇《そうぐう》するだろう。
けれども最大の危機は、風でも雨でも嵐でもない。お互いがお互いの敵になることである。一本の綱に命をかけることもある。舵《かじ》さばきひとつで岩礁に激突してしまう危険もあるわけだ。言葉など選んでいる暇はない。怒鳴《どな》り合ったり、激怒したりすることもある。喧嘩《けんか》になる。ヨットの中での男女の喧嘩は、すさまじかったという。何度相手を憎み、殺したいと思ったかわからないわ、と後で女性の方が私に告白した。
大海の中で二人きりという孤独感もある。反対に、一人になりたいと思うこともある。だが一人になれるような空間が、狭いヨットの中にはない。何時間もトイレに蹲《うずくま》って泣いたこともあった。
やがて航海が終わった。二人は自分たちが遂に成しとげたことを祝いあった。けれども何かが失われてしまったことも感じた。二人は陸に上がると、すぐに別れた。今でも愛しあっているけど、と彼女はとても悲しそうに呟《つぶや》いた。
さて、航海を人生に置きかえてみよう。私たちの人生もまた、船旅のようなものである。強風の吹く日もあるし、大嵐《おおあらし》にだって逢《あ》うだろう。そうしたものから、私たちを守ってくれるのは家というものである。建物そのものであり、家庭でもある。
そこで何よりも大事なのは、住む人それぞれが充分に呼吸出来るような広さの空間。
家族と言えども、プライバシーは尊重しなければいけない。そういう空間を確保することが大事なのではないだろうか。夫妻が一緒の部屋で寝起きするのは当然だが、もしも夫に書斎のような「男の部屋」があるのなら、妻にも主婦コーナー以上の「女の部屋」があってもいい。
そして一番大事なことは、個室をもつこと以上に、そうした空間を使いこなす個人の人間性である。趣味を深くもつ。何かを勉強する。でなければ、そうした空間は単なる無駄なスペースとなり、宝の持ち腐れというものだ。
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