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大都会03

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:名古屋二ヵ月後「今日もまた、遅くなってしまった」渋谷夏雄は窓外に散る名古屋市街の多彩なイルミネーションを見下しながらつぶ
(单词翻译:双击或拖选)
名古屋——二ヵ月後

「今日もまた、遅くなってしまった」
渋谷夏雄は窓外に散る名古屋市街の多彩なイルミネーションを見下しながらつぶやいた。
室内にはボール盤、ふいご、巻線機や、標準音叉発振器、容量測定器、標準信号発信器などの各種材料や、標準器、試験器が所せましと置かれている。とうてい、東洋一の豪華大ホテル、ホテルナゴヤの一室とは思えなかった。
それもそのはず、そこは星川電機研究所の本社でもあれば研究室でもあったからだ。
星川社長をはじめとする旧軍部の技術者が寄り集まって設立した星川電機研究所、いわゆる星電研はまだ社屋もない。星川社長の軍時代からの知己のよしみで、大口出資してくれたホテルナゴヤ社長、内野恵美子の好意で、彼女の経営するホテルの|続き《コネクテイング》 部屋《ルーム》の一つに、会社ぐるみ居候していたのである。
会社自体がうぶ声を上げたばかりで、製品には別にこれといって見るべきものはなかった。
しかし、それでも、現在開発中のTA—2型真空管電圧計や、TL—3型電子音響器などをみても、この会社が平凡な技術者の集団でないことが分った。
特にTA—2は未完成だというのに、性能の優秀性を買われて早くもある官庁筋から二百台も発注されていた。
ホテル業界の女怪といわれている内野恵美子が、この海のものとも、山のものとも分らぬ星電研に大口出資して、しかもなお、ホテル経営の常識では考えられぬ、研究室用に客室を貸し与えているのも、単なる星川社長との個人的つながりによるものばかりではなく、星電研の将来性を敏感に読み取ったからにちがいない。
ともあれ、渋谷夏雄は、ホテルの客室からベッドやソファーを取り除き、代りに実験器具を搬入した何とも珍妙な�研究室�で大あくびをすると、遠い郊外に借りた下宿の一室に帰るために、立ち上がったのである。
ここ連日、研究に熱が入り過ぎて身体が相当に疲れている。一人者の気安さ、カーペットだけは残した研究室の上にごろ寝をして夜を明かしたこともある。
「とにかく、今日は帰らなけりゃ」
研究室の周囲は清潔でふかふかしたベッドを備えたホテルの客室であったが、渋谷はどうもこのベッドと言うやつが気に入らなかった。
あまりに柔らかすぎて、身体ごとクッションの中に沈みこむようで寝返りも満足に打てない。不潔な万年床ではあっても、彼には下宿の破れ畳みの上のカビくさい寝床が性に合っていた。第一、遅くなる都度、ホテルへ泊まっていたのではたちまち破産してしまう。
「さてと」
渋谷は宝石を砕いたような窓外の夜景に、背を向けた。その時、入口扉にコールサインが聞こえた。
「はて?」
彼は腕時計を見た。十一時近い。訪問客の来る時間ではない。かといって、会社の人間が飲みすごして、終電車を逃がして舞い戻って来る時間には少々早すぎる。
渋谷がとまどっている間にふたたびコールサインが鳴った。チロンホロンと優雅な韻律が深夜の客室に響いた。さすが、内野社長がノック音が無粋だからといってあらゆるホテルに先がけて全客室に装備させただけのことはある。こんな時間にがんがんノックされたらたいてい神経に障るところだが、柔らかなコールサインは、深夜の訪問客に甘いイメージさえ寄せさせる。
渋谷は扉口に歩み寄った。ドアチェーンはかけてないからワンタッチで開けられる。
彼はそこに思いがけない人の姿を見た。
「社長!」
「今晩は。ご迷惑かしら?」
社長といっても星川社長ではない。ホテルナゴヤの社長であり、星電研の大株主でもある内野恵美子が、昼間の経営者としての厳しい姿とは打って変った、紬の和服姿でしとやかに笑いかけているではないか。
「こ、これはまた!?」
渋谷は少々慌てた。時折り、一階のロビイで姿をチラホラ見かけることはあっても、とうてい、親しく口をきける人間ではなかった。
女手一つで東洋一と称されるホテルナゴヤを建設しその他、中京地区の日本旅館、料亭、バス、レジャーセンターなど手広く経営している日本実業界の女怪であり、中京地区で毎年五指に数えられる高額所得者なのだ。
しかも渋谷の場合は、彼の社そのものが彼女の本拠に寄生しているのである。いわば女王と陪臣のそのまた陪臣の関係といってよかった。
「あなたが渋谷さん、星川社長から噂は聞いているわ」
恵美子は化石したように佇《たたず》む渋谷の前に悪びれずに進んだ。
「そんなにかたくならないでちょうだいよ、いつも星川社長がね、あなたの自慢ばかりしているのでどんな方か一度お目にかかりたいと思っていたのよ」
彼女は艶然と笑った。女怪とか中性的化け物とか様々に酷評されているが、渋谷が今眼前に相対している恵美子は、色香の充分に残れるふくよかな中年の女性であった。
「まあまあ、この部屋には満足に坐れる椅子もないのね、どう、私の部屋にいらっしゃらない? 何か美味しいものをご馳走してあげるわよ。今夜は私、もう別に予定はないし、それに株主の一人として、星電研の将来を背負う若手技師ナンバーワンのあなたから、いろいろと製品のお話しをうかがいたいわ」
恵美子はカーペットの上に散乱した機器の間を、泥濘の中を歩くように裾をつまんで歩いた。
形のいい脛が充血した渋谷の目に痛いように白く映った。しかし、それを挑発ととるには渋谷はあまりにも純真であった。
開発中の製品以外は頭にない技術の虫のようなこの男は、内野恵美子の誘いを単純に馳走への招待とうけとったのである。事実腹をへらしていた。
「どう? 感じのいい部屋でしょう」
内野恵美子に誘われてのこのこと尾いて行った彼女の居室は、ホテルナゴヤ最上階にある貴賓室であった。
室の名前は|菊  の  間《クリサンスマムルーム》、
「一泊十万円もするのよ」
恵美子はその時女王のような笑いを見せた。十万円といえば渋谷の約二ヵ月分の給料に相当する。それをこの女はただ一晩の、それも眠るだけの費用として投じている。
資本家であると同時に経営者としての彼女は、経理の公私を厳しく区別して、たとえ自分が出資し経営するホテルであろうと、自分が私室として使用している菊の間の料金は、きちんと支払っているのであった。
もちろん、他の重役や幹部に対する牽制の意味もあったが、それにしても、一泊十万円とは渋谷の生活の常識からは外れていた。
「何を召しあがる。何でもおっしゃってちょうだい、ルームサービスですぐに取り寄せるから。それよりもまず一杯いかが?」
恵美子は寝室の手前の応接室の壁にあしらったホームバーを指した。
「ホワイトホース、ジョニイウォーカー、デウォーア、何でもあるわよ」
「僕だったらどんなにお金ができても、一泊十万円もする部屋には泊まらないですね」
渋谷は恵美子の問とは的外れのことを言った。
「十万円くらい何よ、あなただってお金ができればきっと費《つか》うわよ。お金ができるとね、ただ高いという理由だけで買うものなのよ。買って得たものは問題ではないの」
「そういうものですかねえ」
渋谷にはおよそ理解しがたい富者の倫理であった。
「そんなことより飲みましょうよ、ね、スコッチのブレンドはいかが? 私、バーテンダーとしても立派に食べていけるだけの腕前なのよ」
恵美子はグラスのへりに赤いキュラソーづけのチェリーをあしらいながら言った。
渋谷は恵美子が手際よくブレンドしてくれたスコッチのカクテルを一気にのどに流しこんだ。
特有の薫臭と共に空き腹に熱湯を注ぎこんだような感覚が、のどから食道、胃へと流れ落ちる。
「いかが?」
「申し分ないですね」
「もう一杯いかが?」
「いただきましょう」
渋谷は進められるままに何杯かグラスを重ねた。空き腹だけに廻りも早い。恵美子も適当に流しこんだらしく、眼瞼がほのかに紅潮してきた。
「渋谷さん」
恵美子が呼んだ。
「は?」
グラスから上げた渋谷の目に、恵美子の薄紅く染まった大柄な顔が大輪の花のように揺れた。
正に爛熟した美しさである。その時、渋谷は急速に廻る酔いの中で、これは早いこと退散しないと面倒なことになるなという微かな予感を抱いた。しかし、あえて彼が腰を上げなかったのは、それだけ室内が豪華で居心地がよく、そして、単純な空腹感を覚えていたからである。
もう今からではどんなに急いでも終電に間に合わない。どうせ遅くなりついでに、恵美子がこれからふるまってくれるというご馳走をいただいてから帰ろう。——そんな意地の汚なさからついに腰を落ちつけてしまったのである。しかし、恵美子は一向にルームサービスを呼ばない。まさかこちらから言い出すわけにもいかないので、つい手前にあるグラスを重ねてしまうことになる。
「渋谷さん」と呼びかけられた時は、相当に酔いが廻っていることが自分でも分った。
「もし、ただだったら泊まる?」
「え?」
恵美子の言葉の意味が掴めなかった渋谷は聞き返した。
「あなたはどんなにお金があっても、眠るだけに十万円は払えないとおっしゃったわ。それなら、ただだったらどうなさる?」
「ただ?」
「そうよ、よかったらここへ泊めてあげるわよ。今夜は大分遅いし、帰ったところで別に待っている人はいないんでしょ?」
「そ、そんな」
「いいのよ、この菊の間は寝室が二つあるの、たまには貴族になったつもりでお寝みなさい。第一、ここなら出勤に二分とかからないわ。明日の朝お寝坊ができるわよ」
寝坊ができるという恵美子の言葉が強く渋谷の心をとらえた。これから渋谷の下宿までタクシーで約千円、電車で約四十分。朝めしぬきにしても七時半には起きなければ間に合わない。
どうせ、明日の朝、また、出て来るのだから今夜泊まってしまってもいいではないか。一晩くらい王侯の気分を味わうのも悪くないだろう。それに月給日間近い今、タクシーの千円は痛い。
渋谷は胸算用しながらも、何よりも怒濤のように押し寄せた猛烈な眠気の前に、心の奥底で帰った方が無難だと主張し続ける声から耳をそむけてしまった。
空腹に廻ったスコッチと連日の疲労がどっと出て、理屈ぬきで眠りたかったのである。
「まあまあげんきんな坊やだこと。ただだと聞いたらとたんに上瞼と下瞼が仲良くなったのね」
恵美子の笑みを含んだ声も、すでに夢うつつであった。
 渋谷夏雄には恋人がいた。といっても渋谷一人が勝手に決めた全く一方的な恋人である。しかし、渋谷はその娘以外のいかなる女とも結婚する意志はなかった。あの娘と一緒になれなければ一生独身を通す。——と一途な彼は思い詰めるほどにその娘に恋していた。
しかし、相手の娘は、渋谷がそれほどまで熱烈に自分に心を傾けていることを知らない。いや、もしかしたら、渋谷夏雄の存在自体すら、空気や水のように心得ているかもしれなかったのである。
娘の名前は星川はるみ、細面で清楚な処女であった。星川社長が、目に入れても痛くないほどに愛している一人娘である。渋谷ははるみのことを心の中で〈アリサ〉と呼んでいた。アンドレ・ジイドの〈狭き門〉に登場する、純潔の象徴のようなヒロインの名前である。ということは、同時にはるみをアリサのように終生純潔の高嶺の花として偶像化していたのだ。
だが、とうとう、渋谷ははるみと接触する機会をもった。久しぶりに早目に退社した渋谷は、ホテルロビイでばったりとはるみに出逢った。
星川社長に何か用事があっての帰りらしい。はるみも父の下に働く技師の一人として渋谷の顔を覚えていてくれた。
何となく連れ立って外へ出た形の二人の前に、心の浮き立つような小豆色の晩春の黄昏が広がっていた。
「城址公園へ行ってみませんか」
文字通り、清水の舞台から飛び降りるような気持になって、渋谷ははるみを誘ってみた。どうせ断わられるであろう、断わられてももともとと、半ば自棄的にかけた誘いであったが、はるみは明るく受けてくれたのである。
あまりにも簡単に自分の不作法で無器用な誘いを受け入れられて、渋谷は最初かえってとまどい、次に狂喜した。
春の城址に新緑が燃えていた。西空の落日の余光を追うようにして彷徨《さまよ》った二人が、本丸をめぐる森のしげみに来た頃は、夕映は完全に消えていた。花の香りが微かに流れてくる木の下闇で二人はふと抱き合ってしまった。
渋谷の烈しく傾斜した心にほだされたのか、それとも、春の甘い夜風に理性を忘れたのか、数時間前までは口もきかなかった二人の若者が激しく抱き合い、強く互いの唇を吸い合ったのである。
渋谷の積極的なことはうなずけるが、それにしても、それを受けるはるみの何という燃え方。
渋谷は思いもかけぬはるみの反応にさらに大胆になった。常の彼ならば考えられないような行為へ彼は移ったのである。
自分の腕の中に完全に預けられているはるみの躰を徐々に青草の上に押し倒し、そしておずおずとスカートの裾に手を廻した。さすがにそこでいったん止まった彼の手は、女の拒絶が感じられないのをいいことに、さらにおずおずと、しかし、確実な速度で、女の躰の中心に向かって指を這い進めて行ったのだ。
それから先がどうなったか、彼は定かに記憶していない。とにかくそれから数分後には二個の男女の躰はある部分を接点にして激しく上下に動いていた。
女の躰とは何と熱く柔らかいのであろう。渋谷は次第に融けそうになる自分の躰を必死に抑えながら、思いがけなく手に入れた恋の果実を貪婪《どんらん》に貪るのであった。
沸騰点は次第に近づいてきた。
「ああ」
女が耐え切れなくなってうめいた。
それははるみの声ではない。渋谷は愕然として目を覚ました。何とそこには全裸に近い恵美子が、自分の躰の上にひたと重なり、唇をかみしめながら必死に快美のうめきを殺しているではないか! しかも、渋谷の躰が、渋谷の意志とは別に、まるで不随意筋が動くように恵美子の躰と動きを共にしていたのである。
 このままいけば躰が溶ける。それはそのまま、はるみに対する冒涜になる。しかし、それにしても、この快美な感覚は! 躰の中心を燃え上がるような熱く柔らかい肉に包まれて、烈しい蕩揺《ゆりかえし》のうちに耐えに耐えた緊張を、すさまじいエネルギーの放出をもって解消したがっている。
それはもはや理屈ではなかった。とにかく、行き着く所まで行かなければ若い躰が承知しなかった。
しかし、渋谷は後一歩の所でそれを耐えた。ギリギリと歯を喰いしばりながら、脳髄の中枢に微かに目覚めていた理性を奮い起こし、本能の奔流の中に旋回する身体に急制動をかけたのである。
絶頂の近くでの不自然な努力、渋谷の目は血走り、全身が震えた。恵美子はそれを渋谷の合図[#「合図」に傍点]だと感ちがいして動作に一層の拍車を加えた。
どんなに耐えても、女にかくも絶妙に動かれては男は耐えきれない。
もはや、渋谷に為せることはただ一つしかなかった。
「ううっ」
渋谷は動物のようなうなりを発すると、渾身の力をこめて自分の上に重なった恵美子の躰を拒《は》ねのけた。密着した二つの躰が離れた瞬間、耐えに耐えてきた渋谷の躰から堰《せき》を切ったように体液がほとばしり出た。
それはベッドカバーを越えて、カーペットの上にまで跳んだ。
急速な弛緩状態の中で渋谷は——よかった——と思った。
少なくともそれ[#「それ」に傍点]は恵美子の躰内に入ることはなかったのだ。ぎりぎりのところで恵美子との交わりはカットできたといえる。
ベッドから仰向けざまに落ちた恵美子は、思うさま両脚を開いたままのあられもない姿でカーペットの上にひっくりかえった。
頂上の近くで突き放された彼女は、それでもなお、自分の躰に加えられた渋谷のおよそ�非協力的な力�を信じられないらしく、そのままの姿でしばらく床の上に横たわっていた。
恵美子の躰の中心を被う豊かな繁みが、ルームライトの中に黒々と濡れて光った。
ようやく自分の状態を悟った恵美子は、次の瞬間に激怒した。今まで、女王の誇りをこのような形で無惨に蹂躙《じゆうりん》した男はいない。
あまりにも激しい怒りで彼女はしばらくは口もきけず、ただ全身でわなわなと震えた。
渋谷はその様子に冷たい一べつを投げると、素早く衣服をまとい、恵美子の前につかつかと進んだ。
恵美子がようやく罵りの言葉を唇から出そうとしたとき、渋谷の右手が信じられないような早さで上がり、左右に一振りずつ、火の出るような痛打を彼女の両頬に浴びせて、そして部屋を出て行った。
恵美子が何を言うひまもなかった。
渋谷の気配が完全に消えた頃になって、恵美子の両眼に涙が噴き出した。くやし涙である。
「ちくしょう、畜生!」
女王にあるまじき汚ない言葉を吐き散らしながら、恵美子は声を上げて泣いた。それは爆発寸前で吐け口を失った欲望が、ヒステリックに感情のバランスを突きくずしたのでもあった。
思うさま泣いた後、彼女は涙に赤くはれた目をきっと上げた。
「この復讐はきっとしなければならないわ」
星電研がホテルナゴヤから追い立てをくったのは、実にその翌日のことであった。
星川社長は明らかにその理由を知りながら、渋谷に対して叱責めいたことは一言も言わなかった。
とりあえず、移転した中区栄町の裏通りの仮事務所でも、渋谷を見る目は常と変らぬ穏やかな光に充ちていた。
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