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死体は生きている09

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:転 落 真夏の太陽が照りつける中、流れる汗をふきふき二階のトタン屋根にのぼって、テレビのアンテナを取りつけていた。そのう
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転 落
 
 真夏の太陽が照りつける中、流れる汗をふきふき二階のトタン屋根にのぼって、テレビのアンテナを取りつけていた。そのうちにアーッと大声が聞えたと思う間もなくドタン、ドスンと音がして男は転落した。
地上まで五〜六 《メ》米《ートル》はあっただろうが、幸いにも庭の土の上であった。意識不明のまま救急車で入院、治療をしたが蘇《そ》生《せい》はしなかった。
転落事故による頭部外傷と診断された。
しかしこのような事故死(外因死、つまり外力の作用による死亡)は医師がいかに治療をしていたとしても、死亡すると異状死体として警察に届出をしなければならない。
警察では事故がどうして起きたのかを調査する。
炎天下で頭がボーッとなったためか、病的発作を起こしたためか、足をすべらせての転落か、自殺かあるいは誰れかにつき落されたのかなど、転落の原因を明確に調べるのである。
医師は患者を治療しているから、死因はわかるがなぜ屋根から転落したのかは医師にはわからない。
周囲の人達の話を聞いて、医師が事故死と認定すべき性質のものではない。
そんなことが許されるならば、この世に殺しはなくなってしまうであろう。
やはり他人の秘密に立ち入り、捜査のできる警察官が調査し、公正に判定するものでなければならない。
このケースは、土がクッションの役目をしたのか外部所見に、致命傷は見当らなかった。
検死では明確な死因はつかめなかったため、監察医務院で行政解剖をすることになった。
監察医は、死の現場に臨み死体検案(検死)をして死因の解明を行う。検死で死因が判明しなければ、行政解剖をして死因を明らかにしていく。
このような仕事をしているので、初対面の人はびっくりしたような顔をして、
「検死や解剖をして、気持ち悪くないですか」
と質問してくる。
あるとき中年のご婦人に、
「解剖した後、ご飯が食べられますか」
と質問されたことがある。
即座に、
「検死や解剖をしないと私は、ご飯が食べられないのですよ」
と答えたら、彼女は笑いころげてしまった。

警察と監察医は現場と死体所見の両方を、あらゆる角度から検索し、検討を加えて真実を追求していく。
その結果、屋根の上で立ち上り左手をあげた際、たるんでその上を走る裸電線に指が触れ感電、そのショックでバランスを失い、屋根から転げ落ちたことがわかった。
薬指に小豆《あずき》大の電流斑《はん》が見つかったのである。
転落のため軽度の脳《のう》挫《ざ》傷《しよう》もあったが、落下の原因は感電であった。
単なる転落事故を警察官と監察医がよってたかって、解剖してまで調査する。
その行為は一見、非情に思えるかも知れないが自殺か他殺か、病的発作のためかあるいは本当に災害事故であるのかを明らかにして、社会不安を取り除き、死者の人権を守っているのである。
後日、危険な配線の違法性の是非、責任の有無が問われ、配線の改善などの処置がとられ、二度とこのような事故が起きないよう、対策が講じられた。
監察医制度は、ただ単に変死者の検死、解剖をしているだけではない。
データは必ず、生きている人に還元されるのである。
そして、予防医学にまた衛生行政に役立たせている。
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