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大都会05

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:冷たい真空管星川電機研究所の技師、渋谷夏雄は自分の研究が行き詰まる都度、二年前の入社式の席上で、「諸君は売れる物を創《つ
(单词翻译:双击或拖选)
冷たい真空管

星川電機研究所の技師、渋谷夏雄は自分の研究が行き詰まる都度、二年前の入社式の席上で、
「諸君は売れる物を創《つく》ろうとしなくともよい。星電研が諸君に要求することは、�本当によい物�を創ること、それだけだ」
と新入技師団に語った星川社長の熱っぽい言葉を思い出すのであった。
最初は渋谷もその社長訓示を、どこの入社式でも聞かれる美辞麗句であると思った。
利潤の追求を絶対かつ唯一の目標とする営利会社にあって、国家社会に対する奉仕を最優先させるはずはない。
星川社長も口ではうまいことを言っても、社会のために会社がつぶれてもいいなどとは思っていないだろうと、内心かなり反発を感じたものである。
ところが、入社して現実に星電研の技師の一員として働くうちに、社長の言葉がうそでないことがよく分ってきた。
一応、株式会社の看板を掲げてはいても、もともと、社長をはじめとする四、五人の星電研の首脳陣が旧日本軍の兵器技術者で、自分達の意志に反して人間殺戮の研究をさせられていたのを、敗戦を機に今度こそ自分達の技術と頭脳を人間の幸福のために役立てたいと願って設立したものが星電研であった。
それだけに、設立の趣旨そのものが、営利の追求よりも、これら技師団が軍部によって長い間抑えられていた本当に創りたい物に対する欲求不満の解消にあった。
であるから、星電研は営利企業体というよりは、技術者集団と呼んだ方がよかった。製品も金を儲けるために創るのではなく、創りたいから創るのである。彼らとその家族が喰えるだけの利益を得られればよいのだ。
星電研の設立趣意書の冒頭にもこの方針ははっきりと謳《うた》われている。即ち、
「不当ナル利益ノ追求ヲ廃シ、アクマデ内容ノ充実、真ニ優秀ナル製品ノ開発生産ヲ主タル目的トシ、徒ラニ規模ノ大ヲ追ワナイ」
技術者にとってこんないい働き場所はなかった。そして渋谷夏雄にとっても。——
その夜、渋谷は同僚というよりは彼のよき助手、立花和彦と遅くまで研究室に居残った。�残業�は何もその夜だけではなく、ある研究に没頭していた二人は、ここのところ連日研究室に居残っていた。
時刻はそろそろ午後八時を廻る。二人の胃袋は痛いほど空っぽになっていたが、彼らは憑かれたように研究を続けていた。
「おい、見ろ!」
突然、渋谷の興奮した声が起きた。
「何ですか?」
「いいか、今、もう一度交流信号を入れる。よく見ていろよ」
渋谷は複雑に入り組んだ実験装置のある一点を操作した。かたずをのんだ立花。そして、
「こ、これは!」
「な、内信号が増幅されて出てくるだろう」
「これは一体、どういうわけですか?」
立花は驚愕のあまり、声をのどに詰まらせた。
「見るようにゲルマニウムn型の半導体結晶にタングステンの二本の針を立てた。二本の針とゲルマニウムを電極とし、針の一本を正電位《プラス》、もう一本を負電位《マイナス》になるようにしてそれぞれ、プラス一ボルト、マイナス五十ボルト位の電圧を加えたんだ。そして、プラスの針とゲルマニウムの間の電気回路に、交流信号を入れると、マイナスの針とゲルマニウムの間にその信号が増幅されて出てくる」
「増幅! 真空管も使わずに」
「そうだ、しかもより精密にな」
「渋谷さん、これはどえらいことになるぞ」
二人の技師の熱に浮かされたような声が研究室の中で次第に高まっていった。
渋谷と立花は従来のラジオ、通信機、レーダー装置、電子計算機などの一連の電子機器に広く用いられている電子管(真空管)が、フィラメント加熱方式で放熱装置を必要とするため、どうしても大型化、重量化する点に注目し、電子管に代るべき増幅作用や、整流作用を営むものを開発しようとしていた。
研究の主眼目は従来の電子管より小型軽量であり、電力消費が少なく、寿命を長くすることにあった。
たまたま渋谷が学生時代から進めていた半導体の研究により、思いついた半導体の結晶を使っても真空管と同じような純電子的増幅作用を営むことができるのではあるまいかというヒントに基づき、星電研入社後、彼の研究に興味を持った次期入社の立花と共に様々の工夫をこらしてきたのである。
同じ頃に米国でも同様の研究が進められているらしかったが、文献や資料がほとんど入手できず、ただ一つ分ったことは、彼らがその�新電子管�をトランジスターと呼んでいるらしいことだった。
渋谷はあとうかぎりトランジスターに関する資料を蒐《あつ》めた。そしてどうやら海外の研究がほぼ完全に自分の目指すものと一致していることを知った。それが渋谷の卒業の頃である。
彼は星電研入社にあたって星川社長にトランジスターのことを熱心に説いた。
「そんなものが企業として成り立つかな?」
まだトランジスターのトの字も知られていない頃のことである。重役の中には一介の青年の口から飛び出す、得体の知れない新語に明らかに疑惑の色を浮かべる者が多かった。
渋谷を技術者にありがちな誇大妄想的な発明狂と思ったのである。
その中で星川社長のみ終始熱心に彼の話に耳を傾けてくれた。そして、
「熱を出さない真空管——トランジスターか、……よろしい、やってみたまえ」
と力強く言ってくれたのである。
ここに渋谷の才能を買ってくれた人物が現われたのだ。
渋谷は星電研に入社と同時に研究室に回虫のように棲みついた。星川社長の期待に報いるためばかりではなく、彼は急がなければならなかった。
途中から半導体整流器を研究していた立花が彼の研究に参加してくれた。そして、今日までの二年間、血の滲むような研究が続けられてきたのである。
そして、遂に、——
今夜、半導体結晶表面の電気的性質を研究していた渋谷が、この現象を発見したのだ。
「渋谷さん、とうとうやりましたね」
「うん、お前のおかげだよ」
二人は回路に増幅されて出てくる交流信号を、我が子の産ぶ声を聴き入る父親のような顔で見入りながらかたく手を握り合った。
技術者ならではの恍惚の一瞬である。
渋谷は立花と手を握り合いながら、遠い日に誰か他の友とどこかで同じような握手をしたことを思い出した。
それは記憶錯誤の状態において、自己の現状はすべて過去のある時期に体験したような気がする既視感《デジヤビユー》とは異なり、確実に記憶の中に深く刻み込まれている、生々とした触覚であった。
そうだ! あれは今は東京と大阪に離れている、かつての山仲間、岩村と花岡と交わした山頂の握手であった。
ある時は肌の焦げるような熾烈な陽の光の下に、また、ある時は息もつけぬような風雪の中で、がしっと握り合った掌はたがいにザラザラと荒れていた。
今、交わした立花との握手は、どちらの掌も手脂や機械油でしめっていた。しかし、いずれも共に扶《たす》け合い、大きなことを為し遂げた後の友情と相互信頼に充ちた男の握手だった。
薬品と機械油の異臭が混然とした薄暗い実験室の中で、渋谷はかつての日の山頂をあたかも昨日のことのように鮮明に思い出したのである。
その時、扉に忍びやかなノックの音が聞こえた。
二人はそれに気づかなかった。ノックは静かに続けられた。
最初にそれを聞きとがめたのは立花である。
「渋谷さん、誰か来たらしい」
「誰だ? こんな時間に」
渋谷は腹立たしそうに言った。技術者の恍惚の瞬間を第三者のために損われたくなかったのである。
「誰ですか!?」
気持は同じ立花が憤然として怒鳴った。
答えはなく依然としてノックだけが静かに、しかししつように続く。
遂に立花が根負けしたように、
「鍵はかかっていない。用があったら入って下さい」
と怒鳴るように言った。
油の切れた蝶《ちよう》 番《つがい》の軋りと共に、扉は静かに開けられた。二人はそこにたたずむ意外な人の姿を見出した。
「社長!」
そこには星電研社長、星川徳蔵の鶴のような姿があった。
「一体、こんな時間にまた、どうして?」
二人の問に星川は静かな微笑を哲人のような彫りの深い細面に浮かべながら、右手にぶら下げた小さな風呂敷包みを二人の前に掲げて、軽く左右に振ってみせた。
「何ですか? それは」
渋谷が訊いた。
「にぎりめしだ、二人共、まだめし前だろ。そう思ったから女房と娘に握らせてきたんだ」
「社長!」
「研究熱心もいいが、身体をこわしては何にもならん。めしも喰わずにというのは感心せんよ」
星川はそう言いながら、包みを開いた。握り立てを大急ぎで持って来たとみえて、めしからは湯気が立っている。
「熱いお茶も魔法瓶に入れてきた。さ、冷めないうちにやれ、渋谷、お前はオカカが好きだったな。立花、お前はタラコだったな。両方共たっぷりあるぞ」
二人は顔を見合わせた。この人の善い町工場の親方的感覚! しかし、同じように気の善い二人の若い技術者は、星川社長のなにわ節に完全にまいってしまった。
「社長、す、すみません……私達は今、どえらいものを発見したんです」
鼻をつまらせながら渋谷がたった今為しとげたばかりの実験成果を報告しようとするのを、星川は手を上げて軽くさえぎり、
「そのことは明日の朝、詳しく聞こう。今、君達が為すべきことはこの目の前にある食糧を少しも早く胃の腑に収めることだ。さ、喰え! これは社長命令だぞ」
二人を眺める老社長の眼は慈父のような優しさにあふれていた。
渋谷はにぎりめしをのどにひっかけた。めしのぬくもりがはるみの手のぬくもりのように感じられたからである。
 星川はるみが正式に渋谷はるみとなったのはそれから約一年後であった。
彼らの結婚が星電研全社員の祝福をうけたことはいうまでもない。
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