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私が戯曲の面白さにとりつかれてしまったのは、テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』(新潮文庫)を文庫で読んで以来のことだ。まだ十代だった。戯曲を書きたいというより、むしろいつかブランチ・デュボアを演じたいとひそかに思い、暗記するほど読み返したものだった。むろん女優になる夢は、夢のままに終わりをとげた。その後色々な舞台で、様々なひとが演じるブランチ・デュボアを観た。ヴィヴィアン・リーも杉村春子も。誤解を承知であえて不遜《ふそん》なことを言うなら、どのブランチも、私自身の想像の舞台で、私が演じたであろうブランチほど、完璧《かんぺき》ではなかった。それはともかく、現在では戯曲を書くのが私の夢である。