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死体検死医16

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:16 墜落は自殺か事故か監察医はいろいろな変死者の検死や解剖を仕事としているので、刑事事件はもちろんのこと民事事件や交通事
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16 墜落は自殺か事故か

監察医はいろいろな変死者の検死や解剖を仕事としているので、刑事事件はもちろんのこと民事事件や交通事故などのトラブルなどで、鑑定証人として法廷に立つことが多い。
ある日、東京地裁で裁判の証人尋問が終わり、帰るべくエレベーターを待っていたときのことである。
「先生ありがとうございました。先生の証言で裁判の流れは、当方にかなり有利に展開するものと思います。ありがとうございました」
と、担当の弁護士さんがわざわざ追いかけてきて、私にお礼をいったのである。さらに、
「あのう!! もう一つ別件で先生に相談したい事件をかかえているので、是非話を聞いていただけませんか。後日連絡をとらせていただきますが」
いいにくそうに話を続けた。
「あっ、そうですか。私にできることならば」
型どおりに挨《あい》拶《さつ》をして、その場は別れた。
それから三週間、約束したとおり弁護士さんは、私をたずねてきた。
裁判の経過を示す書類は、風《ふ》呂《ろ》敷《しき》包み一杯であった。
「実は私の父が、ある日突然下半身が不自由になり、九州の田舎で病院に入院しました。患者が多いので、狭い病室には六つのベツドが置かれ、そのうちに父は窓ぎわに押しやられたのです。
真夏で暑い日が続いていました。夜中は冷房が切られるので、窓は全開にし、尿意に苦しみながら、眠れない夜を過していたようです。翌早朝、病院わきに死亡状態で倒れているパジャマ姿の男性が発見されました。その病院の裏通りは公道に接し、塀や柵《さく》はありません。
知らせを受けて当直の看護婦がとび出してきました。『うちの患者さんだ』とすぐわかったので救急治療室に収容し、治療をしたが間に合わなかったそうです。それが四階病室に入院中の、私の父でした。
病室からの転落だったのです。
私は長男でご存知のように東京で弁護士をしていますが、知らせを受けてその日の午後に、九州の郷里に帰りました。病院に直行すると、病室のベッドは窓にぴったりとくっつき、しかもその高さは窓よりわずかに低い程度で、これは危険だと直感しました。
ところが病院と警察は、早々と飛び降り自殺と断定して処理していたのです。
どうしても納得がいきません。
高校を卒業して郷里を離れ、東京に出て大学に入りました。学費から生活費まで親の世話になり、今の自分があります。長いあいだ離れて生活していますが、親と子の精神的つながりは濃いと思います。自殺をするような父ではないのです。
納得できぬまま、悲しみを引きずって生きるのもつらく、かといって法廷で争っても父は帰ってきません」
 弁護士であるがゆえに息子さんは迷ったという。
それなのに、何も知らない他人が安易に、自殺だと結論を下すことは許せない。それが怒りとなって結局、病院側に安全管理上の手落ちがあったとして、損害賠償を求め裁判を起こすことにしたのである。
飛び降り自殺か、墜落事故死かの区別が裁判の争点になっているのだが、先生のご経験から、いかがなものか、鑑定をしてもらいたいというのであった。
弁護士さんも、他人の弁護と違って身内のしかも父親の事件であるから、つい感情が入る。法廷のやりとりの中で父親が侮辱されたような場面になると、つい興奮して相手を殴りつけたくなるような衝動にかられ、弁護がしにくくなるというのである。
医者にも同じことがいえる。
身内の死期がせまり、主治医に呼び出されて、あと数日ですから会わせたい人には、会わせてあげてくださいと宣告される。
何をいっているんだ。この藪《やぶ》医者め!!
死ぬような状態ではないではないか。家族として医者として、身内は愛でつながっているから、はじめから死ぬはずではないと思っているし、死を認めない。ところが数日後、主治医の言葉どおりになった。
客観的に観察できれば、わかることなのだが、身内の場合にはそれができない。冷静になれないのは、法廷の弁護士と同じなのだ。
職業は違うが、お互いにわかり合えるものがあった。
むずかしい事件だと思ったが、私は監察医を長いことやっていたので、死体所見と現場の状況から、死亡時の様子をある程度推定することはできるが、解剖はされているのかと聞きかえした。ところが地方のことで、解剖はしていないとのことであった。
資料は入院中のカルテと、救急治療室でのレントゲン写真を含む記録と、死亡診断書であるという。私が知りたい死体の情報を、それらの資料から読みとることができるかどうか、不安があったが、拝見させていただいた上で、協力できるかどうかご返事させていただくということになった。
資料から全体の外傷がおおざっぱにわかったが、写真が添付されていないので、記載されている皮下出血、擦過傷などがどのようなものなのか、こまかい点についてはわからない。しかし、ある程度の見通しはついたので、鑑定を引き受けることにした。
裁判所へ出向いて、法廷で鑑定することを宣誓した。また裁判官の墜落現場の検証にも立ち会うなどして、法的手順を踏み、鑑定に入った。
本人が倒れていたところは、病院の建物から一・九メートル離れ、建物にほぼ平行した姿勢で、移動した形跡はない。そこがほぼ墜落した着地点と考えられた。
からだの左側面を地面につけ、うつ伏せの姿勢であったという。
下半身が麻《ま》痺《ひ》し動かない患者さんが、飛び降り自殺した場合には、どのような手段をとったにせよ、建物に沿って落下するので、建物から一・九メートルも離れた地点に落下することは考えにくい。また落下の途中、障害物にからだの一部が当たって、着地点が大きく変動するような場合には、障害物との接触外傷が死体に見られるものであるが、そのような外傷もなく、また障害物も見当たらない。
つまり死体所見と状況から、飛び降り自殺は考えにくいのである。
それでは、墜落事故を前提に考えると、四階から地面まで約十メートルの距離を落下する間に、体位を変換することは少ないので、建物から一・九メートルも離れて着地するには、窓外に出た際、本人に何らかの加速度がついていなければならないのである。加速度なしでは、せいぜい一・〇メートル以内に落下してしまう。
そこで加速度をもって窓外に出るためには、どのようなことが想定されるか。
下半身麻痺した人が窓ぎわに接したベッドの上で、仰《ぎよう》臥《が》位《い》から起き上がろうと、右手で足元のベッドの柵に取りつけてあった紐《ひも》を手前に引きよせる。半ば起き上がって、左手掌を窓枠に置き上半身を支えようとした際、右手がすべるかあるいは左手がすべって紐をはなし、加速度がついた状態で、上半身が窓外に飛び出し墜落したのではないだろうか。
あるいはまた、窓ぎわのベッドの上で上半身を起こし、左手掌を窓枠にかけ、からだを支えながらカーテンの開閉など、何らかの作業中に、上半身を支えていた左手がすべって、からだに加速度がつき、窓外に飛び出してしまったなどが考えられる。
落下の際、からだは横向きの水平位で、上半身がやや下、下半身がやや上の姿勢で、からだの右側面が上方にあり、左側面を下方に向けたうつ伏せに近い状態で、着地したものと推定される。着地の際左手はかばい手となって伸ばしていたもので、一番先に左手掌面が、ついで左骨盤部が地面に強く接触し、骨盤骨折を起こした。次の瞬間、からだの右側面が地面にたたきつけられるように回旋し、着地して、右第二〜十肋《ろつ》骨《こつ》骨折を生じ、肺損傷も形成されたものと思われる。その際、右側腹部を強打しているので、内臓破裂と腹《ふく》腔《くう》内出血を生じている。
しかし顔と頭部は、両手のかばい手によって保護されていたので、強い衝撃が加わって頭《ず》蓋《がい》骨《こつ》骨折を生じているが、頭皮に損傷はないので頭部がコンクリート路面のような硬い物体に直接当たっていないことがわかる。
死を覚悟した飛び降り自殺の場合には、無防備でしかもかばいだてなどしないから、顔や頭部の損傷が著しく、変形していることが多いものである。この事実を見ても、自殺の可能性は否定できる。
さらに参考資料として、当人の書かれた日記があった。
こまめに書いているが、自殺をほのめかすような記載はないし、家族、知人、病院関係者などの供述にも、自殺を予感していたような言葉は出ていない。
かつて老人の自殺について研究したことがあるが、昨日、今日いやなことがあったから自殺をするような人はいない。自殺を決行するには、長い間苦悩し続け、ためらったあげくに、自らの命を絶っている。その間、周囲の人々に何らかの救いを求めるような相談なり、話しかけがある。あるいは、予告やサインを発するなどして、同情なり思いとどまるようなきっかけを模索するものである。
まったく予告もなしに、老人が突然自殺行動に走ることは考えにくい。したがって周囲の人々が本人の苦悩を予知し、自殺行動を憂慮していたならば、家族はもちろん、病院側も何らかの対策を取っていたと思われるが、そのような様子は鑑定資料の中から見出せなかった。
これらのことから、本人に自殺思考や行動はなかったのではないかと、推定されるのである。
できあがった鑑定書を読んだ弁護士さんは、目撃者のいない当時の墜落の様子を、死体所見と現場の状況からこのように理論的に組み立て、自殺は考えにくいとした結論に、まずは驚き、満足し、そして感謝した。
喜ぶそのありさまはもはや弁護士ではなく、息子の姿そのものであった。
やがて裁判は、相手方が私の考え方、結論に対して反対尋問をする番になった。
しかし、厳しい反論もできぬまま裁判は提訴から丸四年、私の鑑定が全面採用され、原告側勝訴の判決となった。
病院側は控訴したが、結果はかわらなかった。
入院患者が寝ている窓から転落死したのでは、病院のメンツはまるつぶれで、責任は重い。目撃者がいないからといって、家族の事情聴取もないまま、病院の都合のいいように自殺と断定し処理をしたのでは、人権無視もはなはだしい。
事実をもっともよく知っているのは、当事者の遺体である。
解剖し、所見を分析して、いい残した言葉を聞き出すのが、法医学である。
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