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死体検死医22

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:22 骨物語都内でもときどき白骨が発見されることがある。新築ビル工事の際に発見されることが多く、検死してみると複数人の骨で
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22 骨物語

都内でもときどき白骨が発見されることがある。新築ビル工事の際に発見されることが多く、検死してみると複数人の骨であり、しかも一部は黒色に焼け焦げていることや、古さの程度などから、昭和二十年東京大空襲時の焼死体と判断され、殺人死体遺棄を想定していた警察も安《あん》堵《ど》する。
白骨はもちろん、指一本でも人間のものであれば、人体部分検案といって警察は変死体扱いにして、監察医が検死をすることになっている。バラバラ事件の一部分ではないかと危《き》惧《ぐ》するからである。
それならば、どこまでが人体の一部分になるのか。はっきりとした区別はない。たとえば爪《つめ》のついた指先の部分は人体の部分で、爪だけが発見された場合は、人体の部分としないなどという線引きはないのである。その指先の部分は、工場での作業中にあやまって切り落としたもので、本人が生きている場合もあるだろうし、本当にバラバラ事件の一部分であることもあるだろう。爪の場合も同じである。そう考えるとむずかしいのだが、常識的にケースバイケースで判断しているのである。
白骨はからだの軟部組織である皮膚、筋肉そして内臓までが腐敗融解して脱落し、骨だけになって山林の中から、あるいは土中から発掘されたりする。
警察は直ちに捜査を開始し、身元の確認を急ぐ。
骨の鑑定は、法医学者らに依頼することになる。
白骨はからだの残《ざん》骸《がい》であるが、語るべき言葉をもっている。耳を傾ければそこに、意外な物語が隠されていることがある。
鑑定人はまず、人骨か獣骨かということから検索を始める。比較的新しい骨の場合には血清学的な検査で人骨か獣骨かの区別をつける。さらには性別、年齢、人種の別などを明らかにし、個人を特定していく。同時に死後経過時間の推定、死因の解明などを通して、事件の真相に迫っていく。
鑑定時に一体分の骨がそろっていればよいのだが、たった一本の骨の場合もあるし、さらに小さい骨のかけら(骨片)の場合もある。鑑定というものは、提示された資料からわかるものをすべて読み取り、警察の事件解明に医学的協力をするものである。
たとえば頭《とう》蓋《がい》骨《こつ》の場合は、成人男性では前頭部の額部は、ジャンプ台のような急斜面になっている場合が多く、眉《まゆ》毛《げ》のあたりに相当する前頭部の眉弓はやや隆起し、後頭骨の隆起も突出気味になっていて、頭蓋骨全体はゴツゴツした感じである。ところが女性の頭蓋骨は、額部は切り立つ断《だん》崖《がい》絶壁のようにきびしい傾斜になり、いわゆるオデコさんの形状を呈している。眉弓の隆起はなく、のっぺらで、後頭骨の隆起もなだらかになっており、頭蓋骨全体は丸みを帯びてやさしい感じがする。このように、頭蓋骨の性差は比較的はっきりしている。
骨盤の場合、妊娠、分《ぶん》娩《べん》をする女性は骨盤腔が全体的に浅く、骨盤上口、下口が大きい。また左右の恥骨結合の下につくる恥骨下角は鈍角(七〇〜九〇度)で、仙骨の弯曲度は小さく、尾骨は動きやすい。男性は女性とは逆で、骨盤腔が深く、骨盤上口、下口は小さい。また恥骨下角は鋭角(五〇〜六〇度)で、仙骨の弯曲度は大きく、尾骨は動かない。このように骨盤の性差は著しい。
下《か》顎《がく》骨《こつ》でも男性は前面の頤隆起、頤結節がやや突出気味で、下顎を上から見て少しオーバーに表現すると型を呈している。しかし女性はやや丸みを帯びてU型である。
また、このように性差が比較的はっきりした骨でなくても、鑑定は可能である。たとえば骨一本の場合でも、骨長の計測などから、西洋人か日本人かの区別ができる研究データもあり、対比させれば日本人か西洋人か、男か女か、あるいは年齢などおおよそのことはわかってくる。ただし、日本人は戦前、戦中派の体型と戦後の豊かな時代に生まれ育った若い人たちの体型が、栄養の状態のせいで大きく違っているので、年代によって古いデータと新しいデータを使い分けなくてはならない。
また頭蓋骨が発見されたときなどは、スーパーインポーズという手法もある。頭蓋骨の主とおぼしき人の顔写真があれば、その写真と同じ方向に頭蓋骨を向けて写真を撮り、画像の大きさを同じにして、顔写真を頭蓋骨の写真と重ねあわせる。もしも顔写真に頭蓋骨の輪郭がピッタリ一致すれば、その頭蓋骨は顔写真と同一人物であるといえるのである。この手法は個人の特定にしばしば使われている。
さらに骨から死因を検索することができる場合もある。たとえば絞殺や扼《やく》殺《さつ》の際には、舌骨が折れたり、甲状軟骨、気管軟骨の骨折を見ることがある。だから発掘の際にはその可能性も考え、骨を破損しないようていねいに掘り出さねばならない。万が一発掘中に折ってしまうと、死因の判断を狂わすことになりかねないのである。とくに舌骨などはU字型を呈しているうえに、小さく細い骨で非常に折れやすいため、細心の注意が必要である。遺跡の発掘作業のようにしなければならない。
その他、からだの組織中には血液型物質が分泌され含まれているので、骨からでも血液型は判定できる。またあらゆる細胞の核の中には、染色体やDNAが含まれているので、骨から性別がわかるし、DNAからは多くの遺伝情報を読みとることができるのである。
ある日、年配の婦人から、田舎の本家の墓に埋葬されている夫の遺骨を、新しく自分たちが購入した東京の墓に移したいのだが力を借してほしい、と相談を受けた。
長いこと監察医をしてきたが、このような相談は初めてである。殺人事件、病気・他殺・不明の事件、轢《ひ》き逃げ事件、胎児の遺棄事件あるいは医療事故などを司法解剖したり、鑑定することはあっても、一つの墓に埋葬された複数人の遺骨の中から、特定の人の骨を選択する作業というのは、初めてであった。
手に負えないと思いながらも、とりあえず話を聞いてみることにした。
婦人は七十代半ばであったが矍《かく》鑠《しやく》としていた。夫は三十八歳で肺結核でなくなったという。男の子が一人いて、もう四十代。社会に出て成功し、親のためにと東京に墓をつくってくれた。そこで田舎の本家の墓に眠っている夫の遺骨を移したいというのであった。
むずかしい。無理だからおことわりしようと思ったが、参考までにその墓にはどのような方々が、何人埋葬されているのかを聞くことにした。
亡き夫のほかに、七十代でなくなられた夫のご両親と、夫の妹さんが十四歳で病死され計四人の遺骨が納められているとのことであった。
老人と少女と三十八歳でなくなられたご主人。コントラストがはっきりしていた。
骨学的には、老人の骨は脆《もろ》く、少女の骨は軟骨組織を多く含んで未成熟である。ところが、成人男子の骨組織はしっかりと完成しているから、その識別は比較的容易であると考えて、不安はあったのだが引き受けることにした。
依頼人である老婦人と息子さんに同行して列車に乗った。海の見える小高い丘に墓地はあった。
一度埋葬した墓地を勝手に発掘することはできない。知事の許可を取り、僧侶に提示し、墓前でそれなりのセレモニーが営まれた後、墓石の下に眠る遺骨を取り出した。
火葬され、細かい骨片になっていたが、背骨の椎体や骨盤の骨の一部、大《だい》腿《たい》骨《こつ》頭など比較的かたくて丈夫な骨は、ほぼ原形をとどめて見ることができた。歯もあった。
婦人は傍《かたわ》らに黙って立って、私の作業を眺めていた。
たくさんある骨片の中から、形状のはっきりした骨を十数個選び出し、亡きご主人様のものと思われますと、手を合わせて一礼した。
婦人と息子さんも納得してくれた。
婦人は持参した骨《こつ》壺《つぼ》に遺骨を納め終わるとそれを胸に抱き、頬《ほお》寄せて嗚《お》咽《えつ》した。
老婦人の心の中で、夫は生き続けていたのだろう。そして今、再会を実感したのかもしれない。
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