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死体は生きている11

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:証拠隠し 昭和二十一年、日光中禅寺湖畔の旅館が全焼した。焼けあとから経営者の家族五人が焼死体で発見された。現場検証と検視
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証拠隠し
 
 昭和二十一年、日光中禅寺湖畔の旅館が全焼した。焼けあとから経営者の家族五人が焼死体で発見された。
現場検証と検視の結果、災害事故死と判断された。
ところが一年後、別件で留置中の男が殺人放火したことを自供した。
男は客を装って旅館に泊まり、一家五人を殴り殺し金品を盗み、放火した。
当時、炭化状にこげた死体を外表から検視しただけで、解剖はしなかった。
いくら炭化状であっても解剖をすれば、火事により焼死したものか、それ以前に死亡していたかの区別はつく。
もしも、火災の中で生きていたとするならば、すすを気管内に吸い込んでいるから、気道粘膜にはすすが付着し黒くなっている(気管内炭粉吸引)。
また、上気道粘膜に熱傷があったり、赤血球に一酸化炭素が結合して暗赤色の血液色調は鮮紅色に変化している。
さらに化学検査をすると、血中の一酸化炭素ヘモグロビンが高濃度を示すなどの所見があるので、死後の焼却とは容易に区別することができる。
解剖の重要性を示す事例であった。
以来、焼死体はほとんど解剖をするようになったのである。

空き地で若い女性の焼身自殺があった。
ガソリンを浴びていることがわかったが、容器やマッチ、ライターがみつからなかった。
三日後、女の身元がわかった。
二十九歳のOLで、ふだん自殺するような言動はなく、また現場があまりにも住居地から遠く離れすぎていることや、外出時所持していたワニ革のハンドバッグ、真珠のネックレス、純金の指輪などが見当らないなど不自然さが目立ち、捜査がすすむにつれ他殺の疑いが濃厚になってきた。
交友関係から一人の男が浮かんだ。
彼女と結婚を約束し金をまきあげては派手な生活をしていた。
そのうちに妻がいることがばれてしまった。
奥さんと別れ、結婚をしてほしいとせがまれ、男は彼女をなだめたが聞き入れられず、「男らしくない」「背信行為」だとののしられて、犯行に及んだのである。
自動車で人通りの少ない空き地に連れ出し殴って失神させ、ネックレス、指輪、ハンドバッグなどを奪い、車に用意しておいたポリ容器のガソリンを彼女のからだにかけ、火をつけたのである。
犯行のヒントは、ガソリンによる焼身自殺の新聞記事であった。
身の回り品などを奪って焼けば、身元はわかりにくく、顔も指紋も外傷も火傷でわからなくなり、完全犯罪ができるだろうと考えたのである。
しかし、解剖所見には顔面の打撲傷と焼死の所見がみられ、男の供述と一致した。
警察の捜査もさることながら、専門家による解剖をあなどることはできない。

監察医としていろいろな事件に関与していると、どうすれば完全犯罪ができるのかと質問されることがある。
「証拠を残さないことだろうが、証拠を残さずに人の命を奪うことはできない」
と私は答える。
たとえば、ひもで首を絞めればそこに索溝が残る。しかし、泳げない人を岸から突き落せば、遺体にはきずは残らないから、殺人とは考えにくいかも知れないが、岸に近いから泳げなくても溺《おぼ》れずに岸にたどりつく可能性もある。
また水中転落の原因を探っていけば、自殺の状況はない。災害死といっても血中からアルコールは検出されないなど、不自然さが目立ってくる。
生きているものはそう簡単には死なない。
死ぬには医学的にも、社会的にも相当な理由、原因があるはずである。
ましてや殺人ともなれば、いかに完全とはいえ、生から死への移行には必ず無理、矛盾が潜んでいる。
周囲の状況を病死のように見せかけ、あるいは事故死のように見せて、うまく偽装しても、遺体は殺人死体であるから、死因に一致した所見が遺体のどこかに残存している。
だから素人を胡《ご》麻《ま》化《か》すことができても、専門家が見れば、アフリカの原野に熊がいるような絵であっては、すぐにわかってしまう。よしんばライオンを描いたとしても、動物園のライオンと野生のライオンとでは、体形が違うのである。
証拠を隠すといっても、専門家の目は確かなのである。
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