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死体検死医18

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:18 隠された死因一軒家で一人暮らしの老人が焼死した。解剖をしていたときのことである。焼死体特有の闘士型を呈していた。とこ
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18 隠された死因

一軒家で一人暮らしの老人が焼死した。
解剖をしていたときのことである。焼死体特有の闘士型を呈していた。
ところが、血液は暗赤色流動性であり、また気管支粘膜には炭粉の吸引が見られず、とても焼死体といえる死体所見ではなかった。
警察は事件がらみの殺人、放火を疑っていた。
生存中に火災に巻き込まれて焼死したとすれば、煙を吸い込んでいるはずだから、煙に含まれる炭粉が気管支粘膜に付着して、黒くなっていなければならない。また煙と一緒に一酸化炭素を吸うので、血中CO‐Hb(一酸化炭素ヘモグロビン)も増えて、血液の色調は鮮紅色になっていなければならない。
しかし、本件にはそのような所見は見当たらない。火災発生時にはすでに死亡していたと考えられる。
やはり殺人事件か。
立ち会いの警察官らは緊張した。
警察官は焼死と溺《でき》死《し》には“注意しろ”といわれている。
焼死はからだが焼け焦げるから、索溝や創傷など死因特有の変化が焼却されている。
溺死は、泳げない人を背後から水中に突き落とせばよいので、殺害の手段方法が簡単で、しかもからだに凶器の作用した痕《こん》跡《せき》を残さない。
焼死も溺死も、そういう意味では完全犯罪が可能なやり方である。だからこのようなケースの検死や解剖の立ち会いには、警察官はことのほか慎重なのである。
解剖は始まったばかりである。まだ脳、心、肺その他の臓器の検索が残っている。はやる気持ちを抑えながら、解剖を進めていくと、心臓は四二〇グラムと肥大し、栄養血管である冠状動脈にやや高度の動脈硬化がみられた。とくに左心室前壁から側壁にかけての心筋に、古い瘢《はん》痕《こん》壊《え》死《し》巣が見られ、かなり以前から心《しん》筋《きん》梗《こう》塞《そく》の発作をくりかえしていることがわかった。その他に頸《けい》部《ぶ》圧迫による絞殺を思わせるような甲状軟骨、気管軟骨、舌骨の骨折などはなく、その周囲の出血もない。また心臓以外の脳、肺、肝、腎《じん》などにも病変はなかった。虚血性の心臓発作が死因であっても、おかしくない状態であった。
外部はまっ黒く焼け焦げていたが、内部はそれほど崩壊していなかった。
解剖が終わりに近づいたとき、待ちかねたように立ち会いの警察官から、
「先生、死因は?」
と質問がとんだ。
この解剖所見を殺人後の放火と読むか、病気の発作で死亡後に火災になったものと読むべきか。その判断は重大であった。
岐路に立たされた私は、
「ウム……そうですね」
と間をとった。
というのは、私にはこんな経験があったからである。
私が監察医になりたてのころ、解剖中胸を開けたら、肺に大きな病巣がみつかったため、死因を肺《はい》癌《がん》と判定した。ところが、数日後、化学検査の結果が出てきたのを見て驚いた。何と胃内容から青酸カリが検出されたのである。この人は自分が肺癌であることを知り、悲観して服毒自殺を図ったのであった。
殺人事件ではなかったから、ことなきを得たが、監察医の判断がいかに重大であるかを認識させられた。そんなことが一瞬、私の頭の中をよぎったのだ。
間違ってはならない。
血液、胃内容、尿などの毒物検査の結果を待たねば結論は出せませんが、と前置きして、現時点でいえることは、死後に焼かれた状態だから火災前に死亡していたことになるが、外力が作用した痕跡が見当たらないので、殺人事件ではないようだ。心臓の栄養血管である冠状動脈硬化が高度に見られるから、病的発作として心筋梗塞の可能性が高いのではないか、と答えた。
「事件性はないのですね」
と立会官は念をおした。結論は「化学検査待ち」と先送りにして、解剖は終わった。
一週間後、化学検査データが揃《そろ》った。もちろん血中一酸化炭素は陰性であった。さらには青酸塩や有《ゆう》機《き》燐《りん》系農薬などの毒物反応はなく、睡眠剤なども検出されなかった。
しかし、血中アルコール濃度三・二五mg/ml、尿中アルコール濃度二・九四mg/ml、胃内容中のアルコール濃度二・二三mg/mlが検出された。これは中等度酩《めい》酊《てい》の状態だと考えられる。
化学検査、それに現場の状況などを合わせ、総合的に事件の流れを考察すると、酒好きな一人暮らしの老人が、飲酒酩酊中に心筋梗塞の発作を起こし急死した。
火災発生については、私の知るところではないが、発作時に喫煙中のタバコが布団にでも燃え移り、火災になったのではないだろうか。
私は化学データを眺めながら、捜査主任に電話で見解を伝えた。
捜査上も物《もの》盗《と》りや放火の状況は出ていないとのことで、このケースの事件性はなく、心筋梗塞(病死)で落着した。
 その他にも、焼死の解剖で思い悩んだことがある。
昭和五十五年頃であった。
気管内の煤《ばい》煙《えん》吸引は少なく、血中CO‐Hb濃度も二〇パーセント前後と少ない。この程度であれば一酸化炭素中毒といっても、たいしたことはないから、火災の中から逃げ出せないはずはないのだが、炭化状の焼死体になっている。
このような解剖が、このところ目立って多くなっていたので、あるとき薬化学の担当者と話し合いをもった。
「他に死因となるような病気は、ないのですか」
薬化学の担当者は、いきなり私にそう質問してきた。私は、
「血中CO‐Hbだけではなく、もう少し検査範囲をひろげてみては?」
と自分のことはさて置き、相手方にデータを狂わす原因があるのではないかと、お互いが責め合うやりとりになった。自分本位に気づいて、その場は笑って別れたが、数か月後薬化学担当者が、私の部屋にやってきた。
「あれから十数件の焼死体の検査をくわしくやって、わかりました。焼死体の血液中から、青酸が検出されたのです。
以前は焼死といえば、火災の中で煙を吸って一酸化炭素中毒になり、意識を失い逃げられずに焼死したりしたわけですから、血中CO‐Hbは六〇パーセント以上検出されていました。しかし、最近は先生からご指摘があったようにCO‐Hbの含有量が少ない焼死体が増えているので、気になって、検査範囲を広げていろいろ調べたところ、血液中から青酸が検出されたのです。しかし胃内容の青酸は陰性なので、服毒自殺ではなく、青酸ガスの吸入と考えられます。
どうも新建材を使った近代建築物の火災では、くすぶった煙の中に有毒ガスが発生し、その中に青酸ガスもあるといわれておりますので、それではないでしょうか」
納得できる説明であり、すばらしい発見でもあった。
実験したデータを学会に発表すべきだといったら、薬化学担当者は外国の文献コピーをさし出した。新建材が燃焼する際には、有毒ガスが発生するという論文であった。
自分の勉強不足を思いしらされた。
かつては火事の際、煙の充満する家の中に入り、子供を救出してきたなどとの武勇伝を聞いたものだが、煙の中で二〜三回呼吸をしたとしても、血中一酸化炭素が高濃度になることはなかったから、このような行動ができたのである。しかし、現代の新建材の火災では、煙だけだからと中に入っていったら、大変である。有毒ガスが充満しているから、一回呼吸しただけで意識を失い、昏《こん》倒《とう》して帰らぬ人になってしまうのだ。
新建材の出現により、住宅環境は一変し、時代の進展とともに社会生活全般が向上して、暮らしは豊かになってきた。それにともない、焼死も煙を吸って一酸化炭素中毒になり、動けなくなって逃げられず焼死するだけではなくなった。新建材の燃焼時に有毒ガスが発生し、これを吸って昏倒、焼死体になるケースが増えてきているのである。日々の研鑽を怠ることはできない。
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