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死体検死医12

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:12 阪神大震災阪神大震災もおさまり、警察では死亡した人々の死因統計をとったところ、神戸市の統計より総数が百〜二百名少ない
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12 阪神大震災

阪神大震災もおさまり、警察では死亡した人々の死因統計をとったところ、神戸市の統計より総数が百〜二百名少ないことがわかった。調査し直したところ、瓦《が》礫《れき》の下敷きになり遺体となって発見された人々は、変死体として警察に届けられ検死を受けたのだが、下敷き状態で救助され入院加療中に、圧《あつ》挫《ざ》症候群を起こして十数日後に死亡したケースは、病院のドクターが警察に変死届をせずに、死亡診断書を発行していた。これが市役所の戸籍係に受理され、火葬埋葬許可証が交付されていたため、警察の検死を受けることなく葬られていたことがわかった。
圧挫(挫滅)症候群というのは、医学的には珍しい用語ではない。やや広い範囲にわたって骨格筋が挫滅出血すると、その部位からミオグロビン(筋肉中にあるヘモグロビンに似たヘムタンパク質で、筋肉内に酸素を貯蔵する役目をしている)が遊離して、下位尿細管を障害し、腎《じん》機能不全を起こし死亡する症候を圧挫症候群Crush syndromeといっている。患者は初めにショック症状を起こして吐《はき》気《け》、嘔《おう》吐《と》、乏尿、無尿となり、予後不良で大半は二週間以内に死亡する。
瓦環の下敷きになり、全身に打撲傷を負い圧挫症候群を起こし、腎不全となって死亡したのであるから、自分がもっていた病気で死亡した内因死ではない。長いこと入院し、治療を受けていたとしても、外力の作用で死に至った外因死であるから、死亡した時点で変死扱いになるのである。
圧挫症候群は瓦礫の下敷きに限らず、殴る蹴《け》るのシゴキやリンチ暴行でも起こるのである。頭には脳があるからさけよう、臀《でん》部《ぶ》は筋肉だけだからいいだろうと、攻撃を加えた大学のクラブ活動でのシゴキ事件があった。素人考えで臀部は大丈夫と思ったのだろう。しかし、警部の広範囲な筋肉内出血のため、腎不全から尿毒症、圧挫症候群となって死に至った。
教育するのに頭であろうが、臀部であろうが殴る蹴るはいけない。暴力をもってすれば、教育的効果はなくなり、怨《うら》み、反感しか残らない。母がだだっ子のお尻《しり》を二〜三回たたくのは、愛のムチとして許されるだろう。しかし、度を越すと医学的にも危険であり、子に愛は伝わらない。
医師法第二十一条(異状死体等の届出義務)
「医師は、死体または妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届出なければならない」
加えて神戸市は監察医制度のある地域である。日本では東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の五大都市にのみ監察医制度が施行されている。東京都は監察医務院という独立庁舎を有し、年中無休態勢で都内の変死体に対応しているが、その他の地域では大学の医学部の法医学教室のドクターが嘱託監察医という形で、この制度を実施しているにすぎない。法律は、
死体解剖保存法第八条(監察医制度)
「政令で定める地を管轄する都道府県知事は、その地域内における伝染病、中毒又は災害により死亡した疑いのある死体、その他死因の明らかでない死体について、その死因を明らかにするため監察医を置き、これに検案をさせ、検案によっても死因の判明しない場合には解剖させることができる。以下略す」
医師は学生時代、法医学の講義を受けているから、このことは知っているはずである。しかし、実際に治療をしている患者が死亡すると、主治医は自分の責任において死亡診断書を書くのが当然の義務と思ってしまう。
それは間違いなのである。これは医療行政の問題だから、医師ばかりではなく、看護婦も医療事務に従事する者も、そのことを知って対応する必要があろう。また医療人のみならず、一般の人々も外因死はなぜ変死扱いになるのかを理解しておくべきである。
たとえば頭部外傷で入院した場合、医師は患者を診療しているから、脳《のう》挫《ざ》傷《しよう》と診断はつく。だから死亡診断書を発行してもよいかというと、そうはいかないのである。
なぜならば、どうして頭部に打撲傷が加わったのか、その原因はドクターにはわからない。喧《けん》嘩《か》で殴られたのか、酔って路上に転倒したのか、交通事故なのか、あるいは飛び降り自殺なのか、いろいろ考えられる。入院時に付添人が飛び降り自殺だと語っていたから、ドクターが勝手に自殺と判断して死亡診断書を発行し、これが戸籍係に受理されるようなことがまかり通るとするならば、日本には殺人事件はなくなってしまう。
その人の頭にはなぜ打撲が加わったのかは、医師が決めることではない、他人の秘密に立ち入って捜査のできる、警察官の役目である。だから外因死はすべて、変死届をする法律になっている。
警察は外力がどのように加わったのかを捜査し、事件の真相を明らかにして、医師の診断と合わせ、矛盾がないことを確かめるのが検視である。
これら外因死に限ったことではなく、病死のような場合でも不審、不安の感じられる死に方は、すべて警察に変死届をすればよいので、全死亡の一五パーセントが変死扱いになっている。
監察医が仕事として行っている検死、解剖は、衛生行政であるからつまるところ厚生省指導である。ところが死亡診断書を取り扱う役所の戸籍係は法務省管轄になるため、医師が発行した死亡診断書が適正に処理されているかというと、いささかの疑問が生ずる。
たて割り行政の欠陥が見えてくる。
前述の阪神大震災の、圧挫症候群による死亡例では、変死届をせずに医師は死亡診断書を発行し、市役所の戸籍係はこれを受理して火葬埋葬許可証を交付していた。そのため、検視をせずに死体は葬りさられていたのである。
これは刑法第一九二条「検視を経ずして変死者を葬りたる者は、五〇円以下の罰金又は、科料に処す」(罰金等臨時措置法により、金額は二〇〇倍される)に違反していると同時に、医師法第二十一条にも違反しているし、また神戸市は監察医制度が実施されている地域であるから、市自身が死体解剖保存法第八条の運用を、あやまったことになる。
大災害時の混乱とはいえ、医師ばかりではなく戸籍係も、受理すべきではない死亡診断書を受理し、火葬埋葬許可証を交付してしまったのである。
東京都二十三区内では医師も、戸籍係もトレーニングされているから、このような事例は起こらない。
個人の人権を擁護し、社会秩序を維持するための検視制度、監察医制度であるから、地域差があってはならないし、役所がその運用をあやまるようなことは、絶対に許されない。
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