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死体は生きている05

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:安易な対応 自転車にのり、交差点を直進しようとペダルを踏み込んだそのとき、右側の道路から進行してきたトラックと軽く接触し
(单词翻译:双击或拖选)
安易な対応
 
 自転車にのり、交差点を直進しようとペダルを踏み込んだそのとき、右側の道路から進行してきたトラックと軽く接触し、自転車にのったまま男は路上に転倒した。運転手は倒れた男にかけより、手をさしのべて「大丈夫ですか」と声をかけた。六十近い職人風の男は、打撲した頭をなぜながら、「大したことはない」と立ち上った。少し酒の匂《にお》いがした。夜の十時すぎ、人通りは少ない。運転手はとりあえず被害者を医者にみせなくてはいけないと思い、腕をかかえようとしたが、男は再び「大丈夫」とそれをふりはらった。
二人は歩いて近くの病院へ出向いた。手足の軽い擦過傷と頭部に小さいこぶがあった。薬をつけ、包帯を巻いて大したことはないからと帰された。
警察へ届けるほどの事故ではなかったので、両者は簡単な話し合いの後別れた。
男は妻や娘に内緒で酒を飲み、その上交通事故を起こしたことがわかっては、具合が悪いと思ったのだろう、巻いてあった包帯を取り自転車にのって帰宅した。家族はすでにねていた。翌朝、妻が大いびきをかいてねている夫を起こしたが、返事がない。様子がおかしいので救急車を要請。病院の検査で頭《ず》蓋《がい》骨《こつ》亀裂骨折、脳硬膜外血《けつ》腫《しゆ》が判明した。
さらに夫の作業ズボンのポケットから包帯、診察券それに運送会社の名刺などが出て来て、昨夜交通事故に遭ったことがわかった。しかし手術は間に合わず死亡した。運送会社の被害者に対する対応は機敏であり、かつ丁重であった。
検死に行くと家族の人達は、交通事故というよりは、最初に診察した病院の医師が、大したことはないと簡単な手当をしただけで帰した、その対応の悪さをしきりに指摘していた。無理からぬことである。しかしこのようなケースは決して稀ではない。初めは転んで打った外傷の痛みだけである。一〜二時間たつと骨折部からの出血が少しずつ頭蓋内にたまって、五十 《グ》瓦《ラム》位になると、脳を圧迫しほろ酔いのようなふらふら歩きが出現する。本人も無論、周囲の人も酒のせいだろうとしか思わない。
そのころには帰宅し、就寝中であったりすると、誰れもが異常には気付かずじまいである。その中に頭蓋骨と脳の間の出血量が増え脳圧迫が強くなると、いびきをかき昏睡状態になる。半日位し出血量が百五十〜二百瓦位になると、脳に損傷がなくても脳圧迫のために死亡する。
このような経過をたどるので、最初は軽傷と判断しがちであるが、とんでもない危険が潜んでいる。
少なくとも一晩は入院し、専門家の経過観察が必要である。
誤診なのか対応の悪さというべきなのかはともかく、医師の責任をめぐってトラブルに発展する。
そのとき、医師としての平均的医学常識の有無、あるいは経験の問題なども含めて検討されるであろうが、つまるところ裁判所の高度な判断を、あおがねばならないことになるであろう。
法医学者は、死という結果が出てから、その事件に介入していくことになるので、常に結果論としての意見をのべることになる。
臨床医の労苦を無視したような、冷酷な判断が示されることもあるし、死者の側に不利な結論になることもある。
いずれにせよ、周囲の雑音にとらわれることなく、死体所見から真実を引き出す、それが法医学なのである。
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