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死体は生きている02

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:不 倫 日常生活の中で、自分の能力を越えた霊感のような予知能力が働くことがある。私が監察医になって間もないころの話である
(单词翻译:双击或拖选)
不 倫
 
 日常生活の中で、自分の能力を越えた霊感のような予知能力が働くことがある。
私が監察医になって間もないころの話である。
木工場で夜勤をしていた男が、材木の倒れる音がしたので見《み》廻《まわ》りに行き、立て直した。しかしどういうわけか、再び材木は倒れた。すぐ立て直しにいって来たのだったが、またもや倒れたのである。風もないのに同じ材木が三度も続けて倒れたことに、男は不吉を感じ胸騒ぎを覚えた。
虫の知らせとでもいうのだろうか。急に家のことが心配になり、会社をぬけ出して自宅の様子を見に行った。夜の十一時を少し過ぎていた。自転車でとばして十五分。普段なら一家は寝ている時刻である。しかし、今夜は電燈が点《とも》っていた。
玄関を開けようとしたが、鍵《かぎ》がかかっている。裏の勝手口へと歩みかけたとき、家の中の灯が消えた。
はてな? と男は思った。
勝手口も開かない。こじ開けて中へ入ろうとすると、妻が寝巻き姿で入ってくる夫を拒むように立ちはだかった。
何かある? そう思った夫は、妻を突きとばして座敷の方へ入っていった。
電気をつけると布団が一つ敷いてあり、枕《まくら》が二つ並んでいる。自分は夜勤なのに。夫は家の中を見渡した。子供達は壁ぎわの二段ベッドで寝ていた。
なにやら人の気配を感じた。玄関の暗がりをみると、背広姿の見知らぬ男がうずくまっている。
ことここに至っては、どうするすべもない。妻とその男はうなだれるように座敷に出て来て、ひれ伏して不義を詫《わ》び始めた。
間《ま》男《おとこ》をしていたのである。今でいう妻の不倫である。
カァーッとなった夫は、いきなり妻の頬《ほお》へ往復びんたをくらわした。それでもあきたらず、蹴《け》とばしたのである。
左脇《わき》腹《ばら》付近であった。間もなく妻は腹痛を訴えた。様子がおかしいので夫は、救急車を呼び入院させた。顔色が蒼《そう》白《はく》となり、口唇はチアノーゼを呈し、血圧は計れぬほど低下していた。
医師は左脇腹を蹴られたための脾《ひ》臓《ぞう》破裂の疑いがあると診断。緊急手術の用意をはじめたが、ときすでに遅く患者は死亡してしまった。
検視のため、検事も現場に来ていた。病室での監察医の検死には検視官、捜査一課、鑑識課、所轄警察署員など大勢の担当官が立会っていた。先ず所轄署の担当警部補から事件の概要についての説明があり、つづいて入院から死亡までの経過について、主治医の説明があった。事件の全容をふまえた上で検死をしてみると、死《し》斑《はん》は少なく貧血状で、注射針痕《こん》以外に外傷は見当らない。夫の暴力に問題があるように思われた。
結局、検事指揮による司法解剖が行われることになった。死因はやはり、脾臓破裂による腹《ふく》腔《くう》内出血であった。
不倫がもとで母は死亡し、父は傷害致死で囚われの身となれば、残された二人の幼な児達は一体どうなるのだろう。
虫の知らせ。それは偶然であったかも知れないが、結末はかなしかった。
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