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死体検死医01

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:1 逆さの視点死から生を見る私は医者である。しかし、人の病気は治せない。専門が法医学だからである。変死者の検死や解剖をし
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1 逆さの視点——死から生を見る

私は医者である。しかし、人の病気は治せない。
専門が法医学だからである。変死者の検死や解剖をしたり、事件の鑑定などをする監察医を長いことしていたので、生きた人には縁がなかった。
ものいわぬ死体を丹念に観察していくと、「病気で死んだのではない。殺されたのだ」などと、死体自らが真実を語り出すことがある。
その死体の声を聞き、生前の人権を擁護し、社会秩序を維持するのが監察医であり、法医学である。つまり、死体のお医者さんなのである。
現在は現役を退いたが、事件が発生すると報道関係者からコメントを求められたり、テレビのワイドショーなどで、現地リポーターをやらされたりする。
警察の捜査はこれからなのだが、マスコミは待ったなしである。
凶器は、犯人像は、そして単独犯か、複数犯かと矢継ぎ早の質問に閉口する。知り得た数少ない情報から、法医学的見解を一般論として述べるのだが、後日犯人が逮捕されると、真相は明らかになるので、いい加減なコメントは許されない。
バラバラ事件などでは、死体すら見たことがない人々が、コマ切れになった人体と知らされるわけだから、驚くのは当然である。さらに乳房や外陰部も切り取られ、男か女かもわからない。そのむごたらしさから、犯人像は残忍で怨《えん》恨《こん》のからんだ変質者だろうと推理され、報道される。
しかし私はそうは思わない。
犯人の保身の心理が、そうさせていると推理する。
つまり犯人は人を殺しておきながら、自分は警察に捕まりたくない。助かりたい。そのために必死になってバラバラにする。そうすれば運びやすいし、捨てやすい。さらには遺体は誰なのか、年齢も性別すらもわかりにくくなる。
被害者の身元がわからなければ、加害者である自分に捜査の手は及ばない。だから、かくれみのとして、死体をバラしているのである。
しかし、女が一人で短い時間に、このようにバラバラにできるのかという質問が、たびたびある。
できるか、できないかではなく、やってしまわなければ、自分が捕まってしまう。火事場の馬鹿力なのだと私は答える。
三十四年間、警察官と一緒に事件に深くかかわってきた体験からの意見だから、説得力がある。
たしかに怨恨は、殺しの動機にはなっている。許し難い屈辱を受け、その怨《うら》みを晴らそうと、殺人事件が起こることは多い。しかし殺人が行われてしまえば、行動はそれで終わりなのである。あとは、その死体をどうやって、わからぬように処分すべきかを、焦りの中で考え、結果としてバラすことになったのである。
死んでいるのにも拘《かかわ》らず、怨恨のために死体を切り刻んでいるのではない。また死体を切り刻むことに快感を感ずるようなケースは、稀《まれ》である。
事件は人生ドラマそのものなので、医学以外に多くのものを学びとることができる。
 たとえば、父親の子殺し事件などでは、考えさせられることが多い。
若い父親の場合と、年老いた父親のケースを対比すると、動機の違い、人間性の違いの大きさに驚く。
遊興費がかさみ、サラ金に手を出し返済に困って小学生の娘に多額の生命保険をかけ、山中で絞殺。しかも誘《ゆう》拐《かい》されたように偽装し、おまけに捜索願まで出して完全犯罪を装った事件があった。
あるいは愛人ができ、新しい生活をしたいがために、邪魔になる妻子を殺害。証拠を隠滅し、アリバイ工作などをして完全犯罪を目論《もくろ》んだケースもあった。
このように若い父親の子殺しは、その背景に金や女が絡んでいるケースが多い。
ところが年老いた父親の場合はまったく違う。
夫婦で三十七歳になる寝たきりのわが子(重度の身体障害者)の世話をしてきたが、妻は病に倒れ入院。七十六歳の父親は一人では子供の世話はできない。老い先短い老父は、わが子の将来を案じて、わびながら子を殺した。
老父は神経痛で不自由な足を引きずりながら、自首したのである。
同じようなケースは他にもある。
わが子に重度の身体障害者がいて、行末を案じ、父親は息子を絞殺した。父親は医師であったから、それなりの手順を踏んでいる。息子も父の言葉を理解し、なすがままにしていたという。
まずエーテルをかがせ、意識不明にしたあと絞殺したのである。父親はすぐ睡眠剤を服用して、自殺を図ったが、帰宅した妻に発見され、一命をとりとめた。
自首した父親は警察に、妻は三十年間わが子につきっきりになり、食事の世話から下の世話に没頭してきた、私とこの子がいなければ、妻は残された短い人生を、自分の時間としてつかうことができるであろうと考えての決行である、と語ったのである。
どちらも殺人事件ではあるが、老父の場合は子を思う親の切実な気持ちが伝わってくる。
愛があり、ヒューマニズムがあふれている。
検死の現場でこのようなつらく、厳しい現実に直面すると、命の尊さ、生きるという意義を考えさせられる。
死から生を見る。
死者の側に立った法医学。
同じものを、逆さの視点で観察すると、そこに新しい発見がある。
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