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大都会04

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:大阪二ヵ月後「接吻はいやよ」新婚の褥《しとね》の中でおよそ新妻が吐くべからざる言葉を順子は平然と吐いた。南紀白浜の初夜の
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大阪——二ヵ月後

「接吻はいやよ」
新婚の褥《しとね》の中でおよそ新妻が吐くべからざる言葉を順子は平然と吐いた。南紀白浜の初夜の宿の一室は、灯を消しても海面の水光がたゆとうような、海に張り出したこの宿随一の眺望を誇る特別室である。
新大阪ホテルで関西財界人のほとんどすべてを招いての豪奢な結婚披露宴の後、花岡進と順子は南紀一周の新婚旅行《ハネムーン》に出発して、今夜は初夜であった。
披露宴の絢爛に比べて二泊三日の新婚旅行は、あまりにも短か過ぎるようであったが、新婦の父、花岡俊一郎がなるべく早く帰ってこいという厳命を下したので止むを得なかった。
妻の父の命に易々として従わねばならぬのが、これからの花岡進の宿命であった。
同じ花岡姓を名乗ってはいても、関西財界にどっしりと根を下した、花岡俊一郎=協和電機株式会社社長を当主とする花岡家は、花岡進の属する東京の花岡家の総本家にあたる家筋で、現在では、両家の間にほとんど血のつながりはないといってよかった。
ところが、花岡俊一郎には順子という一人娘しかいない。妾腹の子もない。そこで花岡の�純なる血液�を伝えるための種馬が必要となったわけである。
だが、種馬であるからには馬自身が純血《サラブレツド》の所有者でなければならない。八方手を尽くした婿探しの結果、花岡進に白羽の矢が立ったという次第であった。進ならば頭もいいし、第一身許がしっかりしている。それに血縁とはいえ、現在ではほとんど血のつながりは薄れ、優生学上も全く問題がない。
進の父は総本家から持ち込まれたけっこうな話に一も二もなかった。進自身は婿養子ということに少々ひっかかるものを覚えたが、花岡家の名声と資産と、あわよくば手に入るかもしれぬ花岡俊一郎の後継者としての椅子とそして何よりも順子の冷たい美貌に、むしろ浮々として承諾した。
美しい女と富と名声、野心のある男ならば絶対に拒ねのけることのできぬ誘惑が、三拍子揃って花岡進の前に現われたのである。婿という身分ぐらいには耐えなければならぬ。何、それも俊一郎が�隠居�するまでのわずかな時期を我慢すれば、三つ共、名実共に自分のものとなるのだ。
花岡は心の中でソロバンを弾くと、満々たる野心を秘めて大阪へ下った。
しかし、すべての手続きを終えて、新褥の中で新妻の躰を初めて開く時に至り、進は自分に課せられた種馬という宿命の酷しさを、改めて思い知らされたのである。
順子は最初から進より一段上の所に構えていた。進の妻となった身分でありながら、決して不必要な身体の接触を許さなかった。
なるほど、生殖の行為に接吻はいらない。肉体のある一部の部分的接触だけで、充分目的は達せられる。愛情も技巧もムードもいっさい不要だ。
順子はその点でまことに稀有な女であった。女である前に、純血を伝えるただ一人の人間として徹していた。
「接吻はいやよ」
夫として絶対に許せぬ言葉を甘受しながら、それならばそのように扱ってやろうと、進はすべての愛戯を省略して、驕慢な妻の躰の中に乱暴に分け入って行った。
疼痛を必死に耐えているのは分ったが、進は容赦しなかった。
向うが俺を夫として認めないのであれば、こちらもこの女を富と名を得るための媒体として扱ってやる。最初からそのように割切ってしまえば、女がどんな態度をとろうと、それはそれなりに欲望の排泄口としての効用はある。
花岡は水の光のかがよう褥の中で、順子の躰を苛《さいな》んだ。
二つの男女の躰はその奥深くを合わせながら、無機的な律動を伝え合っているにすぎなかった。
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