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死体検死医20

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:20 浅知恵ノンフィクションとはいえ事件ものを書いていると、犯人に真似される心配はないかとよく質問される。しかし、私はそう
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20 浅知恵

ノンフィクションとはいえ事件ものを書いていると、犯人に真似される心配はないかとよく質問される。
しかし、私はそうは思わない。
事実現職のとき、犯人が推理小説に赤線をひき熟読して、そっくり真似したような事件を何度か経験している。
あるいは新聞などに、新しい手口の犯罪が掲載されたりすると、類似の犯罪が増えるという。
これらはあくまで真似であるから、上手に真似たとしても、そのとおりに事は運ばない。
たとえば、真似した犯行の途中で、遠くからピーポ、ピーポとパトカーのサイレンが聞こえたりすると、一瞬驚き犯人は身をひそめる。その精神的動揺が、犯行の手順を狂わせてしまうこともある。
また、犯行前にくりかえし頭の中で予行演習をしたが、いざ実行してみると、相手方が思いもよらぬ反応を示して、筋書きどおりにいかないこともある。予定が突然狂ってしまうと、心に余裕がないから、あせって対応がメチャメチャになってしまうこともある。
真似は所《しよ》詮《せん》真似でしかなく、どこかに尻尾《しつぽ》を出しているのが、専門家の眼には見えてくるから、心配はしていない。
犯人は殺人を隠すため、散乱した現場を整えて、あたかも病死のように偽装することはできる。しかし、死体そのものを偽装工作することはできない。
 一人暮らしの老女が、布団の中で死んでいた。
木造二階建てのアパートの一室に住み、残る七部屋を貸していた。発見者はアパートの住人である。近くに住む老女の妹に連絡がとられた。
老女は、ふだんから病弱で医者通いをしていたので、かかりつけの医師が呼ばれた。十日ぐらい前に診察を受けに来たときは元気でしたから、たぶん病気の発作でしょうが、念のため警察へ届けたほうがよいでしょう。医師はそういって帰った。
間もなく警察が調べにやってきた。
寝姿に乱れはなく、室内も荒らされた様子はない。昨夜の死亡と思われた。鑑識係はその様子をカメラに収めるため、部屋の隅に立った。靴下が濡《ぬ》れた。
「係長!! 畳がぬれていますよ」
「お茶でもこぼしたのだろう」
係長は、そういいながら、手のひらで畳を触った。
顔にうっ血がみられたが、結局のところ事件性はなく、心臓発作の病死と判断された。
それから四〜五時間経っ た夕方、後片づけをしていた妹が、預金通帳や印鑑がないことに気づき警察に連絡した。警察はあわてて捜査をやり直すことになった。
顔面の軽度のうっ血と眼《がん》瞼《けん》結膜下にわずかに溢《いつ》血《けつ》点《てん》がみられ、急病死あるいは窒息死の可能性も考えられ、遺体は犯罪を前提とした司法解剖に付されることになった。
ぬれた畳のへりも剥《は》ぎ取られ、検査に回された。
その夜遅く帰宅したアパートの住人の一人である中年の男が重要参考人として調べを受けることになった。
男は「知らない」「関係ない」としらを切っていたが、畳がぬれていたこと、男の部屋からぬれたズボンが発見されたこと、またその日のうちに老女の預金が引き出されていたことなどを追及され、ついに白状した。
家賃の滞納で家主の老女に厳しく催促され、カーッとなって殺害。騒がれてはならないと、老女を押し倒し、顔に座布団を押しあてて馬のりになり、布団の上から顔を強く手で圧迫したら、ぐったりして死んだようだった。現金や預金通帳などを盗み、部屋を出ようとしたら、自分のズボンがぬれているのに気がついた。
死亡時に老女が失禁したのだ。尿は畳にしみ込んだ。早速服を脱がせ寝巻きに着替えさせて、布団に寝かせた。そうすればただの病死にみられ、事件にはならないだろうと思い、偽装工作をしたのであった。
雑《ぞう》巾《きん》で畳を拭《ふ》き、老女の着衣は丸めて洗濯機の中に押し込んだ。犯人は自分の部屋に戻り、ズボンをはき替えて家を飛び出した。
警察は畳と老女の着衣から尿斑の検査をし、さらに男の部屋のズボンも押収して犯行の裏付けをとるべく、素早い対応をしていた。
尿斑の検査では、尿道、膀《ぼう》胱《こう》、腎《じん》臓《ぞう》などの上皮細胞を顕微鏡で見ることができる。そこから、DNA鑑定も可能である。さらには尿素、尿酸などの検出もできるのである。
おしっことはいえ、科学捜査には重要な資料となる。
この事件は、布団の中で寝姿で死亡していれば病死のように見えるので、窒息死させてから様子を整えたのである。
状況の中から死因をピックアップすれば、犯人の思う壺に誘導されてしまう。
専門家は状況にとらわれず、死因を死体所見の中からピックアップするので、たとえ寝姿であっても、窒息死の事実がわかるのである。
現場の状況を軽視しているのではない。
死体所見と状況が一致しないケースには、嘘《うそ》が隠されていることがある。
また、殺害後、死体を隠《いん》蔽《ぺい》するのは容易なことではない。
よくあるケースとして、死体を深い湖や海に投棄すれば、水底に沈んで犯行をくらますことができると考えて、実行する犯人がいる。
しかし、殺害後水中に投棄したのでは、死体は水に沈まない。なぜならば、肺にはたくさんの空気が入って浮袋になっているからだが、そこまで知らなくても、確実に沈めようと死体に錘《おもり》をつけて沈めることはある。
石やコンクリートブロックなどをつけ、沈ませる。ある程度の時間は沈んでいるが、永久に沈んだままというわけにはいかない。やがてからだが腐り、腐敗ガスが充満すると、土左衛門という形で、巨人様化してくる。すると、もはや錘は錘の役をなさず、死体は錘をつけたまま軽がると水面に浮き上がってくる。そこまで知っている犯人はいないから、結局事件は発覚してしまう。
私は法医学が専門であり、その中でも溺《でき》死《し》の研究が主であるから、どのくらい錘をつければ、死体が腐っても浮き上がらないか知っている。もちろん教えられない。
遺体と錘の重さをプラスすると、永久に沈ませるためにはかなりの重さになるので、一人ではできない。単独犯か、複数犯かはすぐわかってしまう。
また強力な錘をつけ、発見されてもわからないようにと、死体を箱に入れてコンクリートを流し込み封入した事件もあった。ダンプカーをつかって岸壁から港内に沈めたのだが、結局は発覚してしまった。
数年前には医師が妻子を殺害し、海に投棄した事件があった。
犯人は医者だから、学生時代に法医学を学んでおり、ある程度のことは知っている。だから錘をつけたのだろうが、腐敗するとどうなるかまでは頭が回らず、知らなかったのだろう。
この計算違いが、発見の糸口になっている。
 停泊中の船内でけんかがあり、相手を殺してしまった。真夜中のことである。
犯人は廃棄処分にする壊れた古い冷蔵庫に死体を縛りつけて、東京湾に投棄した。
冷蔵庫は重いから沈むだろうと実行したのだが、翌朝東京湾に浮遊する冷蔵庫が発見された。なんとこれに遺体が縛りつけられていたのである。
たしかに冷蔵庫は重いのだが、水には浮く。
冷蔵庫は、外気を遮断し一定の温度を保たなければならないから、壁は二重構造になっていて間に空気が入っている。だから、空気中では重いが、水には浮くのである。
笑い話のような本当の事件はほかにもたくさんある。
それにしても専門家をあざむくことはできない。
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