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死体は生きている14

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:監察医 よくあることだが、酔って路上に転倒したり、階段などから転げ落ちたりすることがある。入院治療をするが打ちどころが悪
(单词翻译:双击或拖选)
監察医
 
 よくあることだが、酔って路上に転倒したり、階段などから転げ落ちたりすることがある。入院治療をするが打ちどころが悪かったのか、意識不明のまま数日後死亡するようなことがある。
主治医は脳《のう》挫《ざ》傷《しよう》、災害死という死亡診断書を発行する。これによって患者は鬼籍に入り、葬儀が行われる。
当然のことのように思われるかも知れないが、それは間違いである。監察医制度のある地域では、このような外力の作用で死亡した場合(外因死)はすべて変死扱いになり、ドクターは死亡診断書を発行しないで、先ず警察に変死届をしなければならない。
なぜならば医師は患者を診察し治療をしているから、脳挫傷という死因はわかるが、どうして階段から転落したのか、その理由は医師にはわからない。付添った身内の人が、あやまって階段を踏みはずしたための転落事故だと語っていたから、ドクターは災害死と判断したというのは、一見正しいように思われるが、考えてみると話を鵜《う》呑《の》みにしているだけで真偽を吟味したわけではない。
ドクターが判断すること自体、おかしなことである。
事故発生の状況は、他人の秘密に立ち入って捜査のできる警察官の仕事である。
家族の中につき落した犯人がいないとは限らないので、すべての外因死は変死扱いにする立前になっている。
届出をうけた警察では、状況を捜査する。医師は死因を判断する。それぞれの専門分野で知識を発揮し協力し合ってはじめて、自らを語ることなく死んでいった人々の人権が擁護されるのである。
これが警察官の検視であり、これに医学的協力をするのが医師の死体検案すなわち検死なのである。
これを制度化したものが、監察医制度で東京、横浜、名古屋、大阪、神戸で施行されている。
この制度のない地方においても、変死の届出(医師法第二十一条)は同じであり、検死が行われているはずである。しかし必ずしもそうではない場合もあるようである。
どのようなケースが変死扱いになるのか、その見解が一致していないからであろう。
人が死亡した場合まず病死(自然死、主治医が死亡診断書を発行する)と犯罪死(検事の指揮下で司法解剖をする)に分けられる。
しかしその中間に医師にかからずに突然死したり自殺、災害事故死あるいは病死なのか犯罪に関連があるのか不明の死がある。
このようなケースは社会的にも医学的にも不安を残した死に方である。この疑わしい死に方はすべて変死(不自然死、異状死体)として警察に届けられなければならない。
警察では事件の内容を充分捜査した上、ドクターに検死を依頼し、不安を取り除くのである。
この中からときには隠された殺人事件などを発見することもある。

警察官に案内されて、あるアパートの一室に入った。死亡したお年寄りがゆかたを着せられ布団の中に安置されていた。
検死をするため顔にかかった白い布を取ると、ゆかたの襟が顎《あご》の下の高い位置で交差していた。おかしな着せ方だなと思って、襟を開けると首に日本手《てぬ》拭《ぐい》が巻かれてある。どうしたものかと尋ねると、立会官の話ではここ数日前から風邪気味で、咳《せき》や痰《たん》が出てノドが痛かったので手拭を巻いていたというのである。そして昨夜遅く息子が帰宅すると、父親の様子がおかしいので近くの医師に往診をたのんだ。ドクターが来たときには、この姿のまま死亡していた。たぶん肺炎か心筋梗《こう》塞《そく》の病死だろうが、死亡診断書は書けないから警察へ届けておくといって、そのドクターは帰ったという。
息子に確かめたが、答えは同じであった。
検死をするため巻かれた手拭を取ると、首にかすかな索溝(ひもなどで首を絞めた痕跡)が見えた。顔はややうっ血し、眼《がん》瞼《けん》結膜下には溢《いつ》血《けつ》点《てん》が出現していた。
絞死の所見である。病死などではない。
息子はすぐ取り調べられた。
定職もなく酒好きな息子が酔って帰宅するなり、ねている父親の枕《まくら》の下から財布を取り出した。父は財布を取り戻そうとしたが、息子にはかなわない。奪い返すことが出来なかったので、意見をはじめたところ、口論となった。そのうちに、
「うるせえ!」
といって息子は、そばにあった日本手拭で父の首を絞めたというのだ。
間もなく死んだことに気がついた。風邪などひいてはいない。
首にひものあとが薄く赤く見えたので、手拭を巻いてかくし、ゆかたを着せかえて布団にねかせ、往診をたのんだというのである。
風邪をひいてねていれば、病死の死亡診断書がもらえると思ったのであろうか。往診を依頼されたドクターが変死届を出したから、この事件は発覚し、解決したのである。
もしも息子のいいなりに病死の診断書が出されていれば、完全犯罪が成立していたかも知れない。
なにごとも、あやふやに処理してはならないと、つくづく思う。
そのために監察医制度があり、監察医がいるのである。死者は、どのような制度があっても、生き返らないなどとあきらめてはならない。
死者の側に立って、人権を擁護している医師もいるのである。
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