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死体検死医03

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:3 性犯罪食糧事情が極度に悪化していた戦後の日本、とくに都会での生活者はその日の糧に困窮し、雑草まで食糧にしていた。人々
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3 性犯罪

食糧事情が極度に悪化していた戦後の日本、とくに都会での生活者はその日の糧に困窮し、雑草まで食糧にしていた。
人々はリュックサックを背負って郊外の農家などを目当てに、食糧の調達に出かけた。米がなければ麦、サツマイモ、大根、野菜、粟《あわ》、大豆など家畜の餌《えさ》のようなものでも、当座の飢えをしのぐためには仕方なかった。
しかし農家でも食糧は不足していて、入手は困難だった。
都内の主要駅は買い出しの主婦達であふれていた。そこを舞台に中年男が、女性に言葉巧みに売手を紹介するからと、山林などへ誘い込み、いきなり暴行扼《やく》殺《さつ》(手指で首を絞め殺す)するという事件が相次いで起こった。
これが小平義雄(当時四十一歳)事件である。
昭和二十年五月から、翌年八月逮捕されるまでの一年三か月の間に、十人の若い女性を次々に暴行殺害していたのである。
昭和四十六年の大久保清事件も、同じであった。
当時私は、東京都の監察医をしていた。四十二歳の働き盛りで、泳げる人がなぜ溺《おぼ》れるのかという、不思議な現象を解明しようと、懸命であった。
監察医は都内二十三区に発生した変死事件を、検死、解剖して警察に医学的に協力し、社会秩序の維持と都民の公衆衛生の向上に貢献するのが仕事である。
大久保清事件は、群馬県の事件であったから、東京都監察医の管轄外で出動することはなかったが、短い期間にくりかえされたこの異常な事件は、法医学的に非常に興味があったので、その成り行きを注意深く見守っていた。
大久保は、若い女性をドライブに誘い、八人を次々に暴行殺害していたのである。逮捕に至るまでの経過を簡単にまとめると、
昭和三十年七月、大久保が十九歳のとき、十七歳の女子高校生に道を尋ねるふりをして近づき、人里離れたところで強《ごう》姦《かん》した。すぐ警察に捕まったが、初犯であったため、懲役一年六か月、執行猶予三年と比較的軽い刑であった。
ところが同年十二月、十七歳の女性をオートバイに乗せ、松林に連れ込み突然顔面を殴打し、姦《かん》淫《いん》しようとしたが騒がれ、駆けつけた農夫に捕まった。この事件は、未遂に終わったが懲役二年。執行猶予中であったため刑期が加算されて、三年六か月の実刑になった。
大久保は刑に服し、三十四年十二月に出所する。二十四歳になっていた。
翌三十五年四月に、今度は二十歳の女性を言葉巧みに、下宿に連れ込み姦淫しようとしたが騒がれ、家主が駆けつけてことなきを得たが、下宿と称したのは実は自分の家であり、家主は両親であった。相手方と示談となって、告訴は取り下げられた。
それから二年後の三十七年五月、二十七歳になった大久保は、二十歳の女性と結婚する。
家業は牛乳販売店で、昼間は配達などで真面目に働いていたが、午後四時頃には仕事からあがり、入浴して小奇麗に身仕度すると、夕方からどこへともなく出かけて行く日が多くなった。大久保は共産党関連の仕事なので、秘密だから内容は話せないといっていたが、やがて妻にも本当のことがわかってしまった。実は複数の女性と交際していたのである。このとき大久保は二人の子供を持つ父親になっていた。
四十年六月、十五歳の少年が牛乳の空きびん二本を持ち去ろうとしたのを見つけた大久保は、二万円を出せ、応じなければ泥棒として警察へ突き出すと脅迫する。たまたま少年の兄が大久保と同業者であった。大久保はさらに七万三千円の示談書を書かせようと、少年の家族を脅迫したので、少年側は警察へ届け出た。
恐喝及び恐喝未遂事件として大久保は懲役一年、執行猶予三年となった。
この裁判で、妻は初めて夫の前科を知ったのである。それまで順調だった商売も、同業者から白眼視され、客からも疎まれ廃業の憂目にあうのである。
翌四十一年十二月に十六歳の少女を強姦。
ついで四十二年二月、三十二歳の大久保は三十歳の女性を強姦した。この女性とは顔見知りであったので、すぐに逮捕され、懲役三年六か月の刑となったが、これも執行猶予中であったため、四年六か月の実刑となり、府中刑務所にはいった。
ここまでは、まだ大久保清のプロローグにすぎず、肝心の連続殺人事件は、これから幕をあけるのである。
昭和四十六年三月二十日、三十六歳の大久保は府中刑務所を仮出所した。
この日から逮捕される五月十三日までの五十四日間に、大久保清は、日本犯罪史上稀《まれ》に見る大罪を重ねたのである。
ルパシカをきて、乗用車にのり、美術の教師と称して若い女性に声をかけ、助手席に同乗させてドライブをする。人目につかない山道に入ると、突然顔を殴打し、みぞおちを突き、暴行後絞殺(紐などで首を絞めて殺すこと)、遺体は穴を掘って埋めるという凶悪きわまりない犯行を、くりかえしたのである。
順に記述すると、昭和四十六年、
三月三十一日 十七歳女性  暴行殺害後、
土中に埋める
四月六日   十七歳女性    〃
四月十一日  十九歳女性  六日間のケガ
四月十七日  十九歳女性  暴行殺害後、
土中に埋める
四月十八日  十七歳女性    〃
四月二十七日 十六歳女性    〃
五月三日   十八歳女性    〃
五月九日   二十一歳女性   〃
五月十日   二十一歳女性   〃
五月十三日に逮捕され、やがてその全《ぜん》貌《ぼう》が明らかになると、日本中は驚いた。
逮捕された大久保は取調官に、
「俺は人間じゃない。血も涙もない、冷血動物だ」
と語ったという。
裁判後、大久保清には死刑の判決が下され、執行されている。
これらの事件を、単なる性犯罪と見ることはできないかもしれないが、性犯罪の一番の特徴は、くりかえし行われることである。
そして手口は、言葉巧みに女性に接近し、相手を安心させ、人目につかない所へ誘い込む。性行為後に、殺害するというパターンである。
しかし、小平義雄の場合は行為中に絞め殺していた。通常の性行為では満足できず、異性の首を絞め、呼吸困難を起こすことによって、女性は痙《けい》攣《れん》を起こす。この痙攣が小平にとってたまらない快感であったのだ。いわゆるサディズムの傾向があったといわれている。
男性生殖器の構造と機能は、女性とはまったく違っている。とくに機能上の違いを女性はあまり理解していないようである。
体温よりやや低い温度に保たれた陰のうの中の精巣(睾《こう》丸《がん》)で精子はつくられるが、つくられた精子は、温かい腹《ふく》腔《くう》内に移動し、膀《ぼう》胱《こう》の後下方にある精管膨大部に貯蔵される。若い人ほど精子の生産能力は活発なので、精管膨大部はすぐに精液で一杯になってくる。膀胱に尿がたまると尿意を催すと同じように、精液がたまると男は、セックスがしたくなる。ここが女性と決定的に違う男性の生理なのである。
しかし、通常の男は理性でこれをコントロールできるから、問題にはならないが、たまたまコントロールのきかない男がいる。この少数の人達が性犯罪を起こしているのである。精液が満タンになった危険な男が、夜な夜な街を徘《はい》徊《かい》しているから、男の生理を知っている父親は娘の門限を口うるさくいうのである。
女性を見ると衝動的に襲いかかりたくなる。この男の生理を、女性も十分知っておくべきだ。そして騒がれたり、顔を見られたりすると、行為後、男は保身のために女性を殺害することになる。それがなければ、殺さないケースも多い。
婦女暴行などで懲役刑を受けると、刑務所には女性はいないから、真面目に務め、刑期を終えて出所する。しかし男は、性懲りもなく婦女暴行をくりかえしてしまう場合が多いのである。刑務所で十分な反省と更正が行われるのであろうが、それはあくまでも精神上のことで、肉体的生理的現象まで修正はできないから、禁欲生活から解放された途端、男は女性を求めて爆発する。
そのくりかえしが、性犯罪の特徴でもある。
女性側から見れば、こんな危険なことはない。性犯罪者を野放しにしているのだから、法律的にもくりかえさない方法を考えるべきであると思う。
去勢(睾丸摘出)手術をすれば、女性を襲うことはなくなる。しかし、人道上許されることではない。
そこで、アメリカでは女性ホルモン注射を性犯罪者に義務づけるという珍しい判決があった。
婦女暴行罪に問われた被告に「性衝動を抑える女性ホルモンを注射し続ければ、懲役刑を軽くする」というものであった。去勢判決として論議を呼んだ。
被告は最高懲役九十九年という長い刑務所暮らしをするよりも、週一回病院に出頭して化学合成した女性ホルモン注射を打ち続けたほうがよいと考え、注射と執行猶予十年の刑を選択したのである。
裁判官は、犯罪に走る性衝動が除去されれば、被告本人にとっても、女性側にとっても、また社会全般にとっても利益があると、考えた上での判決であった。
最近カリフォルニア州でも、子供への性犯罪者に薬物注射による去勢法案が可決され、話題になっている。
十三歳未満の子供に対する性犯罪者が、仮釈放される場合には、自発的に去勢手術を受けるか、定期的に性的衝動を抑える薬物注射をしなければならないというものである。初犯の場合は、裁判官の判断で免除されることもあるが、再犯者は免除されないという。
このようにきびしい法律が作られた背景には、いうまでもなく性犯罪がくりかえされている現状がある。カリフォルニアの統計では、その再犯率は九〇パーセントと驚くべき高率であった。わが国での再犯率はどうなのか知らないが、かなり高いと予測される。
ホルモン注射の判決は、法律に規定のない残酷な刑であり、憲法違反の疑いがあると批判された。
ある時代、ある社会にあった、窃盗犯は手首を切り落とす、のぞき犯は目をつぶすといった刑罰と同じで、現代社会に通用するものではないと。
男の性衝動は、解剖学的構造から見ても、女とはまったく違うし、衝動は理性によって抑制できるものだが、コントロールできないものは、本能がむき出しだから、刑罰をもってしても修正することはできない。
裁判官ならずとも、私も医師の立場から考えて、性犯罪は去勢のようなことをしない限り、防げないと思っている。
犯罪者の人権を考えれば、そんな無茶なことはできないだろうが、くりかえし行われている犯行によって、平穏に暮らしている女性の被害者が、増えることも事実である。
その人達の人権を蔑《ないがし》ろにしてもよいのだろうか。
被害者が自分であったり、身内であったとしたら、このくりかえされる性犯罪を、現状のまま放置せざるを得ないと、手を拱《こまね》いて見ていることはできないであろう。
罪だけを裁いて、危険人物を野放しにしては、十分な対応とは思えない。
はてさて、裁くことの難しさを痛感する。
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