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ある日、ある午後24

时间: 2020-03-31    进入日语论坛
核心提示:男について長いこと、男というものがわからなかった。つまり、最初はわかっていたのだ。男というのは強くて、妻子を養い、泣くな
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男について

長いこと、男というものがわからなかった。つまり、最初はわかっていたのだ。男というのは強くて、妻子を養い、泣くなんてことはなく、常に道を切り開いていくものだ、と思っていた。父がそうであったように。
何かあれば父の膝《ひざ》の上に乗っかって甘えれば、たいていのことは解決することができた。あるいはほんの少し涙を見せたりすることで。
ある時、不意に、父はもはや万能の神ではなくなってしまった。私は、他の男に初めて恋をしたからだった。
恋をして、やがて破れ、野良猫のような薄汚れた悲しみに包まれて家に戻ると、そこに父がいた。
けれども、私は依然として淋《さび》しかった。父がいるのにもかかわらず、見捨てられた孤児のように淋しかった。
やがて、結婚して、一人の男と一緒に暮らすようになると、私の「男」というものの概念が音をたてて崩れてしまった。男も泣くことがあるのだ、という発見はとりわけショックであった。
そして必ずしも男は強いわけではなく、女々《めめ》しくて嫉妬《しつと》深い動物だということも知った。そして必ずしも男だけが妻子を養ったり、人生を切り開いていくものでもないのだ、ということを自ら体験もした。
とりわけ性の暗闇《くらやみ》は、ますますその暗さを増していったような気がする。
そして、小説を書くようになり、自分をみつめる作業が延々と続いた。すると不思議なことに、自分を発見していく過程で、男のことが少しずつわかるようになっていった。
世の中に、男と女が別々にいると思うからわからなくなるのである。人間というひとつの単位で考えれば、それですむのだ。
熱いものは熱い。酸っぱいものは酸っぱいと男も女も感じるではないか。女にとって快いことは男にも快いはずである。女が嫌だと思うことは、男も嫌だと思うのである。自分が何を望み何を望まないかがほんとうにわかれば、相手のそれも実によく見えてくるものである。
そんなことがわかるようになると、私は、具体的に男を主人公にした短編が書けるようになった。当初の頃には思いもよらなかったことである。
思えば、父親はなんと遠くなったことか。その父も老い、背が丸く縮んでしまった。胃の具合が悪いと言っては愚痴をこぼし、血圧が高くなったと不安を訴えてくる。時々スシ屋へ行けば、私の方で財布を取り出して支払いをすます。
しかし、あの少女の頃に夢みた、男性像はどこにもいない。現実には、男らしい男など存在しない。男はその中に誰《だれ》でも少しずつ女をもっている。そして女もその中に少しずつ男をもっている。だから私たちは、相手のことがわかり、そして男と女とは少しずつ似ているのである。
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