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死体検死医15

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:15 アンフォゲッタブル外国映画の試写会に招かれた。映画を見るのは実に三十年ぶりであった。二十数個のシートが並ぶ小さい試写
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15 アンフォゲッタブル

外国映画の試写会に招かれた。
映画を見るのは実に三十年ぶりであった。
二十数個のシートが並ぶ小さい試写室で、映画評論家、雑誌記者などが座っていた。ワイドスクリーンに加え、音響効果がすばらしい。
アンフォゲッタブル(記憶移植)というタイトルのアメリカ映画であった。見終わったら感想をのべ、それが宣伝につかわれるという、大変な役目を持たされていた。
画面はいきなり「ドドーン」というピストルの発射音からはじまり、目前に殺人事件が展開された。その迫力は見るものの視覚、聴覚をとらえて、画面の中に引きずり込んでしまう。
妻が殺され、夫である検視官が疑われる。彼は冤《えん》罪《ざい》を晴らすため、真犯人探しに懸命になる。
そんなとき、あるドクターの研究に注目する。マウスの実験なのだが、あるマウスの脳脊《せき》髄《ずい》液《えき》を採取し、それに開発した副《ふく》腎《じん》皮《ひ》質《しつ》ホルモンを混合して別のマウスに注射すると、先のマウスの体験が、注射されたマウスによみがえって、見えてくるというものであった。
人体実験はしていないが、その注射を続けると心臓障害から、死の危険が伴うというものであった。
彼は冤罪をはらすため、あえて危険をおかし、解剖後に保存された資料室から、妻の脳脊髄液を盗み出し、ドクターの研究室からも副腎皮質ホルモンを盗んで混合し、自分の体に静脈注射したのである。
間もなく妻が殺される直前の情景がすさまじいばかりに再現される。それをくりかえし、彼は薬の副作用で心臓障害を起こすが、何とかのり越え、ついに真犯人をつきとめるという物語であった。
緊張の二時間で、正に記憶移植アンフォゲッタブルであった。
 十年前の監察医時代、私も同じようなことを考えていた。
死者は事件の目撃者。眼底の網膜に最後に見た犯人の姿が映っている。その残像を取り出せないか。
網膜にあるロドプシンという感光色素が、明るさによって結合したり、分離したりして像を感じとっている。そのロドプシンの分布をキャッチできれば、残像を取り出すことは可能であろう。
そんなことを考え、実験してみようと計画しているうちに、時間切れになり、現役を退いてしまった。脳脊髄液注射よりもはるかに科学的であり、実現の可能性もあるアイディアである。
映画を見終えて、この発想は医者ではないと思った。
解剖学を知っている医者はからだの仕組みを知っているから、記憶を取り出そうと思うときには、大脳の記憶中枢を移植すればよいと考える。しかし神経細胞は他の細胞と違って、再生不能という特性がある。外傷を受けると神経細胞は破壊されるし、また脳の酸素欠乏(脳の血液循環の停止)が三〜四分続くと、神経細胞は破壊されて、再生復活することはない。だから脳の移植は、アイディアとしてはおもしろいのだが実現性はない。それでは脳をとりまく脳脊髄液ならば、と思うかもしれないが、脳脊髄液は血液と同じで、脳に酸素や栄養を供給したり、逆に脳に発生した老廃物を吸収したりして代謝をしているだけで、からだを動かしたり思考したり記憶するなどの、脳本来の仕事をしているわけではないから、これに副腎皮質ホルモンを混合したとしても、記憶をよみがえらせるような作用は発揮しないのである。
医者はからだの理屈を知っているから、理詰めで考え、考えつめたところで止まっている。ところが素人は、理屈にとらわれないだけに発想が豊かだ。脳脊髄液だけでは単純すぎると思い、副腎皮質ホルモンという何やらむずかしそうなエキスと混合すれば、死者の記憶をよみがえらせることができるのではないかと考える。たとえ不可能であっても、発想はおもしろいからと、そこにとどまらずに、さらに発展して物語を書き、アンフォゲッタブルという映画まで作ってしまったのである。
驚きであり、そのバイタリティに感心させられた。
専門家が素人の発想をあなどってはならない。この飛躍した考えが、学問の発展には必要であり、人間性を豊かにしているのは確かである。
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