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死体は生きている23

时间: 2020-04-14    进入日语论坛
核心提示:炎の画策七 それからの警察の対応は早かった。大野木監察医に再鑑定の依頼が出され、出来上るのを待って、犬山を逮捕、殺人放火
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炎の画策
 それからの警察の対応は早かった。
大野木監察医に再鑑定の依頼が出され、出来上るのを待って、犬山を逮捕、殺人放火の容疑で起訴したのである。
調べがすすむにつれ、意外なことが判明した。
怪文書の投書は、ライバル島第二係長か部下の山田ではないかと思われていたが、何んと犬山の妻であったのだ。
意外というほかはなかった。
犬山は初めから仕掛人は、あの二人しかいないと思い込んでいたから、仲間の部下をつかいそれとなくさぐりを入れていた。
島と山田は性格的にも似たところがあり、ウマが合うのか、昼休みなどよく談笑することがあった。
とくに山田は、犬山との関係が悪くなる前、彼に連れられ同僚らとバーに行きご馳《ち》走《そう》になったことがある。そのときのホステスの一人がリサであることを後日仲間から聞かされ、二人の関係がかなり親密であることまで知っていた。
怪文書が流れてから三か月ほどたった夏の暑い日、犬山は子供を乗せてスーパーへ買物にいった。
電車が走っていた。
車の窓ごしにパパ新幹線だと子供は、はしゃぎ出した。今まで電車としか表現したことはない。
「新幹線? 新幹線知っているの?」
「知ってるよ、ママと見たよ」
といったのである。
犬山は考えた。
郊外に生活するこの子が、新幹線を見るはずはない。見たとすれば絵本かテレビであろう。しかし待てよ、怪文書はそういえば東京中央郵便局の消印が押されていた。
もしかすると妻が東京駅まで娘を連れて出しに行ったのかも知れない。
思ってもみない妻への疑惑である。すぐに妻にそのことを確かめたい気持ちであったが、リサのことでけんかが絶えない現状では、妻とて素直に答えるはずはない。
リサと相談してからにしようと思い直した。
二人がまとめた考えはこうであった。というよりも、リサの意見が強かったのだが、とりあえず奥さんに今までのことをわびることである。そしてリサと別れ話をしてきたから、許して欲しい。これしかないというのである。
数日後、筋書き通りにことを運んだ。
はじめは警戒していたが、次第に妻は話にのってきた。
女と別れ真《ま》面《じ》目《め》にやるという。疑うならリサに直接確かめてみるがいいと犬山はつけ加えた。そして、女にだまされていた。頼りになるのはお前だけだ。許して欲しいとわびたのである。
この告白に心が動かぬはずはなかった。
演技はまだ続いた。
それにしても、投書されたので会社をクビになるかも知れない。俺の人生をめちゃくちゃにしたあの二人だ。ただではおかぬぞ、と話の流れを投書にもっていった。
安心させてから徐々に核心にせまったのである。
投書が夫の生活基盤まで奪ってしまうなどとは考えてもみなかった。夫をリサから取り戻せればと、ただそれだけを考えてやったことである。影響の大きさに妻は驚いた。
話をしている中に、妻はだまり込んでしまった。
夫が謝罪した以上、自分も本当のことを話して、許してもらおうと思いはじめたからである。
犬山の勘は見事に的中した。
妻が事実を語り出したとき、犬山は怒りを通り越し殺意のようなおぞましい感情がこみ上げてきたが、抑えに抑えて自分が悪かったのだからと、妻をいたわる仕草をした。
その夜、妻は心のわだかまりがとけ、長い苦悩からのがれ、久し振りに夫と愛を確かめ合うことができたのである。
犬山の犯行は単なる金と女だけではなかった。
夫である自分を投書という形で、会社に公表した妻の裏切り行為。信頼するものにあざむかれたくやしさが、殺意の根底にあったのである。
夫を愛人から取り戻そうとしてやった、そもそもの原因は犬山自身にあるのだが、そんなことは少しも考えないし、そうも思わない身勝手な男である。
警察では殺人に最も必要な殺意を見つけ出すことができ、逮捕から起訴へと踏み切ったのである。
夫婦の仲は、以前にも増して冷えていった。
以来、犬山とリサの密会は頻繁になった。
犬山の妻への憎しみとリサの打算とが、かみ合ったねじれた愛は、共通した目的に向かって動き出した。
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