英国は男性の国なのだという印象を改めて強くするのは、買いものの時である。とにかくスポーツ用品にしろ、日常用品にしろ、紳士服にしろ、小物にしろ、男のための専門店がめったやたらに多い。これは東京と全く逆である。
傘屋には、例の細巻きのコウモリ傘がズラリと並んでいるが、女ものはおていさい程度。ダンヒルしかり。そして男性物の製品のほれぼれとするような伝統のデザインの良さ、品質の良さである。
その点女性ものは極端に二つに分れると思う。つまりニットやウールの本物のファッション、これは流行よりも、長く着られるということに重点を置いているから、当然品質は優れている。
長いことデザインや色や品質を変えないということは、その服が女性を一番美しく見せるという自信に立ってものを考えているからである。
デパートなど歩いていると、そのまま女王陛下がお召しになりそうな感じのコートや上等なドレスが目立った。
でなければ、完全に最新流行の更に先端をいくものを探すことだ。保守的であると同時に、ロンドンは前衛の最前線でもある。今回私はモンティ・ドンの店に行き、キンキラキンの魚の骨のイヤリングとブローチを買った。フェイク・ダイヤですごく光るものだ。ギョッとする程ショッキングだ。
ハロッズでは、エスニック調が流行で、私もアフリカの民族|衣装《いしよう》にぴったりのような、大げさなジャラジャラとするアクセサリーをみつけた。かと思うと、街角の小さなドラッグストアーで埃《ほこり》をかぶっていたシカのツノの腕輪を一つ一ポンドで三つ買ったりした。これはアンティークのお買い得であった。
夫はシンプソンで三年分くらいのまとめ買いをした。手足が長いので彼の服は東京ではむりなのだ。