返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

大都会19

时间: 2020-04-13    进入日语论坛
核心提示:サヤ稼ぎポケットカラーテレビの実験失敗で三百四十二円の高値から、連日ストップ安をつけた星電研は、四日目からカイが殺到して
(单词翻译:双击或拖选)
サヤ稼ぎ

ポケットカラーテレビの実験失敗で三百四十二円の高値から、連日ストップ安をつけた星電研は、四日目からカイが殺到して実験再公開しないうちから反騰をはじめ、八日目には早くも公開実験時の値段に戻していた。
星電研という、ただ一人の技術者の腕にその存立が賭けられている弱小会社の、肝じんのドル箱ともいうべき渋谷のカラーテレビがインチキと判明した今、そんな株は紙屑のはずであった。それなのに売り物が切れるほどに買いまくられているのである。
買い占めるにしても、そんなインチキ会社株を買い占めて何になるのか? およそ、常識では理解できない何かが星電研を買わせている。
ただ事ではない。人々はとまどいながらも現実にぐんぐんと値を飛ばしていく星電研に、じっとしていられなくなり、提灯《ちようちん》をつけるのである。
もともと、総資本一億二千万の過少資本株である。株はたちまち品薄になった。利ザヤ稼ぎの買い占めではなかったから、売り物はいくらでも拾われた。
こうなるとサヤ目当ての提灯筋もなかなか手放さなくなる。売り物は極度に薄くなった。
七月三十日、午後五時、盛川達之介は秘書に一個の電話番号を告げた。秘書は忠実に社長室専用の直通電話をダイヤルして、先方が受話器に出たのを確かめてから、盛川の卓上電話に切り換えた。
「盛川だが、どの位拾えた?」
「今日の後場に三万六千株、合計、四十万株集まりました」
店頭の気配をそのままに伝える送受器の向うから、中年男のさびの利いた声が答えた。
「今日はいくらで終った?」
「五百九十六円です」
「とすると平均三百円ほどで拾えたわけだな」
「はっ」
「ふうん……、よし、明日処理しよう」
「とおっしゃいますと?」
「売ってくれ、全部だ」
「全部!?」
「そうだ、この買い占めは単なるサヤ稼ぎではない。売り物は出るだけ買われる、しかもこちらの指し値でな。しかし、それもテキの手持が過半数に達するまでだ。星電研や銀行筋の不動株が百万株ほどあろう。儂の手許に約四十万株、テキさんがどの程度集めたか知らんが、まだ九十万株は越えていないはずだ。とすれば、過半数をおさえるためには儂の四十万株は是が非でも欲しいところだ。六百円から十円ずつの幅で、十万株ずつ、明日売りに出してくれ」
「かしこまりました」
送受器の向こうで忠実な声があった。電話はそれだけのやりとりで切られた。
盛川は送受器を秘書の手に渡すと、大きく息を吐いた。
買入れ平均コストが三百十五円、明日の売り平均値が六百十五円だから、一株あたり三百円のサヤで、四十万株、約一億二千万円の儲けとなる。
それがわずか二週間の稼ぎであるから悪くなかった。それにこのサヤは会社帳簿に載らない、盛川個人の儲けである。
盛川達之介はかつて岩村元信を気味悪がらせた薄笑いを洩らした。
しかし、彼を薄く笑わせた源は、一億二千万のサヤだけではなかった。
翌日、盛川の目算通り、四十万株は前場のうちに売り値でそっくり拾われてしまった。
「やはりな」
盛川はほくそ笑んだ。これは並大抵の相手ではない。もし、テキに資力がなかったら、四十万も売りあびせれば星電研は暴落してしまっただろう。しかし、テキは平然と買い上がって行った。
盛川にはこの強大な資力をかかえたテキの意図がおおよそ読めてきたのである。買い占めの相手は協電か古川か、住吉のどれかに決まった。そして、それならば思う様、高値で掴ませて、その後で打つ手がある。彼は薄笑いを止められなかった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论