私の10点
8
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フリッツ・ライバーの『放浪惑星』(創元推理文庫)は、他人《ひと》にすすめられて読んだ数少ない作品のひとつである。多分素直でないからだと思うのだが、ひとに推薦《すいせん》されると、その本は逆に読みたくなくなってしまうという性癖が私にはある。本というものは、自分で本屋へ足を運び、五感と想像力をフルに発揮して、ぴんと来るものを本棚から引きぬいてくることにこそ喜びがあるわけだ。本屋におけるその快感をスキップするのだから、面白くなかったらその友人とは絶交だとひそかに思いながら読んだ。ありがたいことに友人とは絶交せずにすんだ。不思議に優雅なSFであった。読後感はしんみりと哀《かな》しかったのを覚えている。ちょうど十年前に読んだ作品である。