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死体検死医11

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:11 自分のからだ人体の最小単位は細胞である。日頃考えてもみない自分のからだの成り立ちを見直してみると、実に興味深いものが
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11 自分のからだ

人体の最小単位は細胞である。
日頃考えてもみない自分のからだの成り立ちを見直してみると、実に興味深いものがある。
肉眼では見ることのできないミクロの、きわめて小さな存在が細胞で、これが約六十兆集まって人体を構成している。その細胞が集団となって一つの組織を形成する。さらに組織が集まって肝臓とか腎《じん》臓《ぞう》、胃、腸などという器官となり、同じ器官がある目的のために集合して系統をつくる。骨格系統、筋肉系統、循環器系統、消化器系統など十系統が集まって、人体はできあがっている。
人間のからだを建築物にたとえれば、具体的でわかりやすい。
それでは、ビルの最小単位は何でしょうか。考えてください。
そう、一粒の砂(細胞)なのです。砂が集まってコンクリートブロック(組織)をつくり、これが集まって部屋、廊下、トイレ、台所など(器官)をつくり、部屋系統、水道系統、電気系統などがあつまって、ビルは完成する。
つまり人間のからだは、細胞の集合体である。社会の機構にも似ている。
運動して汗をかくと、のどが渇き水が欲しくなる。これはからだの中の個々の細胞が働いて、エネルギーを出し水分が失われるから、集合体の主に水を飲めと訴えているのである。コップ一杯の水を飲むと、腸から水が吸収され、からだの中の細胞に水分を補給することができるので、細胞たちは満足する。満足した細胞たちはOKサインを出すので、主は水を飲むのをやめるのである。
空腹になったり、眠くなったりする人間の行動は、実は個々の細胞が要求しているからで、これを満足させるために、主は行動しているようなものである。だから細胞が要求しないのに、暴飲暴食をすれば腹痛を起こしたり、嘔《おう》吐《と》したり、下痢したりする。
アルコール依存症などはそのよい例である。
細胞の中のミトコンドリアは、アセトアルデヒド脱水素酵素を生産している。酒に強い人は、酵素活性が強いのでアルコールを肝臓でアルデヒドに分解したあと、さらに水と酢酸に分解してしまうから、酔わない。ところが酒に弱い人は、酵素活性が弱いのでアルコールをアルデヒドには分解できるが、それ以上の分解ができないから、血液中にアルデヒドが出回る。これが酒酔いの症状である。
この酵素活性の強弱は、親譲りの遺伝で決まっている。
酒好きな人は、連日このような代謝をくりかえしているうちに、細胞はそのような働きを好み、習慣性を持つようになる。そうなるとアルコールが体内に入ってこないと、細胞たちは調子が悪くなり不満をいい、主に酒を飲めと訴える。それにこたえて飲酒すると、細胞たちは調子を取り戻す。そんなことをくりかえしていると、アルコール依存症になって脂肪肝から肝硬変と病気は進行して、寿命を縮めてしまう。つまり細胞のいいなりになっているからである。そう考えると、自分はいったいなんなのだ。いたずらに細胞にふり回されているのではなく、理性で彼らをコントロールし、自分の中の細胞と上手につき合うのが、本来の自分であり、健康を保つ秘《ひ》訣《けつ》であることが、わかってくるであろう。
また細胞には再生能力があるから、こわれても分裂増殖をくりかえし、修復する。
日焼けしてひと皮むけても、下から新しい皮膚ができてくるし、外傷を受けても、骨折をしても適当な治療をすれば、そのうちに治って機能も回復する。これは欠損した細胞を別の細胞が分裂増殖して補うからで、毛がのび爪《つめ》がのびるのと同じである。
ところが神経細胞だけは例外で、再生能力がないという重大な特性をもっている。
病気や外傷で神経細胞がダメージを受けると、一生その補充はつかない。われわれ人間は約百四十億の神経細胞を持って、生まれてくるといわれているが、なんらかのアクシデントによって、神経細胞のいくつかが壊れると、その人は補充がきかないから、欠落したまま残る余生を送らねばならない。また年をとるともの忘れがひどくなるのも、脳の動脈硬化によって、多くの神経細胞が欠損したためと考えられる。
こうしてみると、臓器の中で一番大切なのは、脳だということがわかる。大切だから周囲は、頭《とう》蓋《がい》骨《こつ》という堅い骨でガードされている。その次に大切な臓器は心臓と肺である。これらはあばら骨によってガードされ、あまり重要でない臓器はお腹に納められ、皮膚や筋肉に保護されるだけで、骨のガードはない。臓器はそれなりにランク付けされて、収納されているのである。
その昔、お腹の胃腸や肝臓たちが、創造の神にお願いに行った。肝臓や胃腸がなければ人間は生きられない。われわれを軽視しないで、脳や心臓と同じように骨でガードしてほしいと。しかし、創造の神は偉かった。君達のいい分はよくわかるが、大切だからといって、お腹まで骨でガードしたならば、カニのようなあるいはカブト虫のようなぎこちない動きしかできなくなる。骨のガードなしに自由に動けるほうが、将来君達は地球を制覇し、人類としてのすばらしい文化を築くことができるのだからと、納得させた。
これは私のつくり話であるが、創造の神がすばらしいのは、このことばかりではない。
男と女が愛し合い、求め合うのは細胞というミクロの中に、謎《なぞ》が秘められている。
人間の細胞の中にある遺伝情報をもつ染色体は、四十六個(常染色体四十四個、性染色体二個、計四十六個であるが、性染色体は男XY、女XXである)ある。
ところが性細胞(生殖細胞)である精子は、減数分裂して染色体は二十三個と半分しか持ってない。卵子も同様である。この状態では精子も卵子も半端もので一人前の細胞ではないから、分裂増殖することはできない。だから精子と卵子は求め合い、合体して染色体が四十六個の一人前の細胞になりたがっているのである。
性の決定も減数分裂した染色体の中に、原因がある。
精子は常染色体二十二個と性染色体一個Yをもつ(22+Y)ものと、Xをもつ(22+X)ものに二分されている。卵子はつねに(22+X)染色体であるから、この卵子(22+X)に(22+Y)をもつ精子が合体すれば(44+Y)の受精卵ができ、男の子が生まれてくる。(コ十X)の精子が合体すれば、女の子の誕生になる。
できあがった一個の受精卵は、細胞分裂をくりかえし、十か月後には増殖して六十兆の細胞をもった一人の生命誕生になるのである。
半端もの同士が求め合う行為が男と女の営みであり、装飾されて恋とか愛とか呼ばれている。
理屈ではそうなのだが、これを度外視した事件があった。
 第二次世界大戦が終わって間もなく、日本の性風俗が乱れ、東京に男《だん》娼《しよう》が横行したころの話である。
彼らの中には睾《こう》丸《がん》や陰茎を切断し、女性のように形成手術をしたものがいた。しかし、このような手術は医療といえないと、論争になった。
病気を治したいのと同じように、女性になりたいのだから、手術は医療であると主張したが、奇形でもない健康な男性がそのような手術をするのは、医療ではないと退けられた。
つまり性転換手術は、優生保護法第二十八条(禁止)〔何人もこの法律の規定による場合の外、故なく生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行ってはならない〕あるいは医師法第一条(医師の任務)〔医師は、医療及び保健指導を掌《つかさど》ることによって、公衆衛生の向上及び、増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする〕これらの法律の精神に反する行為とされたのである。
以来、わが国では性転換はタブーになった。
しかし、最近新しい動きが出てきた。性別同一性障害という考え方である。
生物学的、形態学的に異常はないが、からだと心の性が一致しない状態をいい、具体的にはからだは男なのだが、精神的には女で、自分の男性器に嫌悪感があって、登校拒否になったり、精神科の治療を受けるなど、あるいは女性ホルモンを注射するなどして、女としての生活を続けている。できることなら早く、性転換したいとの希望をもっている。
逆に女のからだなのだが、精神的に男である性別同一性障害もある。
このことについて、現在論議中で結論は出ていないが、待てない人々は性転換を容認する国へ行き、手術を受けているという。
このように、医療とは何かを見直していくと、いろいろな問題が浮かび上がってくる。
たとえば豊胸、隆鼻、二重眼瞼など美容整形手術は健康保険は適用されないが、合法とされている。
しかし、医師が行った手術に、オウム事件で明らかになった指紋消し手術がある。
これは医療とはいえない。
指紋の照合ができないようにするための、いわば証拠隠しにほかならない。たのまれても、医師がやるべき行為ではない。
指先の指紋を切除し消したとしても、犯行の現場には、その周辺の手掌紋もつくはずである。だから本当に指紋を消そうとするならば、掌全体の手掌紋を消さなければ意味はない。医師でありながら、法医学を知らないから、素人的発想で手術している。
やる方もやられる側も、滑《こつ》稽《けい》としかいいようがない。
また同じような手術に、ヤクザの小指詰めがある。
本来はあやまちの責任を取り、反省の意味をこめて、誓いの証《あか》しに自らの小指を切り落としたのである。最近はこのようなことはなくなったが、一時期恐くて自分で指を切り落とせないからと、医者に行き麻酔をかけて切断手術をしてもらったケースがあった。
これも医療ではない。
私は法律家ではないので、くわしいことはわからないが、医療として美容整形手術は認められるが、性転換手術は違法となる。それでは指紋消しやヤクザの小指詰めはどうなるかというと、前例はないしどのような法律に違反するのかもわからない。
しかし、これは法律の問題ではない。医療人としての倫理、哲学に反することはやってはならない。やってはならないことは、やってはならないのである。
性転換に付随してもうひとつの問題がある。それは手術を受けた人の戸籍がどうなるのかという点である。現在の日本では性別の変更は不可とされている。
性転換というと、男が女にあるいは逆に女が男になると思いがちであるが、実は男の睾丸を除去し、外陰部を女性器のように形成するだけで、卵巣を移植するわけではない。細胞の核の中にある、染色体に変更が生じてもいないのである。医学的には男が女になったのではなく、睾丸も卵巣も持たない、いわば中性になっただけなのである。性転換ではなく、中性手術であることを社会に知らしめるべきである。
本人は女になったつもりかもしれないが、実は中性なのである。そのことを自覚したとき、中性としての新たな悩みがつきまとうのではないだろうか。
もって生まれた宿命に逆らうことは、むずかしいことなのである。
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